特定期間における課税売上高が5千万円超の場合の簡易課税の適用の有無

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

消費税の納付税額の計算上、簡易課税制度を採用することができるかどうかは、基準期間における課税売上高が5千万円以下かどうかにより判定を行います。

では、特定期間における課税売上高が5千万円を超えている場合は、簡易課税を適用できるのでしょうか?

今回は、特定期間における課税売上高が5千万円超の場合の簡易課税の適用の有無について解説したいと思います。

 

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基準期間・特定期間とは

消費税の納税義務の有無は、「基準期間」と「特定期間」のそれぞれの期間にどれだけ課税売上げがあったかで判定します。

なお、「基準期間」とは、個人事業者の場合はその年の前々年、法人の場合は原則としてその事業年度の前々事業年度です。

(注)前々事業年度が1年未満の場合は、その事業年度開始の日の2年前の日の前日から1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間となります。

また、「特定期間」とは、個人事業者の場合はその年の前年1月1日から6月30日までの期間、法人の場合は原則としてその事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間をいいます。

(注)前事業年度が7か月以下の場合等は、基準期間に含まれない前々事業年度開始の日以後6ヶ月の期間となります。

「基準期間」と「特定期間」をイラストにまとめると、次のようになります。

個人事業者の基準期間及び特定期間
個人事業者の基準期間及び特定期間
3月決算法人の基準期間及び特定期間
法人の基準期間及び特定期間

基準期間における課税売上高又は特定期間における課税売上高のいずれかが1,000万円を超えている場合は、納税義務は免除されないこととなります。

なお、特定期間における課税売上高は、特定期間中の給与等の支払額にすることができます。この点については、詳しくは次の記事をご覧ください。

 

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簡易課税の適用判定は基準期間における課税売上高のみで行う

簡易課税制度(中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例)が適用できるかどうかは、基準期間における課税売上高が5千万円以下かどうかにより判定を行います。

(中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例)
第三十七条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、その納税地を所轄する税務署長にその基準期間における課税売上高(同項に規定する基準期間における課税売上高をいう。以下この項及び次条第一項において同じ。)が五千万円以下である課税期間(第十二条第一項に規定する分割等に係る同項の新設分割親法人又は新設分割子法人の政令で定める課税期間(以下この項及び次条第一項において「分割等に係る課税期間」という。)を除く。)についてこの項の規定の適用を受ける旨を記載した届出書を提出した場合には、当該届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間(当該届出書を提出した日の属する課税期間が事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間である場合には、当該課税期間)以後の課税期間(その基準期間における課税売上高が五千万円を超える課税期間及び分割等に係る課税期間を除く。)については、第三十条から前条までの規定により課税標準額に対する消費税額から控除することができる課税仕入れ等の税額の合計額は、これらの規定にかかわらず、次に掲げる金額の合計額とする。この場合において、当該金額の合計額は、当該課税期間における仕入れに係る消費税額とみなす。

条文中においても、簡易課税制度を適用できるかどうかの判定は「基準期間における課税売上高」のみで行うこととされています。

したがって、特定期間における課税期間が5千万円を超えている場合であっても、基準期間における課税売上高が5千万円以下であれば、簡易課税制度を適用することができます。

納税義務の判定で用いた課税売上高を使用するわけではないことに注意しましょう。

 

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具体例

数値例
当社の当課税期間に係る基準期間における課税売上高は800万円、特定期間における課税売上高は5,500万円であった。
なお、当社は前課税期間の末日までに簡易課税制度選択届出書を提出している。

【納税義務の有無の判定】

① 基準期間における課税売上高

800万円 ≦ 1,000万円

② 特定期間における課税売上高

5,500万円 > 1,000万円 ∴ 納税義務あり

【簡易課税の適用有無の判定】

① 届出書の提出あり

② 基準期間における課税売上高

800万円 ≦ 5,000万円 ∴ 簡易課税の適用あり

ポイント
「特定期間における課税売上高」は簡易課税の適用有無の判定では一切使用しない!

 

まとめ

簡易課税制度の適用の有無は基準期間における課税売上高が5千万円以下かどうかにより判定を行います。

特定期間における課税売上高が5千万円を超えていたとしても、基準期間における課税売上高が5千万円以下であれば簡易課税制度を適用することができます。

 

関連するアプリの問題

消費税法 無敵の一問一答

問題番号 タイトル
1183 特定期間における課税売上高が5千万円超の法人

 

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