消費税の課税の対象となる要件のひとつに「事業者が事業として行う者であること」という要件があります。
所得税法上の「事業」に該当しなかったとしても、消費税法上は「事業」に該当することがあります。
消費税法上の「事業」の方が所得税法上の「事業」よりも広い概念になります。
今回は、消費税法上の「事業」と所得税法上の「事業」の範囲の違いについて解説したいと思います。
所得税法上の「事業」
不動産の貸付けが所得税法上「事業として」行われているかどうかについては、国税庁の所得税法基本通達26-9において以下のように規定されています。
(建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定)
建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより判定すべきであるが、次に掲げる事実のいずれか一に該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
(2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。
室数が10以上であるか、家屋が5棟以上であれば、所得税法上「事業的規模」に該当することとなります。いわゆる「5棟10室基準」です。
このように、所得税法においては、ある程度大きな規模で不動産の貸付けを行っている場合に「事業」に該当することとなります。
消費税法上の「事業」
消費税法においては、国税庁の消費税法基本通達5-1-1において「事業として」の解釈について次のように記載しています。
(事業としての意義)
法第2条第1項第8号《資産の譲渡等の意義》に規定する「事業として」とは、対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供が反復、継続、独立して行われることをいう。(注)
1 個人事業者が生活の用に供している資産を譲渡する場合の当該譲渡は、「事業として」には該当しない。2 法人が行う資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供は、その全てが、「事業として」に該当する。
消費税法においては、「事業として」に該当するかどうかは、それが「反復・継続・独立して」行われているかどうかにより判断します。
したがって、所得税法上の「事業的規模」に該当しない不動産の貸付けであっても、それが「反復・継続・独立して」行われているものであれば、消費税法上は「事業として」行われているものとして取り扱われることがあります。
例えば、普段は会社勤めをしている会社員が、空き家を1棟だけ他者に貸し付けて毎月賃貸収入を得ている場合は、所得税法上の「事業的規模」には該当しませんが、「反復・継続・独立して」行われているものであるため、消費税法上は「事業として」行われているものに該当することとなります。
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