サービス料に消費税がかかるのはなぜ?チップや心付けとの違いは?

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

高級なホテルや飲食店を利用すると、本体料金のほかに「サービス料」を請求されることがあります。

この「サービス料」についても、本体価格と同様に消費税の課税対象となります。

今回は、サービス料に消費税がかかるのはなぜなのか?チップや心付けとはどう違うのかについて解説したいと思います。

 

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サービス料とチップ・心付けの違い

「チップ」とは、ホテルやレストランなどにおいて従業員によるサービスに対して、任意で支払われる金銭を指します。

また、「心付け」とは、世話になる人に感謝の気持ちを示すために与える金銭のことをいい、温泉旅館の女将さんや結婚式場のスタッフに渡すことが多いですが、内容は上記のチップと同じです。

一方、「サービス料」は、飲食店やホテルなどサービスを提供する施設で、あらかじめ「本体価格の10%」といった形で、チップの代わりに利用料金に上乗せして請求されます。

これは、欧米のチップの習慣が定着しなかった日本独自の料金制度です。

サービス料とチップ・心付けの主な違いは、「支払う金額をお客さんが任意で決められるか否か」です。

チップ・心付け:支払う金額をお客さんが任意で決める
サービス料:支払う金額があらかじめ決まっている

 

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消費税の課税の対象の4要件

消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。

課税の対象の4要件
① 国内において行うものであること
② 事業者が事業として行うものであること
③ 対価を得て行うものであること
④ 資産の譲渡・貸付け、役務の提供であること

サービス料もチップ・心付けも、いずれも従業員のサービスに対して支払われるものなので、「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たしそうな気がします。

果たして、これらは課税の対象になるのでしょうか?

 

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対価の額は「当事者間で取り決めた実際の取引額」

消費税法基本通達10-1-1において、課税資産の譲渡等の対価の額について次のような記載があります。

(譲渡等の対価の額)
10-1-1 法第28条第1項本文《課税標準》に規定する「課税資産の譲渡等の対価の額」とは、課税資産の譲渡等に係る対価につき、対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他の経済的利益の額をいい、消費税額等を含まないのであるが、この場合の「収受すべき」とは、別に定めるものを除き、その課税資産の譲渡等を行った場合の当該課税資産等の価額をいうのではなく、その譲渡等に係る当事者間で授受することとした対価の額をいうのであるから留意する。

太字の部分がポイントとなります。

消費税法において、課税標準となる金額は「当事者間が授受することとした対価の額」であり、取引当事者間の双方の合意のうえで取り決めた実際の取引額に対して課税されることになります。

これを踏まえて、サービス料やチップ・心付けが消費税の課税の対象となるかどうか考えてみましょう。

 

サービス料は当事者間で取り決めた取引額なので課税対象

サービス料のイラスト

「サービス料」については、店内やメニューにサービス料金とその請求条件を事前に客に対して掲示しています。

お客さんもその条件に合意したうえでサービス料金を支払っていることから、サービス料金は「当事者間で取り決めた取引額」となるため、消費税の課税標準に含まれる「対価の額」に該当します。

したがって、サービス料の支払いは対価性のある取引なので消費税の課税の対象となります。

 

チップや心付けは当事者間で取り決めた取引額ではないので課税対象外

チップのイラスト

チップや心付けは、ホテルやレストランなどがあらかじめ支払ってもらう金額を提示して請求するものではなく、お客さんが任意で決めた金額を一方的に支払うものなので、「当事者間で取り決めた取引額」ではありません。

したがって、チップや心付けは、従業員のサービスに対して支払うものではあるけれど、「当事者間で取り決めた取引額」ではないため消費税の課税標準額には含まれず、対価性のない取引として課税対象外(不課税取引)として取り扱われます。

 

(参考)サービス料は標準税率10%が適用される

令和元年10月1日から日本で初めて消費税の軽減税率制度が導入されることとなり、消費税は8%と10%とが混在することとなりました。

軽減税率8%が適用される取引は、以下の2つです。

軽減税率が適用される取引
・お酒や外食、医薬品等を除く飲食料品の譲渡
・定期購読契約に基づき配送される新聞(週2回以上発行されるもの)の譲渡

サービス料はあくまでも「役務の提供」なので、上記いずれにも該当しないことから軽減税率の適用対象とはなりません。

例えば、高級食材の販売店で、持ち帰り用の食材を販売した際に接客サービス料金を徴収した場合は、そのサービス料は標準税率10%が適用されます。

 

(参考)簡易課税制度を採用している場合、サービス料は第四種事業

簡易課税において、サービス業は通常、第五種事業となります。

しかし、飲食店がサービス料を料理代金とは別建てで請求しているとしても、飲食店における飲食物の提供に係る対価の一部を構成するものと認められますから、第四種事業に該当します。

また、部屋代、テーブルチャージ等の料金も同様の理由から、第四種事業に該当します。

 

まとめ

チップや心付けの支払いは「当事者間で取り決めた取引額」ではないため、消費税の課税対象外(不課税取引)となります。

それに対し、サービス料は請求条件を事前に客に対して掲示していることから「当事者間で取り決めた取引額」であるため、消費税の課税対象として課税標準額の計算に含まれます。

 

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