家事消費などの「みなし譲渡」があった場合の簡易課税の事業区分

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

消費税法では、法人がその社に役員に対して資産を贈与した場合や個人事業者が棚卸資産や事業用資産を家事のために消費・使用した場合は「みなし譲渡」として、事業として対価を得て資産の譲渡が行われたものとみなされます。

簡易課税制度の適用を受けている場合に「みなし譲渡」があった場合、その取引は第何種事業に該当することになるのでしょうか?

今回は、「みなし譲渡」があった場合の簡易課税の事業区分の考え方について解説したいと思います。

 

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みなし譲渡とは

消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。

課税の対象の4要件
① 国内において行うものであること
② 事業者が事業として行うものであること
③ 対価を得て行うものであること
④ 資産の譲渡・貸付け、役務の提供であること

資産を贈与(無償で譲渡)したり家事のために消費・使用した場合は対価を得ていないため、「③ 対価を得て行うものであること」の要件をみたさず不課税取引となります。

しかし、消費税法第4条第5項の規定により、対価性のない取引であっても、事業として対価を得て行われた資産の譲渡とみなされる行為があります。

5 次に掲げる行為は、事業として対価を得て行われた資産の譲渡とみなす
一 個人事業者が棚卸資産又は棚卸資産以外の資産で事業の用に供していたものを家事のために消費し、又は使用した場合における当該消費又は使用
二 法人が資産をその役員(法人税法第二条第十五号に規定する役員をいう。)に対して贈与した場合における当該贈与

 

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簡易課税の事業区分

簡易課税制度の適用を受けている場合、概算により控除対象仕入税額を計算するときに、以下の事業区分ごとにそれぞれのみなし仕入率を乗じます。

事業区分 主な業種 みなし仕入率
第一種事業 卸売業 90%
第二種事業 小売業 80%
第三種事業 製造業 70%
第四種事業 その他の事業 60%
第五種事業 サービス業 50%
第六種事業 不動産業 40%

 

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他者から仕入れた商品のみなし譲渡は第二種事業

簡易課税の事業区分の考え方では、他の者から仕入れてきた商品を事業者に売った場合は「小売業」として「第一種事業」に該当、消費者に売った場合は「小売業」として「第二種事業」に該当します。

では、他の者から仕入れた商品を個人事業者が家事消費した場合や他の者から仕入れた商品を法人が役員に贈与した場合はどうなるのでしょうか?

正解は「第二種事業」です。

「法人の役員」や「個人事業者」と聞くと、なんとなく「事業者」なんじゃないかと思うかもしれませんが、簡易課税の事業区分を考えるうえでは「消費者」として考えます。

個人事業者が家事消費した場合は、プライベート(仕事モードオフ)の状態の個人事業者に譲渡したものと考えるため、「消費者」に販売したものとして「第二種事業」となります。

また、法人が役員に贈与した場合も同様に、プライベート(仕事モードオフ)の状態の役員に譲渡したものと考えるため、「消費者」に販売したものとして「第二種事業」となります。

簡易課税の場合のみなし譲渡の図

 

自己が製造した製品のみなし譲渡は第三種事業

自己が製造した製品の譲渡については、販売先が事業者であっても消費者であっても関係なく「製造業」として「第三種事業」に該当します。

したがって、自己が製造した製品に係るみなし譲渡は、個人事業者であっても法人の役員であっても「第三種事業」となります。

 

事業用資産のみなし譲渡は第四種事業

事業用資産を譲渡した場合も、販売先が事業者であっても消費者であっても関係なく簡易課税の事業区分は第四種事業となります。

したがって、個人事業者が事業用資産を家事のために使用した場合や法人が事業用資産をその社の役員に贈与した場合には、「第四種事業」に該当します。

 

課税標準額に算入する金額

「みなし譲渡」に該当する場合は、それぞれ次の金額を課税標準額に算入します。

みなし譲渡の場合
棚卸資産以外の資産の場合
 譲渡時の価額(時価)
 
棚卸資産の場合
 仕入価額 または 通常の販売価額×50% のいずれか大きい方

 

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