突然ですが皆様、次の税込商品価格(消費税率10%)の税抜本体価格は整数の金額になるか判別できますか?
電卓等は使わず、5秒以内にお答えください。
いかがでしたか?
「そんなの電卓も使わずにわかるわけないだろ!」と思った方が多いのではないでしょうか?
実は、ある裏技を使えば、税込価格を見て、税抜価格が綺麗な整数の金額になるかどうかを暗算で判別することができるのです。
今回は、税込価格から税抜価格が綺麗な整数の金額かを暗算で判別する方法をご紹介したいと思います。
(ただし、この方法は消費税率が10%である場合に限ります。)
消費税率10%の場合、税込価格が11の倍数なら税抜価格は整数になる
消費税率が10%(標準税率)の場合、下記のとおり、税抜価格は税込価格を1.1で割って算出されます。
(税抜価格)=(税込価格)÷1.1
「÷1.1」は、「×10÷11」と同じであるため、以下のように表記することもできます。
(税抜価格)=(税込価格)×10÷11
したがって、税込価格が11の倍数であれば、税抜価格は整数の金額となります。
つまり、税抜価格が整数になるかどうかは、税込価格が11の倍数であるかどうかわかれば判別可能ということになります。
(消費税率8%の場合は暗算で解くのは困難)
次の取引については、消費税率8%(軽減税率)が適用されます。
・定期購読契約に基づき配送される新聞(週2回以上発行されるもの)の譲渡
上記以外の取引には標準税率10%が適用されます。
消費税率が8%(軽減税率)の場合、下記のとおり、税抜価格は税込価格を1.08で割って算出されます。
(税抜価格)=(税込価格)÷1.08
=(税込価格)×25÷27
したがって、消費税率8%(軽減税率)が適用される場合、税込価格が27の倍数であるかどうかわかれば税抜金額が整数であるか判別できるのですが、実は27の倍数の判別方法はちょっと難しいんです。。。
一応判別方法はあるにはあるのですが、暗算で瞬時に判別できるものではないため、この記事では標準税率10%の場合についてのみご紹介します。
11の倍数の判別方法
では、税込金額が11の倍数であるかどうか判定する方法をご紹介します。
税込金額が、次の条件を満たす場合は、11の倍数であるため税抜金額は整数の値となります。
具体例として、本記事の冒頭で出した金額「40,535円」で考えてみましょう。
分かりやすくするために、奇数桁目の数字は赤色、偶数桁目の数字は青色で表示します。
「商品価格:40,535円(税込み)」
奇数桁目の数字の合計は、4+5+5=14となります。
偶数桁目の数字の合計は、0+3=3となります。
両者の差を計算すると、14-3=11となります。
したがって、奇数桁目の数字と偶数桁目の数字のそれぞれの合計の差が11の倍数となるため、「商品価格:40,535円(税込み)」は11の倍数であると判別でき、それ即ち、税抜金額は整数の値になると判別できます。
なお、各位の桁の数字を足し引きした残りが11の倍数(0も含む)になるかどうかで判定してもかまいません。
(上記例の場合、4-0+5-3+5=11 ∴11の倍数 と判定してもOKです。やっていることは同じです。)
いかがでしょうか?1万円以上の金額でも、慣れたら数秒で11の倍数かどうか判定できるようになります。
実際に、40,535=3,685×11となるため、40,535は11の倍数となっています。(各自電卓で確認してみてください。)
また、税抜金額を計算してみると、40,535円÷1.1=36,850円となり、整数の金額となりました。
数値例
上記の他にも、いくつか数値例を見てみましょう。
分かりやすくするために、奇数桁目の数字は赤色、偶数桁目の数字は青色で表示します。
「商品価格:3,124円(税込み)」
奇数桁目の数字の合計は、1+4=5となります。
偶数桁目の数字の合計は、3+2=5となります。
両者の差は5-5=0となります。
0となる場合も11の倍数に含まれるため、3,124円は11の倍数であることがわかり、それ即ち税抜金額は整数の値になると判別できます。
(3,124=284×11 3,124÷1.1=2,840)
分かりやすくするために、奇数桁目の数字は赤色、偶数桁目の数字は青色で表示します。
「商品価格:8,647円(税込み)」
奇数桁目の数字の合計は、6+7=13となります。
偶数桁目の数字の合計は、8+4=12となります。
両者の差は13-12=1となり、11の倍数とならないため、8,647円は11の倍数ではなく、税抜金額も整数の値になりません。
(8,647=786×11+1 8,647÷1.1=7,860.90909…)
分かりやすくするために、奇数桁目の数字は赤色、偶数桁目の数字は青色で表示します。
「商品価格:90,728円(税込み)」
奇数桁目の数字の合計は、9+7+8=24となります。
偶数桁目の数字の合計は、0+2=2となります。
両者の差は24-2=22となり、11の倍数となるため、90,728円は11の倍数であることがわかり、それ即ち税抜金額は整数の値になると判別できます。
(90,728=8,248×11 90,728÷1.1=82,480)
証明
まず、わかりやすい例で考えるため、4桁の数字「abcd」について考えます。
(通常、abcdと表記した場合a×b×c×dのかけ算を意味しますが、今回は「aせんbひゃくcじゅうd」と、a、b、c、dを各桁の数字として考えます。)
abcd =a×1000 + b×100 + c×10 + d
=a×(1001-1)+b×(99 +1)+c×(11-1) + d
=(1001a+99b+11c)-a+b-c+d
=11(91a+9b+c)-a+b-c+d
と表せるため、11でくくっていない部分(-a+b-c+d)が11の倍数または0となれば、すべて11でくくれることになるため、abcd は11の倍数になるといえます。
では、今度は一般化して、何桁の数字であっても同じ判別方法が通用するか考えてみましょう。
(a+b)のn乗の展開式は、「二項定理」により以下のように表されます。
シグマ表記で表すと、次のようになります。
この定理を利用して、何桁の数字であっても、奇数桁目の数字と偶数桁目の数字のそれぞれの合計の差が11の倍数(0も含む)であれば、その数字は11の倍数となることを証明してみましょう。
まず、m桁目の数字をamと表記した場合、n桁の数字は次のように表すことができます。
ここで、10=11-1と変形したうえで、第m項は二項定理を用いて、次のように表せます。(最後の項だけシグマから外して表記します。)
二項定理により展開した部分のうち、シグマから外した項以外はすべて11の倍数となっているため、シグマから外した項についての以下の式で表されるm=1からnまでの合計が11の倍数となっているかを考えればOKです。
上記数式の合計額が11の倍数または0であれば、元のn桁の数字も11の倍数となります。
つまり、何桁の数字であっても、奇数桁目の数字と偶数桁目の数字のそれぞれの合計の差が11の倍数(0も含む)であれば、その数字は11の倍数となることが証明できました。
まとめ
奇数桁目の数字と偶数桁目の数字のそれぞれの合計の差が11の倍数(0も含む)であれば、その数字は11の倍数であるとわかります。
消費税率10%の場合で、商品の税込金額が11の倍数であった場合は、税抜金額は必ず整数の値になります。
この方法が役に立つ場面はそれほど多くはないかもしれませんが、例えば、お店などで表示されている金額が税込金額なのか税抜金額なのかわからない場合に、上記の判別方法で11の倍数だと分かれば、その金額は税込金額である可能性が高いと判断することができます。(11の倍数の税抜金額だったり、そもそも税抜金額が整数でない可能性もあるので、必ずではありませんが。。。)
他にも、経理担当者などにとっても、商品の税込価格に計算間違いがないか、電卓などを使わずに暗算で検算することができるため、この方法が何かしらお役に立てれば幸いです。