国外から輸入した商品に欠陥があった場合は、無償で代替品を輸入することがあります。
また、国外の取引先から商品のサンプル品の提供を受ける場合は、無償で商品サンプルを輸入します。
これらの場合、無償なんだから消費税はかからないだろうと思う方が多いかもしれません。
しかし、輸入取引については、無償で輸入した場合でも消費税の課税の対象となります。
今回は、なぜ国外から無償で輸入した貨物も消費税の課税の対象となるのか、その理由を説明したいと思います。
取引は国内取引、国外取引及び輸入取引の3種類に分けられる
消費税法では、取引は「国内取引」、「国外取引」及び「輸入取引」の3種類に分けられます。
資産の譲渡については、資産の譲渡の時における資産の所在場所が国内かどうかにより「国内取引」に該当するかどうかの判定を行います。
また、国外から国内に資産を輸入する取引は「輸入取引」とされ、国外における資産の譲渡は「国外取引」とされます。
上記をまとめると、以下のようになります。
輸入取引の課税要件は国内取引とは異なる
消費税法第4条第1項では、「国内取引」の課税の対象について以下のように規定しています。
国内において事業者が行つた資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。)及び特定仕入れには、この法律により、消費税を課する。
国内取引については、以下の4要件を満たす取引が消費税の課税の対象となります。
これに対し、「輸入取引」の課税の対象については、消費税法第4条第2項において次のように規定されています。
保税地域から引き取られる外国貨物には、この法律により、消費税を課する。
このように、消費税の課税の対象となるかどうかについては、「国内取引」と「国外取引」とで異なる規定が設けられています。
無償で輸入した場合の消費税の取扱い
貨物を無償で輸入した場合の消費税の取扱いについては、消費税法基本通達5-6-2において次のように記載されています。
(無償による貨物の輸入等)
保税地域から引き取られる外国貨物については、国内において事業者が行った資産の譲渡等の場合のように、「事業として対価を得て行われる」ものには限られないのであるから、保税地域から引き取られる外国貨物に係る対価が無償の場合、又は保税地域からの外国貨物の引取りが事業として行われるものではない場合のいずれについても法第4条第2項《外国貨物に対する消費税の課税》の規定が適用されるのであるから留意する。
「輸入取引」の課税の対象については、「国内取引」の課税の対象の4要件のような要件は規定されていないため、保税地域から引き取られる外国貨物であれば、無償であろうが事業でなかろうが、消費税が課されることとなります。
したがって、貨物を無償で輸入した場合も消費税の課税の対象となります。
しかし、これらの条文を見ただけでは、なぜ無償なのに消費税がかかるのかという理由や、実際にいくら払えばいいのかということまでイメージしづらいかと思います。
「条文や通達で規定されているから課税の対象なのだ」といわれても釈然とせず、いまいち納得できないのではないかと思います。
そこで、なぜこのような規定があるのかの理由を紐解くために、消費税を課税する趣旨や、外国貨物の引き取りに係る消費税額はどうやって計算されるのかを考えてみましょう。
消費地課税主義の観点から輸入取引も課税対象とされている
消費税は、国内において消費される物やサービスに対して課税することとしています。この考え方を「消費地課税主義」といいます。
国外から国内へ商品等の輸入が行われた場合は、その商品等は国内において消費されることになるため、「消費地課税主義」の観点から輸入取引についても消費税が課されることとされているのです。
(なお、国内から国外への輸出については、課税の対象から外すのではなく、「輸出免税等」の規定により消費税を免除することによって調整されています。)
無償であってもCIF価格は0円にはならない
外国貨物の保税地域からの引き取りに係る消費税は、以下の金額を課税標準として計算します。
なお、CIF価格とは、関税の額を計算する際の基準となる貿易取引の価格をいい、「Cost(貨物の代金)」と「Insurance(保険料)」と「Freight(運賃)」から構成されます。
もし貨物を無償で仕入れた場合は、貨物の代金は0円となりますが、保険料や運賃が0円になることは基本的にあり得ないため、CIF価格(関税課税価格)が0円になることはありません。
したがって、無償の輸入であっても、輸入に係る消費税の課税標準は0円とならないことから、無償で輸入した場合にも税関に消費税等を納めなければならないことがあります。
(なお、課税価格の合計が1万円以下の少額輸入品や法令により免税とされている物品には消費税はかかりません。)
まとめ
国外から無償で輸入した貨物も消費税の課税の対象となる理由を簡潔にまとめると次のようになります。
消費地課税主義の観点から、国内で消費される物品には消費税を課すべきであるため