補助金や助成金に係る消費税の控除仕入税額の返還が必要な場合とは

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

国や地方公共団体は、政策目的を実現するための努力や工夫を行っている事業者に対し様々な補助金や助成金などを交付しています。

しかし、補助金や助成金を受け取った後に、消費税分の金額を返還しなければならないことがあることをご存知でしょうか?

今回は、補助金や助成金に係る消費税の控除仕入税額の返還が必要な場合について解説したいと思います。

 

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補助金収入は不課税売上げだが、補助金を原資とする支出は課税仕入れになる

消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。

課税の対象の4要件
① 国内において行うものであること
② 事業者が事業として行うものであること
③ 対価を得て行うものであること
④ 資産の譲渡・貸付け、役務の提供であること

補助金や助成金などは、商品やサービスの提供の対価として受け取るものではないため、課税の対象の4要件のうち「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たさず不課税取引となります。

一方、補助金や助成金を原資として固定資産などの購入に充てた場合は、仕入税額控除を受けることはできるのでしょうか?

この点については、消費税法基本通達11ー2-8に次のような記載があります。

(保険金等による資産の譲受け等)
法第2条第1項第12号《課税仕入れの意義》に規定する「他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けること」(以下「資産の譲受け等」という。)が課税仕入れに該当するかどうかは、資産の譲受け等のために支出した金銭の源泉を問わないのであるから、保険金、補助金、損害賠償金等を資産の譲受け等に充てた場合であっても、その資産の譲受け等が課税仕入れに該当するときは、その課税仕入れにつき法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》の規定が適用されるのであるから留意する。

したがって、補助金や助成金を原資として固定資産の購入などの課税仕入れを行った場合は、その購入費用について仕入税額控除の適用を受けることができます。

 

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仕入税額控除を受ける場合、消費税相当額分を重複して支給することになる

補助金や助成金の収入金額については不課税売上げとなる一方、固定資産などの購入費用は課税仕入となるため、その固定資産の購入費用に係る消費税額分の還付を受けることができます。

この場合、実質的に、その消費税相当額分を重複して支給しているということになります。

例えば、国や地方公共団体から550万円の補助金の交付を受け、その補助金を元手に550万円の機械装置を購入した場合は、その機械装置の購入費用に係る消費税等相当額 50万円分の還付を受けることができます。

補助金を原資として固定資産を購入するイラスト

補助金の交付を受けた事業者の利益

この場合、補助金 550万円の交付を受けた上に、さらに消費税等 50万円の還付まで受けることになり、実質的に国から 600万円分の補助金を受けているのと同じことになります。

このような場合に、実質的に重複して支給されたことになる消費税等相当額 50万円分の返還が必要になる場合があります。

 

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返還する金額は確定申告で仕入税額控除した金額

返還が必要となる金額は、確定申告において仕入税額控除した金額です。

全額控除の場合や個別対応方式において課税売上対応課税仕入れとしている場合は、その固定資産等の購入費用に係る課税仕入れ等の税額を全額返還する必要があります。

個別対応方式において共通対応課税仕入れとしている場合や一括比例配分方式を採用している場合は、その固定資産等の購入費用に係る課税仕入れ等の税額に課税売上割合を乗じた金額を返還します。

 

返還の要否は募集要項を確認

補助金や助成金などに係る消費税の控除仕入税額の返還が必要となるかどうかはケースバイケースです。

これは、消費税法に規定されているわけではなく、補助金や助成金の募集要項においてこのように定められていることが多いというだけで、すべての補助金や助成金について消費税等相当額分の返還が求められるわけではありません。

申請した補助金や助成金の募集要項に、上記のような消費税等相当額分の返還に関する条件が設けられていないかしっかり確認するようにしましょう。

なお、補助金の返還が不要な場合でも補助金の交付を受けた自治体への報告が必要な場合もあります。

消費税等相当額分の返還をしなかった場合や報告を忘れた場合は、「補助金の交付条件を満たしていない」とみなされて、消費税等相当額だけでなく補助金の全額の返還を求められる可能性もあるため十分注意しましょう。

 

補助金返還が必要とならない場合

以下のようなケースの場合は、そもそも消費税の還付を受けることがないため、補助金の返還は必要ないことになります。

補助金の返還が不要な場合
① 免税事業者である場合
② 簡易課税制度を採用している場合
③ 個別対応方式において補助金を原資として支出した課税仕入れを非課税売上対応としている場合
④ 補助金を原資とする支出が土地の購入費用や人件費の支払いなど課税仕入れにならない場合
⑤ 税抜金額で補助金の申請をした場合
⑥ 公益法人等で、特定収入割合が5%を超えている場合

ただし、上記のような場合であっても、自治体への報告が必要となることもあるため注意しましょう。

 

まとめ

補助金収入を原資として固定資産等を購入した場合は、消費税等の還付を受けることができるため、実質的にその消費税等相当額分だけ重複して支給していることと同じになります。

このような場合には、補助金を原資として購入した固定資産等に係る課税仕入れ等の税額のうち、確定申告において仕入税額控除の適用を受けた金額の返還が必要になることがあるため注意しましょう。

返還の必要の有無は補助金・助成金の交付条件により異なるため、募集要項をしっかり確認するようにしましょう。

 

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