以前書いた記事では、領収書等の購入金額の税率10%分と8%分の内訳を一瞬で計算する方法についてご紹介しました。

今回は、上記の記事の補足として、消費税額の端数処理が行われている場合も考慮した上で、課税仕入れの適用税率ごとの内訳がわからない場合の計算方法について解説したいと思います。

上記の記事を読んでいない方は、この記事を読む前に、先に上記の記事を読んでください。

 

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(先に結論)以前書いた記事の計算方法でOK

先に結論から言うと、課税仕入れの適用税率の内訳がわからない場合は、前回の記事で紹介した方法で計算した金額をそれぞれ課税仕入れとして計上しても大丈夫です。

8%対象品目の購入金額 = 税込購入金額 × 5.4 - 消費税額 × 59.4(円未満切捨)
10%対象品目の購入金額 = 税込購入金額 - 上記で求めた8%対象品目の購入金額
(または、10%対象品目の購入金額 = 消費税額 × 59.4 - 税込購入金額 × 4.4(円未満切上))

この計算方法で計算した場合、数学的に推定できる範囲内の金額の最も不利な組み合わせの金額を計上することになるため、税務上問題になる可能性は低いものと考えられます。

 

消費税額の端数処理が行われている場合は正確な金額を計算することはできない

以前書いた記事でご紹介した計算方法では、消費税額の端数処理が行われていないため、元の購入金額を正確に計算することができます。

内訳の記載がない領収書の追記例

以前書いた記事の数値例↑だと、6,600×10/110=600円、4,320円×8/108=320円となり、いずれも小数点以下の端数が出てこないため、上記の方法に当てはめて計算すると購入金額の内訳を正確に計算することができました。

8%対象品目の購入金額 = 10,920円 × 5.4 - 920円 × 59.4 = 4,320円

10%対象品目の購入金額は全体価格から8%対象品目の購入金額を引いて、10,920円 - 4,320円 = 6,600円

しかし、消費税額について端数処理が行われている場合は、購入金額の内訳を正確に計算することはできません。

例えば、8%対象となる牛肉を4,168円、10%対象となる日本酒を8,215円で購入した場合に、次のような領収書をもらったとします。ここで、購入金額の内訳が記載された納品書がない場合について考えてみましょう。

納品書がない場合のイラスト

8%対象の消費税額は、4,168円×8/108=308.740740…円 → 308円(円未満切捨)

10%対象の消費税額は、8,215円×10/110=746.818181…円 → 746円(円未満切捨)

とそれぞれ端数処理されていることになります。

この場合について、上記の計算方法に当てはめて計算してみると

8%対象品目の購入金額 = 12,383円 × 5.4 - 1,054円 × 59.4 = 4,260.6円 → 4,260円

10%対象品目の購入金額は全体価格から8%対象品目の購入金額を引いて、12,383円 - 4,260円 = 8,123円

となり、実際の購入金額と一致しません。

これは、計算方法が間違っているからではなく、消費税額について端数処理されている場合は、数学的に、消費税額と全体の購入金額からだけでは絶対に元の金額を正確に計算することはできないからです。

 

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端数処理されていても、それぞれの購入金額の範囲は推定できる

消費税額について端数処理がされていても、8%対象品目の購入金額と10%対象品目の購入金額のそれぞれの取り得る値の範囲を推定することはできます。

上記の例のように、8%対象の消費税額、10%対象の消費税額のそれぞれが端数処理されている場合(2回端数処理されている場合)について考えてみます。

なお、処理は円未満切捨するものとして考えます。

購入金額の全額をA、端数処理をしなかった場合の消費税額の合計をt、端数処理した消費税額の合計をt'とおきます。

この場合、消費税額は2回端数処理されるため、tの範囲は次のように表せます。

t’ ≦ t <t’+2 … ①

これにー59.4 をかけて、それぞれ5.4Aを足すと、次のようになります。

5.4A-59.4(t'+2)< 5.4A - 59.4t ≦ 5.4A-59.4t'

となります。

8%対象品目の購入金額は 5.4A-59.4tであるため(前回の記事参照)、8%対象品目の購入金額の範囲は次のようになります。

5.4A-59.4t'-118.8 < 8%対象品目の購入金額 ≦ 5.4A-59.4t'

10%対象品目の購入金額について考える場合は、上記①の不等式に 59.4をかけて、それぞれ4.4Aを引きます。

59.4t’- 4.4A ≦ 59.4t- 4.4A < 59.4(t’+2)- 4.4A

10%対象品目の購入金額は 59.4t-4.4Aであるため(前回の記事参照)、10%対象品目の購入金額の範囲は次のようになります。

59.4t’- 4.4A ≦ 10%対象品目の購入金額 < 59.4t’- 4.4A + 118.8

2回端数処理されている場合
[10%対象品目の購入金額の範囲]
5.4A-59.4t'-118.8 < 8%対象品目の購入金額 ≦ 5.4A-59.4t'
 
[10%対象品目の購入金額の範囲]
59.4t’- 4.4A ≦ 10%対象品目の購入金額 < 59.4t’- 4.4A + 118.8

 

税務上不利になる金額を採用すれば問題ないと考えられる

税務上、区分が必要な事項について区分がされていない時は、不利になる方法で区分をした場合は、それが認められることが多々あります。

例えば、課税について事業区分がされていないときは、その事業者が行う最もみなし仕入率の低い事業区分とされます。

また、課税仕入れについて「課税売上対応」「非課税売上対応」「共通対応」の区分がされていないときは、一般的に不利になることが多い一括比例配分方式の採用が認められています。

仕入税額控除の要件は「区分記載請求書等の保存」であるため、領収書が保存してあれば、内訳がわからない場合であっても仕入税額控除の要件を満たしています。

その内訳について、数学的な方法で推定した範囲内の金額のうち最も不利な金額(=最も8%課税仕入れが大きくなる金額)をもって仕入税額控除を行うことは、不当に消費税の負担を免れようとすることを禁止する消費税法第64条の趣旨に鑑みても問題ないものと考えられます。

これを踏まえて、もう一度上記の例について考えてみましょう。

納品書がない場合のイラスト

領収書の税込購入金額 12,383円と消費税額 1,054円から、8%対象品目と10%対象品目のそれぞれの購入金額の内訳を推定します。

まず、8%対象品目の購入金額の範囲は次のように求められます。

5.4×12,383円-59.4×1,054円-118.8円 < 8%対象品目の購入金額 ≦ 5.4×12,383円-59.4×1,054円

すなわち

4,141.8円 < 8%対象品目の購入金額 ≦ 4,260.6円

となります。

また、10%対象品目の購入金額の範囲は次のように求められます。

59.4×1,054円- 4.4×12,383円 ≦ 10%対象品目の購入金額 < 59.4×1,054円- 4.4×12,383円 + 118.8円

すなわち

8,122.4円 ≦ 10%対象品目の購入金額 < 8,241.2円

となります。

8%対象品目と10%対象品目のそれぞれの購入金額は、必ず上記の不等式の範囲内の金額になります。

ここで、8%対象品目の購入金額が最も大きくなる金額を採用すれば、税務上最も不利になるため、8%対象品目の購入金額の最大値4,260.6円を円未満切捨した金額4,260円を8%対象課税仕入れとして計上します。

この場合、10%対象品目の購入金額は最も小さくなるため、税務上最も不利になります。10%対象品目の購入金額は、上記不等式の最小値8,122.4円を円未満切上した金額8,123円(又は全体金額から8%対象品目の購入金額を引いて12,383円-4,260円=8,123円)と計算します。

以上より、消費税が端数処理されている場合は、領収書からだけでは正確な購入金額を求めることはできませんが、8%購入金額を4,260円、10%購入金額を8,123円とすれば、数学的に推定できる範囲内の最も不利な組み合わせとなるため、当該金額により仕入税額控除を行ったとしても税務上問題ないものと考えられます。

 

端数処理の回数について一般化させて考えてみる

上記の例では、端数処理について8%対象品目と10%対象品目ごとに1回ずつ(計2回)行なっているケースについて考えましたが、中には個々の商品ごとに端数処理を行っているケースも考えられるため、一般化して端数処理をn回行ってる場合について考えます。

先ほどと同様に、購入金額の全額をA、端数処理をしなかった場合の消費税額の合計をt、端数処理した消費税額の合計をt'とおきます。

この場合、消費税額はn回端数処理されるため、tの範囲は次のように表せます。

t’ ≦ t <t’+n … ②

これにー59.4 をかけて、それぞれ5.4Aを足すと、次のようになります。

5.4A-59.4(t'+n)< 5.4A - 59.4t ≦ 5.4A-59.4t'

となります。

8%対象品目の購入金額は 5.4A-59.4tであるため(前回の記事参照)、8%対象品目の購入金額の範囲は次のようになります。

5.4A-59.4t'-59.4n< 8%対象品目の購入金額 ≦ 5.4A-59.4t'

10%対象品目の購入金額について考える場合は、上記②の不等式に 59.4をかけて、それぞれ4.4Aを引きます。

59.4t’- 4.4A ≦ 59.4t- 4.4A < 59.4(t’+n)- 4.4A

10%対象品目の購入金額は 59.4t-4.4Aであるため(前回の記事参照)、10%対象品目の購入金額の範囲は次のようになります。

59.4t’- 4.4A ≦ 10%対象品目の購入金額 < 59.4t’- 4.4A + 59.4n

n回端数処理されている場合
[10%対象品目の購入金額の範囲]
5.4A-59.4t'-59.4n < 8%対象品目の購入金額 ≦ 5.4A-59.4t'
 
[10%対象品目の購入金額の範囲]
59.4t’- 4.4A ≦ 10%対象品目の購入金額 < 59.4t’- 4.4A + 59.4n

したがって、8%対象品目の購入金額の最大値又は10%対象品目の購入金額の最小値を求めるに際しては、端数処理の回数nは影響しないことがわかりました。

以上より、端数処理の回数に関わらず、領収書の課税仕入れの適用税率ごとの内訳がわからない場合は、以下の方法で計算することにより、数学的に推定できる範囲内の最も不利な8%対象品目の購入金額と10%対象品目の購入金額の組み合わせを求めることができます。(結局、前回の記事で紹介した方法と同じです。)

8%対象品目の購入金額 = 税込購入金額 × 5.4 - 消費税額 × 59.4(円未満切捨)
10%対象品目の購入金額 = 税込購入金額 - 上記で求めた8%対象品目の購入金額
(または、10%対象品目の購入金額 = 消費税額 × 59.4 - 税込購入金額 × 4.4(円未満切上))

 

まとめ

課税仕入れの適用税率ごとの内訳がわからない場合、仕方なく、税務上不利になるように、その全額を軽減税率8%課税仕入れとして計上しているケースが多いようです。

しかし、上記の方法で求めた金額で8%課税仕入れと10%課税仕入れをそれぞれ計上すれば、全額を8%課税仕入れとするよりも仕入税額控除できる金額が大きくなります。

なおかつ、本来の購入金額で計算した場合よりも仕入税額控除される金額が大きくなることは数学的に絶対にあり得ないため、税務上問題になる可能性は低いと考えられます。

内訳がわからない領収書の経理で困っている人は、是非この方法を使ってみてください!

(注1)このような計算ができるのは、購入金額の中に不課税・非課税・免税となるものが含まれていないことが明らかな場合に限られますのでご注意ください。

(注2)この計算方法は僕が個人的に考えた方法であり、国税庁の資料や通達などで公表されているものではありません。経理で採用する場合は自己責任でお願いします。

(注3)仕入れを税率ごとに区分することにつき「困難な事情」がある場合には、簡易課税の届出特例や小売等軽減売上割合の特例を用いて計算することもできます。この点については詳しくは次の記事をご覧ください。

 

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