貸株取扱手数料や品貸料(逆日歩)、配当金相当額などの消費税の取扱い

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

投資家が保有する現物株式や登録国債などを証券会社等に貸し出して、銘柄に応じて貸株料(貸株金利)を受け取るサービスのことを「貸株」といいます。

今回は、貸株を行うことによる収受する貸株取扱手数料や品貸料(逆日歩)、配当金相当額に関する消費税の取扱いについて解説したいと思います。 

 

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個人事業者の場合はすべて不課税取引

消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。

課税の対象の4要件
① 国内において行うものであること
② 事業者が事業として行うものであること
③ 対価を得て行うものであること
④ 資産の譲渡・貸付け、役務の提供であること

個人事業者が行う有価証券の売買や貸付けなどの取引は、すべて上記課税の対象の4要件のうち「② 事業者が事業として行うものであること」の要件を満たさないこととされています。

したがって、個人投資家が有価証券を証券会社等に貸し付け、貸株取扱手数料や品貸料(逆日歩)、配当金相当額を収受した場合はすべて不課税取引となるため、消費税について考慮する必要はありません。

以下、法人がこれらを収受した場合について解説します。

 

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貸株取扱手数料

自社の保有している資金や商品などを投資目的として貸与して利用できるようにすることを「信用供与」といいます。

貸株取扱手数料は、実質的に自社の保有している有価証券を投資目的として証券会社等に貸与して利用できるようにする対価としての性質を持っています。

消費税法第6条の規定により、「信用の保証としての役務の提供」は非課税取引に該当することとされているため、貸株取扱手数料の受け取りは非課税取引となります。

 

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品貸料(逆日歩)

当社が保有している銘柄の株を空売りしている投資家が多すぎて、証券会社で空売りする為の株数が足りない時に、不足株数を入札形式で調達することがありますが、その時の調達した金額の事を品貸料と言います。

品貸料は、一般には逆日歩(ぎゃくひぶ)とも呼ばれます。

この品貸料については、実質的には有価証券の貸付料に該当します。

消費税法施行令第10条第3項第11号において、有価証券等の貸付けは非課税取引とされています。

十一 法別表第二第二号に規定する有価証券(ゴルフ場利用株式等を除くものとし、その権利の帰属が社債、株式等の振替に関する法律の規定による振替口座簿の記載又は記録により定まるものとされるものを含む。)又は登録国債の貸付け

したがって、品貸料(逆日歩)の受け取りは、有価証券の貸付料として非課税取引となります。

 

配当金相当額

貸株をしていると「配当金相当額」を受け取ることができます。通常の配当金ではなく配当金「相当額」なので注意が必要です。

貸株により貸し出した株式は、実質株式名簿上の名義が貸出先になるため、当社の名義ではなくなるため、議決権や配当金、株主優待等の株主としての権利は得られなくなります。

配当金については、通常の配当金のように直接発行会社から受け取ることはできない代わりに、配当金の額から源泉徴収税額を差し引いた「配当金相当額」を証券会社等から受け取ることができます。

通常の配当金の受け取りは、株主としての地位に基づいて受け取るものであり、資産の譲渡等の対価として受け取るものではないため、課税の対象の4要件のうち「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たさず不課税取引となります。

しかし、「配当金相当額」については、株主としての地位に基づいて受け取るものではなく、証券会社等との契約に基づいて受け取るものであり、その基因となる取引は有価証券の貸付けであるため、配当金相当額の受け取りも、有価証券の貸付けの対価として非課税取引に該当するものと考えられます。

 

(参考)国税庁の質疑応答事例

国税庁の質疑応答事例『貸株取扱手数料及び品貸料』では、次のような回答がされています。

【照会要旨】
証券金融会社等が有価証券又は登録国債を貸し付ける場合に収受する貸株取扱手数料及び品貸料は非課税となるのでしょうか。

【回答要旨】
貸株取扱手数料は実質的には信用供与の対価と認められるものですから非課税となります(法別表第二3)。
また、品貸料は有価証券(株券)の貸付料に該当しますから、非課税となります(令103十一)。

 

まとめ

貸株を行うことによる収受する貸株取扱手数料や品貸料(逆日歩)、配当金相当額についてはすべて非課税取引となります。

なお、個人事業者の場合は「事業として」に該当しないため、すべて不課税取引となります。

 

関連するアプリの問題

消費税法 無敵の一問一答

問題番号 タイトル
758 品貸料
800 貸株取扱手数料

 

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