取引先等の接待のために、役員や従業員に毎月一定額の「渡切交際費」を支給している会社も多いかと思います。
今回は、役員や従業員に支給する接待のための渡切交際費に係る消費税の取扱いについて解説したいと思います。
渡切交際費とは
「渡切交際費」とは、役員や従業員に、取引先の接待等の会社業務のために使用する目的で支給した金銭のうち、精算を要さないためその費途が明らかでないものをいいます。
機密費、招待費、交際費、旅行費等の名目で支給しているものであっても、後日精算が行われないものはすべて「渡切交際費」に該当します。
渡切交際費は「給与」として取扱う
役員や従業員に支給する渡切交際費は、法人において精算されないものであり、支給を受けた者が任意に処分することができ、会社業務に関係のある支出であることが明らかでないことから、役員や従業員に対する「給与」として取扱います。
この場合、役員又は従業員においては給与所得に該当し、当該渡切交際費の支給額は源泉徴収の対象となります。
消費税法上は仕入税額控除できない
消費税においては、給与等を対価とする役務の提供は、課税の対象の4要件のうち「事業として行うものであること」の要件を満たさないため課税対象外(不課税取引)となり、課税仕入れに該当しないこととされています。
たとえ、役員や従業員に支給した金銭が、実際には会社業務のために使われていたとしても、仕入税額控除を受けるためには、課税仕入れの相手方の氏名又は名称、年月日、取引の内容、取引金額等を記載した帳簿及び請求書等を保存する必要があるため、精算を要しない渡切交際費は仕入税額控除の対象となりません。
したがって、渡切交際費は、たとえ本来は課税仕入れに該当する支出であったとしても、その費途が明らかにされていない以上、仕入税額控除の適用を受けることはできません。
国税庁が公表しているタックスアンサーにおいても、以下のように記載されています。
なお、渡切交際費などで、その使途が明らかにされていない場合には、仕入税額控除の対象となりません。
仕入税額控除を受けるためには
渡切交際費について、課税仕入れとして仕入税額控除を受けるためには、支給した金銭の費途がわかるように、役員や従業員が領収書や請求書を会社に提出して精算し、支出の事実及び会社の業務に関連する費用であることを明らかにする必要があります。
帳簿及び請求書等により取引内容が明らかにされている場合は、役員や従業員に対する給与には該当せず、課税仕入れとして仕入税額控除を受けることができます。
ただし、取引内容が明らかにされていたとしても、会社業務と無関係であったり、社会通念上の常識的な範囲を超える支出額である場合などは、やはり「給与」と認定されてしまい、仕入税額控除も適用されないことに注意しましょう。
まとめ
役員や従業員に支給する渡切交際費で精算を要しないものは「給与」として扱われ、仕入税額控除を受けることはでいません。
仕入税額控除を受けるためには、帳簿及び請求書等によりその支出の事実及び会社の業務に関連する費用であることを明らかにする必要があります。
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