消費税額の計算上、仕入税額の控除方式の判定などのために「課税売上割合」を計算します。
この課税売上割合は、たいていの場合、綺麗に割り切れることはなく小数点未満の端数が無限に続くことになりますが、これでは計算の際に面倒くさくて仕方がありません。
課税売上割合の小数点未満の端数について端数処理を行うことは認められないのでしょうか?
今回は、課税売上割合の端数処理についての端数処理は認められるのかどうかについて解説したいと思います。
課税売上割合とは
課税売上割合とは、専門的な用語を使って説明すると、課税期間中に国内で行った資産の譲渡等の対価の合計額のうちに課税期間中に国内で行った課税資産の譲渡等の対価の額の合計額の占める割合をいいます。
もう少し簡単に説明をすると、課税売上割合は次の計算式で表すことができます。
消費税額の計算上、仕入税額を全額控除できるか按分計算するかの判定は、課税売上割合が95%以上であるかどうかにより行います。
また、個別対応方式による場合の共通対応課税仕入れに係る控除税額や一括比例配分方式による場合の控除対象仕入税額は、課税売上割合を乗じて計算するため、課税売上割合は少しでも大きければ大きい方が、税額計算上有利になります。
課税売上割合は原則端数処理しない、ただし「切り捨て」はOK
課税売上割合の端数計算の方法について、消費税法基本通達11-5-6において、次のような記載があります。
(課税売上割合の端数計算)
11-5-6 課税売上割合については、原則として、端数処理は行わないのであるが、事業者がその生じた端数を切り捨てているときは、これを認める。
また、国税庁が公表している質疑応答事例『課税売上割合の端数処理』においても、次のような記載があります。
【照会要旨】
当社のこの課税期間の課税売上割合は、94.856・・・%となり小数点以下を四捨五入すると95%となることから、課税仕入れ等の税額の全額を控除することができるでしょうか。【回答要旨】
個別対応方式又は一括比例配分方式の計算において用いる課税売上割合については、その端数処理は行わないことになっていますが、任意の位以下の端数を切り捨てた数値によって計算しても差し支えないこととされています。
しかし、質問のように四捨五入することは認められません。したがって、質問の場合には、課税売上割合が100分の95に満たないこととなり、個別対応方式か一括比例配分方式のいずれかの方法によって仕入控除税額の計算を行うことになります。
まとめると、次のようになります。
② 例外 → 切り捨てならOK
任意の位以下の端数を切り捨てた数値によって計算しても差し支えないとされているため、例えば、課税売上割合が92.354126…%である場合に小数点第2位未満を切り捨てる場合は、
92.354126…%→92.35%となります。
このように、切り捨てる方法を取ったとしても、その分課税売上割合は減少し、税額計算上有利になるになることは絶対にありません。
今の時代、会計ソフトや申告ソフトなどで自動的に計算してもらえるため、わざわざ課税売上割合の端数を切り捨てるメリットはあまりないかと思います。
税理士試験では切り捨てずにそのまま計算すること
税理士試験の消費税法の試験で計算問題を解くときは、「当期の納付税額が最小となる方法」で解く必要があるため、課税売上割合は勝手に小数点以下の切り捨てをせず、分数のまま計算するようにしましょう。
まとめ
仕入税額の按分計算の要否の判定や個別対応方式・一括比例配分方式の計算において用いられる課税売上割合は、任意の位以下の端数を切り捨てた数値によって計算しても差し支えないこととされていますが、切り捨てをすると納付税額の計算上不利になってしまうため、切り捨てはせずにそのままの金額で計算する方がオススメです。