先日、アメリカのロックバンド”Story Of The Year”の約6年ぶりとなる来日公演を見に行ってきました。
ゼロ年代を席巻したポストハードコア・スクリーモブームの全盛期にシーンを最前線で引っ張ってきた実力派バンドの代表格的存在である”Story Of The Year”のサウンドは、子供のころから夢中になって聴いていた僕にとって青春そのものといえます。
確定申告シーズン真っ只中の超繁忙期ではありますが、僕にとって現御神のような存在である”Story Of The Year”がアメリカから遠路はるばるわざわざ日本までご足労くださりご演奏あそばされるとあっては、行かないという選択肢はあり得ません。
浮足立ってライブハウスまで赴き、至福の音色に包まれている最中、あろうことかここでもまた職業病が発動してしまいました。「そういえばダンもライアンも非居住者だし、このライブって消費税法上の特定役務の提供に該当するのかな?だとしたらプロモーターはリバースチャージ方式による消費税の申告が必要じゃね?」という疑問が頭をつきまとい、途中から集中して演奏を聴くことができませんでした。一生の不覚であります。
今回は、海外アーティストによる来日公演の出演料に係る消費税の取扱いについて解説したいと思います。
リバースチャージ方式とは
消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。
上記要件の「② 事業者が事業として行うものであること」の「事業者」は国内事業者に限定するものではなく、たとえ非居住者である国外事業者であっても、課税事業者に該当するのであれば、上記4要件を満たす取引については消費税の納税義務を負います。
しかし、国外事業者による日本の消費税の申告は必ずしも徹底されておらず、海外のアーティスト等が日本で消費税の申告をせずに帰国してしまうケースが散見されていました。
そこで、平成27年税制改正で国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係の見直しが行われ、国外事業者が日本国内で行う芸能・スポーツ等の役務の提供を「特定役務の提供」と位置づけ、国内事業者が特定役務の提供を受けた場合は、「リバースチャージ方式」による申告・納税義務が課されることとなりました。
「リバースチャージ方式」は、イメージとしては所得税の「源泉徴収」と似たような制度であり、国外事業者が申告をせずに帰国してしまっても徴税できるように、特定役務の提供を受ける国内事業者が国外事業者に報酬を支払う際は消費税等相当額を差し引いた金額を支払い、国外事業者の代わりに税務署に消費税を申告納付します。
国内プロモーターを介して行うライブは特定役務の提供に該当する
国外事業者が他の事業者に対して芸能・スポーツ等の役務の提供を行った場合に「特定役務の提供」に該当します。
したがって、海外のアーティストが国内のプロモーターを介してライブを行う場合は、役務の提供を受ける者が事業者であるため「特定役務の提供」に該当し、国内プロモーターはリバースチャージ方式による消費税の申告・納税義務を負います。
直接ライブを行う場合は特定役務の提供に該当しない
国外事業者が不特定多数の者に対して芸能・スポーツ等の役務の提供を行った場合は「特定役務の提供」に該当しません。
したがって、海外のアーティストが国内のプロモーターを介さずに直接ライブを行う場合は、不特定多数の観客が役務の提供を受けることになるため、当該ライブは「特定役務の提供」に該当せず、海外アーティスト自身が消費税の申告・納税義務を負います。
(参考)国税庁Q&A
国税庁が公表している「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A」において、次のような回答があります。
問 44
社は、音楽家を雇用して各国でコンサートを実施している国外事業者です。今般、日本の会場を借りて、直接、日本の観客にチケットを販売してコンサートを開催しようと
考えています。日本のプロモーター等は一切関与しません。この場合、当社が行うコンサートの開催は、「特定役務の提供」に該当しますか。
【答】
「特定役務の提供」には該当しません。
「特定役務の提供」とは、国外事業者が国内において行う、映画若しくは演劇の俳優、音楽家その他の芸能人又は職業運動家の役務の提供を主たる内容とする事業として行う役務の提供のうち、当該国外事業者が他の事業者に対して行うもので、当該国外事業者が不特定かつ多数の者に対して行う役務の提供以外のものとされています(令2の2、基通5-8-6)。
したがって、国内においてコンサート等を開催する事業者に対して、所属する音楽家等を出演させる行為は、今回の「特定役務の提供」に該当しますが、ご質問のように、貴社がコンサート等を開催し、直接、不特定かつ多数の者に対して役務の提供を行うものは、「特定役務の提供」に含まれませんので、貴社において消費税の納税義務が課されることとなります。
なお、仮に、このようなコンサートの観客の中に、国内の事業者が事業に関連して購入したチケットにより来場した者がいたとしても、これら費用についてリバースチャージ方式による申告は必要なく、これまで同様に役務の提供を受けた事業者の仕入税額控除の対象となります。
Story Of The Yearのライブは特定役務の提供に該当するのか
では、”Story Of The Year”のライブは消費税法上の特定役務の提供に該当するのかでしょうか?
この点については、大変申し訳ないのですが、僕なりに一生懸命調べたのですがわかりませんでした。。。
”Story Of The Year”は、現在アメリカのEpitaph Recordsというレーベルに所属しているのですが、当該レーベルが日本でライブを行う際に集客等を国内のプロモーターに委託しているのかどうかは、力及ばず判明しませんでした。。。
しかし、”Story Of The Year”のライブが特定役務の提供であろうがなかろうが、彼らの奏でる魂を震わせるサウンドが感動に値するものであることは揺るぎない事実であり、音楽も消費税もボーダーレスの時代になっていることを実感しました。
なお、数ある”Story Of The Year”の名曲の中でも特に好きな曲は”The Antidote”という曲↓です。取り返しのつかないことになりつつある地球環境汚染問題に対して警鐘を鳴らす曲です。もし興味がありましたら仕事や勉強の合間に是非聴いてみてください♪
出典:Story Of The Year - The Antidote
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