事業を廃止した個人事業者が事業を再開する場合の消費税法上の注意点

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

一度事業を廃止した個人事業者が、数年後に再び事業を開始することもあるかと思います。

過去に課税事業者の選択や簡易課税制度の選択をしていた場合は、事業を再開するときに注意が必要となります。

今回は、事業を廃止した個人事業者が事業を再開する場合の消費税法上の注意点について解説したいと思います。

 

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個人事業者は、廃業しても税務上の届出関係はリセットされない

法人の場合は、会社を清算し法人格が消滅することとなったら、税務上の届出書の効力は原則としてすべて無効となるため、その後同じ経営者が別の法人を設立したとしても、前の法人の届け出関係が引き継がれることはありません。

しかし、個人事業者の場合は、たとえ事業を廃止したとしても、生きている以上税務上の届出関係はリセットされないため、その後事業を再開した場合、何もしていなければ、廃止する前の届出の効力は生じたままとなっています。

したがって、事業を廃止する前に「課税事業者選択届出書」や「簡易課税制度選択届出書」「課税期間特例選択・変更届出書」などを提出していた場合は、事業再開後もそれらの届出の効力は残ったままであることに注意が必要です。

例えば、事業再開後に設備投資等を行い消費税の還付を受けたい場合であっても、過去に簡易課税制度選択届出書を提出していた場合は消費税の還付を受けることができなくなってしまいます。

 

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所得税の「個人事業の廃業届出書」を提出しても、消費税の届出の効力は消えない

消費税法上、事業を廃止した場合に提出が求められる『事業廃止届出書』の記載要領等において、事業を廃止した場合の届出書の効力について次のように規定されています。

この届出書は、課税事業者が、事業を廃止した場合に提出します(法人の休業又は解散は、事業を廃止した場合に該当しないため、この届出書を提出する必要はありません。)。
なお、事業廃止により、「消費税課税事業者選択不適用届出書(第2号様式)」、「消費税課税期間特例選択不適用届出書(第14号様式)」、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書(第25号様式) 」、「任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書(第26-(3)号様式)」、「消費税申告期限延長不適用届出書(第28-(15)号様式)」のいずれかの届出書に事業を廃止した旨を記載して提出した場合には、他の不適用届出書等及びこの届出書の提出があったものと取り扱われます(法57①三)。また、この届出書を提出した場合には、これらの不適用届出書等の提出があったものと取り扱われます。

上記太字部分の通り、事業廃止届出書を提出した場合には、課税事業者選択不適用届出書や簡易課税制度選択不適用届出書の提出があったものとして取り扱われます。

ただし、よくある勘違いとして、所得税法上提出が求められている『個人事業の廃業届出書』を提出すれば消費税の届出の効力も消滅するんじゃないか?と思っている方がいますが、それは誤りです。

消費税法上の提出書類である「事業廃止届出書」と所得税法上の提出書類である「個人事業の開業届出書」はあくまでも別の書類です。

所得税の「個人事業の開業届出書」は出したけど、消費税の「事業廃止届出書」の方は出し忘れている場合は、課税事業者選択不適用届出書や簡易課税制度選択不適用届出書などの効力は消滅せず、事業再開後も存続することになるため注意が必要です。

 

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「事業廃止届出書」を提出したか覚えていない場合

事業を廃止した時に、消費税の「事業廃止届出書」を提出したか覚えていない場合は、税務署に申請することにより過去の提出書類を閲覧することができます。

もし提出していなかった場合、その過去の届出の効力を消滅させたい時は、事業廃止届出書又は不適用届出書を提出するようにしましょう。

税務署に閲覧しに行く時間もないほど差し迫っている時は、とりあえず事業廃止届出書又は不適用届出書をもう一度提出しておくという手もあります。

もし過去に提出してあったとしても、もう一度同じ書類を二重で提出する分には問題ないため、提出していたかどうか分からない場合とりあえずもう一度提出するのもありです。

 

まとめ

個人事業者が事業を廃止する前に課税事業者選択届出書や簡易課税制度選択届出書などの消費税法上の届出書を提出している場合において、それらの不適用届出書又は事業廃止届出書を提出していないときは、事業を再開した後もそれらの届出書の効力は残ったままとなります。

所得税における「個人事業の開業届出書」を提出していたとしても、消費税における「事業廃止届出書」とは別の書類なので、消費税法上の届出書の効力は消滅しないことに注意しましょう。

 

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