消費税の納付税額の計算方法につき「簡易課税制度」を選択している場合は、売上げに係る消費税額に一定の「みなし仕入率」を乗じて仕入れに係る消費税額を計算するため、多額の設備投資等が行われた場合であっても、還付を受けることはできません。
しかし、簡易課税を選択していても、場合によっては消費税の還付を受けることができます。
今回は、簡易課税を選択している場合に消費税の還付を受けられる4つのケースについて解説します。
簡易課税制度とは
簡易課税制度の適用を受けて消費税額の計算をしている場合は、売上げに係る消費税額(預かった消費税額)のみを用いて納付税額を計算します。
売上げに係る消費税額から控除できる仕入れに係る消費税額は、実際の仕入れの金額にかかわらず、業種ごとに決められているみなし仕入率を乗じて簡便的に計算します。
事業区分 | 主な業種 | みなし仕入率 |
第一種事業 | 卸売業 | 90% |
第二種事業 | 小売業 | 80% |
第三種事業 | 製造業 | 70% |
第四種事業 | その他の事業 | 60% |
第五種事業 | サービス業 | 50% |
第六種事業 | 不動産業 | 40% |
したっがて、以下の数値例のように、設備投資等を行ったことにより、売上げに係る消費税額よりも仕入れに係る消費税額の方が多かったとしても消費税の還付を受けることはできません。
消費税額=100万円ー100万円×80%=20万円
したがって、仕入れに係る消費税額の金額は、簡易課税の計算では考慮されないことになります。
簡易課税でも還付を受けられる場合とは
簡易課税を選択している場合は、課税仕入れの金額がどれだけ多くても還付にはなりません。
しかし、簡易課税を選択していても、以下の3つのケースにあてはまれば、消費税の還付を受けることができます。
① 中間納付額が差引税額よりも多い場合
簡易課税を選択している場合であっても、当期中の中間納付額が差引税額(課税標準額に対する消費税額から控除税額を差し引いた残額)よりも多い場合は、多く払いすぎた中間納付額の還付を受けることができます。
例えば、以下の数値例の場合は、簡易課税を選択していても還付申告により中間納付額の還付を受けることができます。
この場合、中間納付額の還付額は次のように計算します。
100万円-100万円×80%-40万円=△20万円
② 売上げに係る対価の返還等の金額が課税売上高よりも多い場合
簡易課税を選択している場合であっても、当期中の売上値引きや返品、割戻しなどの「売上げに係る対価の返還等」の金額が課税売上高よりも多い場合は、控除不足還付税額の還付を受けることができます。
例えば、以下の数値例の場合は、簡易課税を選択していても還付申告により控除不足還付税額の還付を受けることができます。
この場合、控除不足還付税額は次のように計算します。
100万円-(100万円-120万円 → マイナスの場合0円)×80%-120万円
=100万円-0円×80%-120万円
=△20万円
③ 特定課税仕入返還等に係る消費税額が売上税額×(1-みなし仕入率)よりも多い場合
簡易課税を選択している場合であっても、特定課税仕入れに係る対価の返還等に係る消費税額が売上税額×(1-みなし仕入率)よりも多い場合は、控除不足還付税額につき還付を受けることができます。
例えば、以下の数値例の場合は、簡易課税を選択していても還付申告により控除不足還付税額の還付を受けることができます。
この場合、控除不足還付税額は次のように計算します。
(100万円-40万円)-100万円×80%=△20万円
④ 貸倒れに係る消費税額が売上税額×(1-みなし仕入率)よりも多い場合
簡易課税を選択している場合であっても、当期中の貸倒れに係る消費税額が売上税額×(1-みなし仕入率)よりも多い場合は、控除不足還付税額につき還付を受けることができます。
例えば、以下の数値例の場合は、簡易課税を選択していても還付申告により控除不足還付税額の還付を受けることができます。
この場合、控除不足還付税額は次のように計算します。
100万円-100万円×80%-40万円=△20万円
まとめ
簡易課税を採用している場合は、絶対に還付を受けることができないと思っている方も多いかもしれませんが、以下の3つのケースに該当すれば、簡易課税を採用していても消費税額の還付を受けることができます。
②~④はそう頻繁に起きるケースではないかもしれませんが、こういうケースもあり得るということを知っておくだけでも、いざというときに助かるかもしれません。