研修や講演の講師等に対する謝礼として、金券ショップ等で購入した商品券を贈答することがあります。
また、紙の商品券の他にも、電子メールでアマゾンギフト券などのネットショッピングで使えるギフト券を贈答することもあります。
今回は、このように一定の役務の提供を受けた謝礼として商品券を譲渡した場合の消費税の取扱いについて、接待交際費として贈答した場合との違いにも触れながら解説したいと思います。
商品券の譲渡は非課税取引
消費税は、国内で消費される商品やサービスについて課税されます。
商品券は、それと引き換えに物品の給付を受けるための証書であり、それ自体は商品として消費されるものでありません。
そのため、商品券の購入時に消費税を課し、それと引き換えに商品やサービスの提供を受けた時にも消費税を課すと二重課税となってしまいます。
そのため、消費税法第6条の規定により商品券(物品切手等)の譲渡は非課税取引とされています。
非課税項目を限定列挙している消費税法別表第二においても、以下のとおり規定されています。
四 ハ 物品切手(商品券その他名称のいかんを問わず、物品の給付請求権を表彰する証書をいい、郵便切手類に該当するものを除く。)その他これに類するものとして政令で定めるもの(別表第二において「物品切手等」という。)の譲渡
商品券は購入時は非課税、使用時に課税仕入れ
消費税法基本通達9-1-22において、次のような記載があります。
(物品切手等と引換給付する場合の譲渡等の時期)
物品切手等と引換えに物品の給付若しくは貸付け又は役務の提供(以下9-1-22において「物品の給付等」という。)を行う場合には、当該物品切手等が自ら発行したものであるか他の者が発行したものであるかにかかわらず、当該物品の給付等を行う時に当該物品の給付等に係る資産の譲渡等を行ったこととなるのであるから留意する。
太字部分で示したとおり、商品券(物品切手等)は、原則として、購入時は非課税仕入れとなり、それを使用して商品やサービスの提供を受けたときに課税仕入れとなります。
また、「当該物品切手等が自ら発行したものであるか他の者が発行したものであるかにかかわらず」とあることから、金券ショップ等で購入した商品券やAmazonギフト券を講師等の謝礼として贈答した場合においても、課税仕入れとなります。
接待交際費など、対価性がない場合は不課税仕入れ
商品券やAmazon ギフト券などの物品切手等を贈答した場合は、それが対価性のあるものであれば課税仕入れとなりますが、対価性がない場合は課税仕入れになりません。
研修や講演会の講師等、一定の役務の提供を受けた対価として物品切手等を贈答する場合は課税仕入れとなりますが、取引先に対してお中元やお歳暮などの接待交際費として物品切手等を無償で譲渡している場合や、販売促進の一環で顧客に対し抽選等で無償で譲渡している場合など、対価性が認められない場合は不課税仕入れとなります。
具体的な仕訳例
商品券を贈答した場合の具体的な仕訳例について見てみましょう。
対価性がある場合
商品券の購入時は「貯蔵品」などで処理して、税区分は非課税仕入れとなります。
謝礼として贈答した商品券に係る課税仕入れの時期は、講師から研修を受けた時です。
購入時に「貯蔵品」などで計上した資産勘定から、「採用教育費」などの費用勘定に振り替え、税区分は課税仕入れとします。
対価性がない場合
商品券の購入時は「貯蔵品」などで処理して、税区分は非課税仕入れとなります。
接待交際等のために無償で商品券を贈答する場合は、対価性がないため不課税仕入れとなります。
購入時に「貯蔵品」などで計上した資産勘定から、「接待交際費」などの費用勘定に振り替え、不課税取引として処理します。
(注意)謝礼等で贈答する商品券については購入時課税仕入れ処理の特例は使えない
国税庁が公表している消費税法基本通達11-3-7において、次のような記載があります。
(郵便切手類又は物品切手等の引換給付に係る課税仕入れの時期)
11-3-7 法別表第二第4号イ又はハ《郵便切手類等の非課税》に規定する郵便切手類又は物品切手等は、購入時においては課税仕入れには該当せず、役務又は物品の引換給付を受けた時に当該引換給付を受けた事業者の課税仕入れとなるのであるが、郵便切手類又は物品切手等を購入した事業者が、当該購入した郵便切手類又は物品切手等のうち、自ら引換給付を受けるものにつき、継続して当該郵便切手類又は物品切手等の対価を支払った日の属する課税期間の課税仕入れとしている場合には、これを認める。
太字部分で示したように、毎期継続して適用することを要件に、物品切手等について購入時に全額課税仕入れとして計上できるという取扱いがありますが、贈答用として購入する場合はこの処理は認められません。
赤色で示したように、この取扱いが認められるのは、その物品切手等を自分で使う場合のみです。
謝礼等で他者に贈答する物品切手等は、自ら引換給付を受けるものではないため、購入時に課税仕入れとして計上することは認められないので注意しましょう。
まとめ
商品券や Amazonギフト券などの物品切手等については、購入時は非課税となります。
他者に贈答する場合は、対価性がある場合は課税仕入れ、対価性がない場合は不課税仕入れとなります。
講演会や研修の講師等の謝礼として商品券を贈答する場合は、一定の役務の提供を受けた対価として贈答するものであるため課税仕入れとなります。
なお、他者に贈答するために購入する商品券については、購入時に課税仕入れとする特例処理は使えないことに注意しましょう。