企業会計では、収益は「実現主義の原則」に基づいて認識します。商品の販売に係る売上が「実現」するのは「商品を販売したとき」となります。
ここで、「商品を販売したとき」とは、どの時点を指すのでしょうか?
通信販売業や卸売業の場合、商品を出荷してから相手先事業者が検収を終えるまでにタイムラグがあります。
そのため、収益の認識基準については企業会計上様々な基準が認められており、消費税においても経理実務に配慮して、棚卸資産の引渡しの日(資産の譲渡等の時期)については種々の基準が認められてます。
今回は、消費税法上、棚卸資産の引渡しの日(資産の譲渡等の時期)について、どのような基準があるのか解説したいと思います。
資産の譲渡等を行った日
消費税法上、棚卸資産の引渡しに係る売上げは、「資産の譲渡等を行った日」の属する課税期間において計上します。
棚卸資産の引渡しに係る「資産の譲渡等を行った日」については、消費税法基本通達9-1-1及び9-1-2において次のように規定されています。
(棚卸資産の譲渡の時期)
棚卸資産の譲渡を行った日は、その引渡しのあった日とする。
(棚卸資産の引渡しの日の判定)
棚卸資産の引渡しの日がいつであるかについては、例えば、出荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができることとなった日、検針等により販売数量を確認した日等、当該棚卸資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じてその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち、事業者が継続して棚卸資産の譲渡を行ったこととしている日によるものとする。・・・(後略)
したがって、「棚卸資産の引渡しの日」とは、一律にこの日ですと決まっているわけではなく、事業者が毎期継続して資産の譲渡等を行ったこととしている日とされます。
通達で例示されている収益の計上基準は、それぞれ出荷基準、検収基準、使用収益基準、検針基準といわれています。
これらの基準は、法人税法における棚卸資産の販売価格の益金算入に係る認識基準と同じです。
出荷基準
出荷基準を採用している場合、商品や製品を倉庫や工場から出荷した日に売上げを計上します。
相手方の連絡を待つことなく、出荷作業が完了した時点で売上げを計上できるため、簡便な方法として実務でも広く採用されています。
検収基準
検収基準では、相手方が商品や製品を受け取り、品質条件・数量・仕様などについての検収を完了した日に売上げを計上します。
相手方の検収が完了するまで収益を計上しないため、出荷基準と比べて、品質に適合した商品に係る確実な収益のみを計上することができます。
使用収益基準
使用収益基準では、相手方が商品や製品を使用可能となった日に売上げを計上します。
主に不動産(土地や建物)の販売について、この基準が採用されています。
検針基準
検針基準では、検針などにより販売数量を確認した日に売上げを計上します。
主に電気、ガス、水道などのメーターで消費量を確認できるものについて、この基準が採用されています。
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