自動車やバイクのエンジンオイルをあらかじめキープしておくシステムとして「オイルリザーブシステム」というものがあります。
今回は、オイルリザーブシステムを利用した場合の消費税の取扱いについて解説したいと思います。
オイルリザーブシステムとは
オイルリザーブシステムとは、システムに加入した時点で一定量のエンジンオイルをリザーブ(予約・確保)し、全国の加盟店でいつでも手軽にオイル交換ができるシステムです。
缶で購入する場合と比べて、余ったオイルが無駄にならず、保管や廃油処理などのわずらわしさの問題がなく効率的にオイル交換ができるため、多くの自動車やバイクの販売店がこのシステムを採用しています。
オイルリザーブシステムに加入する場合は、加入時にリザーブ量に応じた一定の加入料金を支払い、リザーブ量を使い切ったら継続加入で新たにオイルをリザーブすることができます。
また、一定の条件のもと、オイルの残量に応じて加入額の一部の払い戻しを受けることもできます。
オイルリザーブの加入料金は消費税法上「物品切手等」に該当する
オイルリザーブの加入料金は消費税法上どのように扱うのでしょうか?
オイルリザーブシステムに加入した場合は、会員証等にオイルのリザーブ量が記録され、オイル交換の際はそれを提示することによりリザーブ残量の範囲内でエンジンオイルの給油を受けることができます。
これは、下記の「物品の給付、貸付け又は役務の提供に係る請求権を表彰する証書」に該当することから、消費税法上は「物品切手等」に該当することになります。
(請求権を表彰する証書の意義)
法別表第二第4号ハ《物品切手等の譲渡》及び令第11条《物品切手に類するものの範囲》に規定する「請求権を表彰する証書」とは、証書の所持人に対してその作成者又は給付義務者がこれと引換えに一定の物品の給付若しくは貸付け又は特定の役務の提供をすることを約する証書をいい、記名式であるかどうか、又は当該証書の作成者と給付義務者とが同一であるかどうかを問わない。
(注) 資産の寄託者が倉庫業者あてに作成する出荷依頼書等又はこれらに類する文書は、物品切手等に該当しない。
原則、給油を受けた際に課税仕入れ処理、ただし、継続適用を要件に加入時に全額課税仕入れ処理もOK
消費税は、国内で消費されるモノやサービスに対して課される税金です。サービス(役務の提供)については、サービスが行われた時に「消費」が行われたものとして消費税が課税されることになります。
したがって、オイルリザーブシステムの加入料金は、原則として、加入した時点では課税仕入れにならず、実際に使用したとき(エンジンオイルの給油を受けたとき)に課税仕入れとして計上します。
ただし、消費税法基本通達11-3-7において、次のような記載があります。
(郵便切手類又は物品切手等の引換給付に係る課税仕入れの時期)
11-3-7 法別表第二第4号イ又はハ《郵便切手類等の非課税》に規定する郵便切手類又は物品切手等は、購入時においては課税仕入れには該当せず、役務又は物品の引換給付を受けた時に当該引換給付を受けた事業者の課税仕入れとなるのであるが、郵便切手類又は物品切手等を購入した事業者が、当該購入した郵便切手類又は物品切手等のうち、自ら引換給付を受けるものにつき、継続して当該郵便切手類又は物品切手等の対価を支払った日の属する課税期間の課税仕入れとしている場合には、これを認める。
太字部分で示したとおり、例外処理として、毎期継続適用を要件に、物品切手等についてはその購入時点で課税仕入れとして処理することもできます。
つまり、オイルリザーブシステムの加入料金は、毎期継続適用を要件にオイルリザーブシステムに加入した日にリザーブ量の全額を課税仕入れとして処理することも認められます。
なお、オイル交換に係る工賃やオイルフィルター交換費用については支払いの都度課税仕入れとして処理します。
具体的な仕訳例(原則処理の場合)
オイルリザーブシステムの加入料金について原則処理(エンジンオイルの注意を受けた日に課税仕入れ処理する方法)を採用している場合の具体的な仕訳例について見てみましょう。
オイルリザーブシステム加入時の仕訳
原則処理を採用している場合は、オイルリザーブシステムの加入料金は「貯蔵品」又は「前払金」などの資産勘定で処理しておきます。
エンジンオイル給油時の仕訳
原則処理を採用している場合、給油量に応じて「貯蔵品」又は「前払金」などの資産勘定から「車両費」又は「消耗品費」などの費用勘定に振り替え、当該金額を課税仕入れとして計上します。
(※)貯蔵品の振替額:30,000円×5L/30L=5,000円
加入料金の払い戻しを受けたときの仕訳
オイルリザーブシステムの加入料金の一部の払い戻しを受けた場合は、物品切手等の払い戻しと同様に不課税取引となります。
リザーブ残量と払戻金に差額がある場合は、当該差額は「雑損失」又は「雑収入」などで処理します。
(※)貯蔵品の振替額:30,000円×8L/30L=8,000円
具体的な仕訳例(例外処理の場合)
次は、オイルリザーブシステムの加入料金について例外処理(オイルリザーブシステム加入時に全額課税仕入れ処理する方法)を採用している場合の具体的な仕訳例について見てみましょう。
オイルリザーブシステム加入時の仕訳
例外処理を採用している場合は、オイルリザーブシステムの加入料金は全額加入時に課税仕入れとして計上します。
この場合、加入時に全額を「車両費」又は「消耗品費」などの費用勘定で処理します。
エンジンオイル給油時の仕訳
例外処理を採用している場合、エンジンオイルの給油時は何も処理を行いません。
加入料金の払い戻しを受けたときの仕訳
例外処理を採用している場合にオイルリザーブシステムの加入料金の一部の払い戻しを受けたときは、当該払戻金額は加入時に計上した「車両費」などの費用のマイナス又は「雑収入」などの収益勘定で処理し、税区分は「仕入れに係る対価の返還等」として処理します。
まとめ
オイルリザーブシステムの加入料金は、消費税法上「物品切手等」に該当します。
原則として、給油を受けた時点で給料に応じて課税仕入れを計上しますが、例外処理として、毎期継続適用を要件に加入時に全額を課税仕入れとして処理することもできます。
実務的には例外処理を採用した方が圧倒的に簡便なので、オイルリザーブ加入時に全額を費用処理するのが良いでしょう。