会社の役員の親族(配偶者や子供など)に、会社業務に関連する雑用などのお手伝いをしてもらった場合に一定の謝礼を支払うことがあります。
この場合、その謝礼として支払った金額は外注費などの費用で計上し、課税仕入れとすることはできるのでしょうか?
今回は、役員の親族に手伝いをしてもらい支払った外注費が課税仕入れになるかどうかについて解説したいと思います。
課税の対象の4要件
消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。
法人が行う取引はすべて「② 事業者が事業として行うものであること」の要件を満たすこととされているため、役員の親族にお手伝いをしてもらったことにより支払う謝礼が課税の対象となるかどうかは「③ 対価を得て行うものであること」を満たすかどうかがポイントとなります。
「給与」については課税対象外(不課税取引)
消費税法第2条第1項第12号に「課税仕入れ」の定義が規定されています。
十二 課税仕入れ 事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供(所得税法第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等を対価とする役務の提供を除く。)を受けること(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるもので、第七条第一項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するもの及び第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるもの以外のものに限る。)をいう。
太字部分で示した通り、給与等を対価とする役務の提供は課税仕入れの範囲から除かれることになります。
したがって、雇用契約に基づいて労働力の提供を受けた場合に支払う給与については消費税の課税対象外(不課税取引)とされています。
もし役員の親族をアルバイト等として会社で雇用している場合は、お手伝いをしてもらった対価として支払う謝礼は「給与」に該当するため、不課税となります。
雇用契約がない場合
では、雇用契約を締結していない場合はどうなるでしょうか?
役員の親族に支払った外注加工費が課税仕入れに該当するかどうかは、平成29年6月6日の国税不服審判所採決事例において争われたことがあります。
事例では、法人の役員の親族が、工場内の倉庫での製品の整理、工場裏の草刈り等の役務の提供の対価として、外注加工費を支払っています。
その役員は、働かないと小遣いはあげられないとのことで、それぞれが休みの日に、その都度、工場の周りの草刈り、機械の移動の手伝い、文書及び在庫管理のための表の作成、内職をしてもらう者に依頼する製品の振り分け、製品の積み下ろし等の仕事を依頼し、仕事の内容と作業時間に応じて支払う金額を大雑把に決めて、毎月10日に支払っていました。
業務内容を見ると、しっかり会社業務をこなしているように見えます。
しかし、本事例では、役員は金員を毎月一定又は全員一律の金額としており、各親族が行ったとする仕事が多様で、その作業時間にも長短があったことを鑑みると、仕事の内容と作業時間に応じて金額を決定しているとは言えません。
また、各親族に依頼する仕事内容についても特に仕切書を作成しておらず、各親族から領収証等の交付も受けていませんでした。
さらに、作業の確認状況についても「私か他の誰かが確認していました。従業員の中には見ていた者がいると思います。」と述べるだけでした。
この点について、法人にとって資金の流出となる外注加工費の支出といった重要な取引においては、いかなる内容あるいは量の役務の提供を受けたのかが管理されてしかるべきところです。
本件役員は、親族以外の者に対して支払った外注加工費については仕切書を作成して管理していた一方で、親族に対して支払ったとする外注加工費については仕切書を作成しておらず、また、本件内職代内訳書への役務の内容等の記録や領収書等の受領も行なっていないなど何ら管理もしていませんでした。
そのため、親族へ支払った外注加工費も課税仕入れになるという主張は論理が一貫せず不自然であるとともに重要な点において明確性を欠く不合理なものであって、にわかに信用することができないため、親族に支払う外注加工費は、役務の提供の対価とは認めらず、課税の対象4要件のうち「③ 対価を得て行うものであること」を満たさず、課税の対象外(不課税取引)となります。
この場合、外注加工費というより、ただの「お小遣い」ということになります。役員から払っている場合は経理処理は不要ですが、会社が払っている場合は「寄附金」などで処理することになります。
まとめ
役員の親族にお手伝いをしてもらった場合に支払う金額が課税仕入れになるかどうかは、次に表でまとめました。
雇用契約の有無 | 作業の管理 | 課税仕入れの課否 |
雇用契約あり | 不課税仕入れ | |
雇用契約なし | 作業時間等は大雑把にしか把握しておらず、毎月一定額を全員一律に支払っている | 不課税仕入れ |
仕切書で作業時間等を管理しており、領収証等の交付も受けている | 課税仕入れ |
参考記事
謝金や謝礼金に関する消費税の取扱いは、次の記事でも解説しています。