体内吸引用の酸素缶や酸素ボンベは消費税の軽減税率適用対象となる?

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、病床の逼迫により自宅療養者が急増しています。

病状が悪化し、酸素療法が必要な中等症になると酸素濃縮器による酸素の吸引が必要となりますが、中等症となっても入院先として受け入れてくれる病院がなく、十分な酸素療法を受けることができないということが問題となっています。

そんな状況の中、町のドラッグストアなどで、スポーツや登山で使う「酸素缶」が品薄になっているそうです。

医学的には、新型コロナで酸素吸入が必要となった時に「酸素缶」を使ってもあまり意味がないと言われていますが、藁にもすがる気持ちで少しでも助かる可能性を高くしたいという不安な気持ちが大きく表れているのだと思います。

そこで、今回は、「酸素缶」や「酸素ボンベ」などの体内に吸引するための酸素製品に消費税の軽減税率が適用されるのかどうかについて解説したいと思います。

 

スポンサーリンク

軽減税率が適用される取引とは

令和元年10月1日から、日本で初めて消費税の軽減税率制度が導入されることとなりました。

軽減税率8%が適用される取引は、以下の2つです。

軽減税率が適用される取引
・お酒や外食、医薬品等を除く飲食料品の譲渡
・定期購読契約に基づき配送される新聞(週2回以上発行されるもの)の譲渡

軽減税率の適用対象となる「飲食料品」とは、食品表示法に規定する「食品」をいい、人の引用又は食用に供されるものです。

また、国税庁が公表している資料「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」の問1で、次のように回答が示されています。

(「飲食料品」の範囲)
問1 軽減税率の対象品目である「飲食料品」について、具体的に教えてください。
【答】 軽減税率の対象品目である「飲食料品」とは、食品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類を除きます。以下「食品」といいます。)をいいます(改正法附則 34①一)。
食品表示法に規定する「食品」とは、全ての飲食物をいい、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に規定する「医薬品」、「医薬部外品」及び「再生医療等製品」を除き、食品衛生法に規定する「添加物」を含むものとされています。
なお、ここでいう「飲食物」とは、人の飲用又は食用に供されるものをいいます。

上記の太字部分のとおり、食品衛生法に規定する「添加物」も軽減税率の対象となる「飲食料品」の範囲に含まれることとなります。

では、酸素缶や酸素ボンベに含まれる酸素は、飲食料品の範囲に含まれるのでしょうか?

 

スポンサーリンク

酸素とは

酸素は、元素記号Oで表される化学物質で、空気中に気体として存在するものは、化学式O2で表される酸素分子の状態のものです。

ご存知の通り、酸素は生物が生命活動を維持するために必要不可欠な化学物質であり、今この記事を読んでいるあなたも空気中の酸素分子を吸っているかと思います。

空気中や水中、地中などの酸素濃度が低い場所での呼吸を助けるために「酸素缶」や「酸素ボンベ」などの酸素製品が販売されているほか、新型コロナウイルスの感染者等の傷病人の治療のための医療目的でも販売されています。

 

スポンサーリンク

酸素は「飲食料品」には該当しない

「酸素缶」や「酸素ボンベ」は、人が体内に酸素を摂取するために販売されています。

ということは、酸素は人の飲用又は食用に供される「食品」に該当するのではないか?と思う方も多いかもしれません。

しかし、残念ながら酸素は消費税の軽減税率が適用される「飲食料品」には該当しないのです。

軽減税率の対象品目である「飲食料品」とは、食品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類を除きます。)をいいます。

つまり、消費税の軽減税率の適用対象となるかどうかは、消費税法ではなく、食品表示法という法律に規定する「食品」に該当するかどうかで判断することとなります。

食品表示法第5条には、以下のような規定があります。

(食品表示基準の遵守)
第五条 食品関連事業者等は、食品表示基準に従った表示がされていない食品の販売をしてはならない。

食品表示基準とは、食品を消費者が安全に摂取し、及び自主的かつ合理的に選択するために必要と認められる事項を内容とする販売の用に供する食品に関する表示の基準(食品表示法第4条)をいいます。

食品表示基準に従った表示がされていない食品やそもそも食品表示基準に記載されていない飲食料品については、たとえ人が飲食したり体内に摂取するために販売されるものであっても、軽減税率の適用対象となる「食品」には該当しないことになります。

「酸素」は、食品表示基準において記載のないものなので「食品」には該当しません。

なお、「食品」に該当しないものであっても、その物質が「食品添加物」に該当する場合は、軽減税率が適用されることとなります。

食品衛生法第4条第2項において「食品添加物」は「食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用する物」と定められています。

具体例としては、凝固剤、香料、甘味料、保存料、酸化防止剤、着色料、発色剤、ビタミン、ミネラル、アミノ酸などのうち厚生労働大臣の認めたものが「食品添加物」に該当し、以下の4種類に分類されます。

食品添加物の4分類
① 指定添加物:安全性と有効性が確認され、国が使用を認めたもの
 →『指定添加物一覧』に記載されているもの
② 既存添加物:我が国においてすでに使用され、長い経験があるものについて例外的に使用が認められているもの
 →『既存添加物一覧』に記載されているもの
③ 天然香料:植物、動物を起源とし、着香の目的で使用されるもの
 →『天然香料リスト』に記載されているもの
④ 一般飲食物添加物:通常、食品として用いられるが、食品添加物として使用されるもの

「食品添加物」は、上記①~④のいずれも、化学的合成品や天然添加物など製造方法の違いにかかわらず、食品衛生法第10条に基づき厚生労働大臣が安全性と有効性を確認して指定した添加物でなければならないため、それぞれリストアップされているもののみが該当することとなります。

しかしながら、「酸素」は上記のいずれのリストにも記載されていないことから、「食品添加物」には該当しないことになります。

したがって、「酸素」は食品表示法に規定する「食品」にも、食品衛生法に規定する「食品添加物」にも該当しないため、たとえ人が体内に吸引する目的で販売されているものであっても、消費税の軽減税率は適用されません。

 

健康保険法等の規定に基づいて行われる医療用酸素の譲渡は非課税取引

消費税法第6条の規定により、国内において健康保険法等の規定に基づいて行われる資産の譲渡等は非課税取引とされています。

したがって、健康保険法等の規定に基づいて、新型コロナウイルス感染症や群発頭痛の患者などの傷病者の治療等のために使われる医療用酸素を販売する場合は消費税は非課税となります。

 

まとめ

酸素は「飲食料品」に該当しないため、スポーツや登山のために使用される「酸素缶」やスキューバダイビングなどで使用される「酸素ボンベ」については、消費税の軽減税率は適用されません。

ただし、健康保険法等の規定に基づいて医療用酸素が販売される場合には、消費税は非課税となります。

 

関連するアプリの問題

消費税法プラスの一問一答

問題番号 タイトル
55 携帯用酸素缶の販売

消費税率判定クイズ

問題番号 タイトル
YK034 携帯用酸素缶

 

スポンサーリンク
その隙間時間、もったいないと思いませんか?

通勤・通学中などの隙間時間は、有効に使えていますか?1日にしたらたった数十分程度の時間でも、塵も積もれば山となって膨大な時間となります。もし1日30分の隙間時間があったとしたら、1年に換算すると182.5時間になります。これだけの時間を有効活用することができたら、非常に大きなアドバンテージとなります。

消費税法一問一答アプリでは、隙間時間を有効活用して消費税の課否判定のトレーニングができるのはもちろん、アプリケーションプログラムを利用して短時間で多くの問題を解くことができるため、紙ベースの問題集よりもはるかに高い効率性で消費税の学習ができます!

おすすめ記事