事業者にとって、接待交際費は取引先との関係を円滑に保つために必要不可欠な支出となります。
接待交際費の支出の内容は多岐にわたり、消費税の適用関係も様々です。
そこで今回は、接待交際費に係る消費税の税率、課否判定、課税仕入れの区分について解説したいと思います。
接待飲食費
古今東西、人類は皆お酒が大好きです。とりあえずお酒を一緒に飲んでおけばたいてい仲良くなれます。
関係を円滑に保つために最も有効なツールは「酒」であるといっても過言ではないので、接待交際費の支出の中でも最も多いのは接待飲食費だと思います。
ちなみに僕はお酒が苦手なので、接待のための飲み会は仮病を使って休みます。
課否判定
接待飲食費は、国内において取引先を接待するために支出したものであれば、課税の対象となります。
ただし、国外の取引先の接待をするために国外の飲食店で飲食した場合は課税対象外となります。
適用税率
飲食店において取引先を接待するために飲食した場合は、「外食」なので軽減税率は適用されず消費税は10%となります。
なお、例えば、社内の会議室等で取引先を接待するために飲食料品を提供したのであれば「外食」にはならず、消費税は8%(軽減税率)が適用されます。ただし、お酒を購入した場合は軽減税率は適用されません。
注意点
仕事が終わった後に上司との飲みニケーション()に付き合わされた場合など、社内の人間同士での飲食費を会社が負担した場合は、「接待交際費」ではなく「福利厚生費」又は「給与手当」となります。
その飲食費が、全従業員に対して一律に支給されるものであり、かつ、社会通念上常識的な範囲内の金額であれば「福利厚生費」となり、課税仕入れに該当します。そうでない場合は、従業員に対する「給与手当」として取り扱うため、消費税の課税対象外取引(不課税取引)となります。
接待ゴルフ代
得意先や取引先の接待のためにゴルフをプレーした場合も接待交際費に該当します。
課否判定
国内のゴルフ場でプレイした場合のプレイ料金は課税対象となります。
ただし、プレイ料金に含まれている「ゴルフ場利用税」や「緑化協力金」については課税対象とならないことに注意しましょう。
なお、ゴルフ場利用税を支払った場合の経理処理については、詳しくは次の記事をご覧ください。
適用税率
ゴルフプレー料金は消費税10%です。
ゴルフ場内のレストランなど、椅子やテーブルなどの飲食設備が設置されている場所で飲食した場合については「外食」扱いとなり、消費税10%となります。
ただし、ゴルフをプレイしながら飲食するために買ったドリンクや軽食は、「椅子やテーブルなどの飲食設備が設置されている場所で飲食」するものではないため、軽減税率が適用され 消費税8%となります(ビールなどのお酒は10%です)。
注意点
領収書に「ゴルフ場利用税」や「緑化協力金」の内訳が明記されていない場合は、それらの金額も含めた全額を課税仕入れとして処理も良いこととなっています。
贈答品
お歳暮やお中元、お土産など贈答品を送った場合も、「接待交際費」として計上します。
課否判定
贈答品については、国内で購入したものであれば課税対象取引となります。
ただし、商品券やビール券などの「物品切手等」に該当するものを購入した場合は非課税取引となります。
適用税率
ビールやワイン、日本酒などの酒類を贈答品として購入した場合や、生花やタオル、食器などの飲食料品以外の物を購入した場合は、消費税10%となります。
上記以外の、お菓子や果物、ハムなどの飲食料品を購入した場合は軽減税率が適用され、消費税8%となります。
ただし、例えば、ワインとハムのセット商品などのように、食品と食品以外の資産が一体として販売されているもの(一体資産)については、次のいずれの要件も満たす場合はその全体が軽減税率の適用対象となります。
慶弔費・祝金・見舞金
取引先の冠婚葬祭に出席した場合にご祝儀や香典を渡します。
また、取引先の新店舗がオープンしたり祝い金を渡したり、取引先の従業員が入院をした場合に見舞金を渡すことがあります。
これらの支出も、取引先との関係を円滑に保つためのものとして「接待交際費」として計上します。
課否判定
ご祝儀や香典などの慶弔費や祝金・見舞金に係る支出は、対価性のある取引ではないため消費税の課税対象外取引(不課税取引)となります。
ただし、見舞いに持参する果物や葬式に出す花輪などの購入費用は消費税の課税対象となります。
適用税率
果物やゼリーなどの飲食料品の購入費用については、軽減税率が適用されるため消費税8%となります。
花輪や酒類の購入費用については、消費税は10%となります。
旅行の招待費用
取引先を旅行に招待した際に負担した航空券や宿泊費の金額は「接待交際費」として計上します。
課否判定
国内の旅行費用は、消費税の課税対象取引となります。国外旅行の場合は、国外取引の要件を満たさず課税対象外取引(不課税取引)となります。
また、温泉旅館に泊まった場合に支払う「入湯税」や女将さんに支払う「心付け」、ホテルマンに支払う「チップ」については課税対象外となります。
なお、入湯税を支払った場合の経理処理については詳しくは次の記事をご覧ください。
適用税率
お土産としてお酒以外の飲食料品を購入した場合は、その購入費用には軽減税率が適用され、消費税8%となります。
上記以外は、基本的には消費税10%となります。
式典の開催費用
店舗を新装オープンした場合や会社創立○周年の記念式典で取引先を招待した場合の開催費用も「接待交際費」となります。
課否判定
式典開催費用は、式典が国内において行われたものである場合は対象取引となります。
適用税率
参加者に対して紅白饅頭などの飲食料品のお土産を提供する場合のその購入費用は軽減税率が適用され、消費税8%となります。
なお、式典において立食パーティーを開催した場合に、飲食店に「出張料理」や「ケータリングサービス」を依頼したときは軽減税率は適用されず消費税10%となります。
渡切交際費
渡切交際費とは、役員又は従業員に現金で前渡し、領収書等の証拠資料をもって精算がされないような交際費のことをいいます。
例えば、絶対の相手方にタクシー代として現金を渡すような場合は、領収書をもらうことができないため渡切交際費に該当します。
課否判定
渡切交際費については、費途が不明であるため役員又は従業員に対する給与としての性質を持つため、消費税の課税対象外取引(不課税取引)となります。
なお、渡切交際費に関する消費税の取扱いの詳しい解説は、次の記事をご覧ください。
課税仕入れの区分
当課税期間の課税売上高が5億円を超える場合又は課税売上割合が95%未満である場合は、課税仕入れを「課税対応」「非課税対応」「共通対応」に区分する必要があります。
接待交際費に係る課税仕入れの区分は、原則的に「共通対応課税仕入れ」として 区分することになります。
ただし、接待する相手が課税商品の得意先・仕入先である場合など、その支出が課税商品の販売向上のために行われたものであり、課税売上げにのみ対応するものであることが明確な場合であれば、「課税売上対応課税仕入れ」として処理します。
また、身体障害者用物品などの非課税資産のみを販売している得意先を接待する場合など、その支出が非課税売上げにのみ対応するものであることが明確な場合であれば、「非課税売上対応課税仕入れ」として処理します。
接待交際費に係る支出と特定の売上げとの対応関係が明確でない場合は、「共通対応課税仕入れ」として処理します。
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