海外渡航時の国際線飛行機の航空券や諸費用に消費税はかかるのか?

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

海外旅行に行く際は、国際線飛行機の航空券の代金のほか、航空施設使用料や燃油サーチャージなどの諸費用がかかりますが、これらに消費税はかかるのでしょうか?

今回は、海外渡航時の国際線飛行機の航空券や諸費用に消費税はかかるのかについて解説したいと思います。

 

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国際線旅客の取引区分

そもそも、国際線旅客は消費税の課税対象となるのでしょうか?

消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。

課税の対象の4要件
① 国内において行うものであること
② 事業者が事業として行うものであること
③ 対価を得て行うものであること
④ 資産の譲渡・貸付け、役務の提供であること

国際線旅客は、日本から海外へ飛び立つ飛行機なので「① 国内において行うものであること」の要件を満たさないでのでは?と思うかもしれません。

しかし、旅客サービスが消費税法上国内取引に該当するかどうかは、消費税法施行令第6条第2項第1号の規定により、次のように規定されています。

2 法第四条第三項第二号に規定する政令で定める役務の提供は、次の各号に掲げる役務の提供とし、同項第二号に規定する政令で定める場所は、当該役務の提供の区分に応じ当該役務の提供が行われる際における当該各号に定める場所とする。
一 国内及び国内以外の地域にわたつて行われる旅客又は貨物の輸送 当該旅客又は貨物の出発地若しくは発送地又は到着地

つまり、「出発地」または「到着地」のいずれかが国内であれば、国内取引に該当することになるため、日本の空港と海外の空港をつなぐ国際線は「① 国内において行うものであること」の要件を満たし、消費税の課税対象取引となります。

 

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国際線旅客は輸出免税とされている

課税の対象外ということは、消費税がかかるの?と思うかもしれませんが、国際線旅客については、消費税法第7条第1項3号において次のように規定されています。

(輸出免税等)
第七条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、次に掲げるものに該当するものについては、消費税を免除する。
・・・(中略)・・・
三 国内及び国内以外の地域にわたつて行われる旅客若しくは貨物の輸送又は通信

国際線旅客は上記太字部分の規定に該当することになるため、消費税は免除される(免税取引となる)ということになります。

(参考)国内線旅客でも例外的に航空券が免税になることがある

国内線旅客は、原則として消費税は免除されず、10%の消費税が課されます。

しかし、例外として、国際輸送の一環として国内線が利用される場合で、国内線と国際線を24時間以内に 乗り継ぐ場合は、国際航空運賃の一部に含まれている国内輸送区間分も免税とされます。

参考:国税庁-質疑応答事例『国際旅客輸送の一環として行われる国内輸送の輸出免税』

【照会要旨】
国際航空運賃の一部に含まれている国内輸送区間分は免税と考えてよいでしょうか。

【回答要旨】
国際旅客輸送の一環として行われる役務提供の一部に国内輸送区間分が含まれているとしても、次の要件のすべてを満たす場合にはその全体が国際旅客輸送に該当するものとして免税となります(基通7-2-4)。

(1) 契約において国内輸送に係る部分が国際旅客輸送の一環であることが明らかにされていること。
(2) 国内間の移動のための輸送と国内と国外との間の移動のための輸送が連続して行われるものとして、国内乗継地又は寄港地への到着から国外への出発までの時間が定期路線時刻表上で24時間以内であること。

 

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その他の諸費用について

燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)

国際線の燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)については、国際線旅客運賃の一部として免税となり、消費税はかかりません。

旅客サービス施設利用料(PSFC)

旅客サービス施設利用料(Passenger Service Facility Charge)とは、旅客ターミナルビルで利用するロビーや昇降機設備などの館内移動施設、 フライト情報システムなど、さまざまな施設の維持管理、 手荷物カートやお客様案内などサービスの提供に充てるための料金です。

これらは、日本国内の空港内で享受したサービスの対価であるため免税とはならず、消費税10%が課されます。

旅客保安サービス料(PSSC)

旅客保安サービス料(Passenger Security Service Charge)とは、乗客の安全を確保するために行う、高性能検査装置による手荷物検査、 ハイジャック検査や旅客ターミナルビルの保安維持などサービスの提供に充てるための料金です。

これらは、日本国内の空港内で享受したサービスの対価であるため免税とはならず、消費税10%が課されます。

海外の空港で徴収される空港税

海外の空港で徴収される出入国税、空港施設利用税、税関審査料などの空港税は、国外で行われる取引なので課税対象外(不課税取引)となり、日本の消費税はかかりません。

旅行代理店手数料

国内の旅行代理店に支払う手数料は、国内において旅行手配してもらったサービスの対価として支払うものであるため、消費税10%が課されます。

キャンセル手数料

航空券のキャンセル手数料は、搭乗区間や解約等の時期などにより金額の異なるものであれば、逸失利益等に対する損害賠償金に該当し、課税の対象の4要件のうち「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たさないことになるため課税対象外(不課税取引)となり、消費税はかかりません。

ただし、解約等の時期に関係なく一定額を受け取ることとされている部分の金額は、解約等に伴う事務手数料に該当するため、消費税10%が課されます。

参考:国税庁-タックスアンサー No.6253『キャンセル料』

パスポート(旅券)の発行手数料

パスポート(旅券)の発行手数料は、非課税とされる行政手数料の対価であるため、消費税は非課税となります。

ビザ(査証)の発行手数料

ビザ(査証)の発行手数料についてもパスポートと同様に、非課税とされる行政手数料の対価であるため、消費税は非課税となります。

ただし、申請代行業者に支払う手数料は消費税10%が課されます。

国際観光旅客税(出国税)

国際観光旅客税(出国税)は、国際旅客運送事業を営む者が特別徴収義務者として納税義務者である国際観光旅客等から1,000円を徴収して国に納付するものです。

税金の支払いは、課税の対象の4要件のうち「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たさないことになるため課税対象外(不課税取引)となり、消費税はかかりません。

 

まとめ

海外渡航時の国際線飛行機の航空券や諸費用に係る消費税の取扱いを表にしてまとめると、以下のようになります。

内容 消費税の区分
航空券の代金 免税
燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ) 免税
旅客サービス施設利用料(PSFC) 課税
旅客保安サービス料(PSSC) 課税
海外の空港で徴収される空港税 不課税
旅行代理店手数料 課税
キャンセル手数料(搭乗区間や解約等の時期などにより金額の異なるもの) 不課税
キャンセル手数料(解約等の時期に関係なく一定額を受け取れるもの) 課税
パスポート(旅券)の発行手数料 非課税
ビザ(査証)の発行手数料 非課税
ビザ(査証)の申請代行業者に支払う手数料 課税
国際観光旅客税(出国税) 不課税

 

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