最低支払額に届かない売上高の計上時期に関する経理処理の考え方

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

近年、個人でもネットショップを開設して手作りの製品を販売したり、ブログに広告を貼り付けたり、アフィリエイトサイトを利用して商品を紹介するなどして副収入を得ることが簡単に出来るようになりました。

しかし、売上規模が小さい場合は、せっかく売上があっても締日までに最低支払額に到達せず、翌月以降に繰り越されてしまい収入が得られないということも多いかと思います。

今回は、最低支払額に届かなかった売上高の計上時期に関する経理処理の考え方について解説したいと思います。

 

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売上高が最低支払額に届かない場合とは

個人でも開設できるネットショップやアフィリエイトサイトなどは、多くの場合、報酬額について一定の支払い条件が設けられています。

例えば、国内のアフィリエイトサイトの大手である「A8.net」では、確定報酬額が5,000円に満たない場合は翌月以降に繰り越され、繰越分と月ごとの確定報酬額の合計が5,000円以上になれば振込みが行われます。

数百円、数十円程度の報酬額についてもいちいち全て支払っていたら振込手数料の負担が大変なことになってしまうため、ほとんどのネットショップやアフィリエイトサイトなどでは最低支払額が設定されています。

 

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最低支払額に達しない売上高の計上時期

ネットショップやアフィリエイトサイトなどで最低支払額に達しない場合の売上高の計上時期について考えてみましょう。

(原則)最低支払額に達しなくても売上計上

消費税法における資産の譲渡等の時期は、商品・製品等の棚卸資産の譲渡についてはその「引き渡しの日」、役務の提供についてはその「役務の提供の全部を完了した日」となります。

(棚卸資産の譲渡の時期)
棚卸資産の譲渡を行った日は、その引渡しのあった日とする。

(請負による資産の譲渡等の時期)
請負による資産の譲渡等の時期は、別に定めるものを除き、物の引渡しを要する請負契約にあってはその目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日、物の引渡しを要しない請負契約にあってはその約した役務の全部を完了した日とする。

したがって、ネットショップやアフィリエイトサイトなどを通じて発生した売上げは、最低支払額に達しているか否かに関わらず、原則として毎月売上計上すべきと考えられます。

(例外)最低支払額に達した時点でまとめて売上計上してもOK

しかし、消費税法基本通達9-6-2では、資産の譲渡等の時期に関する別段の定めとして、所得税又は法人税の課税所得金額の計算における総収入金額又は益金の額に算入すべき時期によることができることとされています。

(資産の譲渡等の時期の別段の定め)
9-6-2 資産の譲渡等の時期について、所得税又は法人税の課税所得金額の計算における総収入金額又は益金の額に算入すべき時期に関し、別に定めがある場合には、それによることができるものとする。

所得税法又は法人税法において、ある収益をどの事業年度に計上すべきかは、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従うべきであり、これによれば、収益は、その実現があった時、すなわち、その収入すべき権利が確定したときの属する年度の総収入金額・益金に計上すべきものと解されます(最高裁平成5年11月25日第一小法廷判決・民集47巻9号5278頁参照)(国税不服審判所平成30年11月14日裁決)。

上記通達により、消費税法上も、同様に、その収入すべき権利が確定したときの属する課税期間に課税資産の譲渡等があったものとすることができます。

これをネットショップやアフィリエイトサイトなどの売上高に当てはめて考えてみると、売上高が最低支払額に達しなかった月は収入すべき権利が確定しておらず、そのままでは支払いを受けることができるかどうか分かりません(もしその後売上げがずっとなかったら永遠に支払い受けることができない可能性もあります。)

報酬額が翌月以降に繰り越され、最低支払額に達した時点で初めて収入すべき権利が確定することになります。

したがって、最低支払額に達した時点で売上高を計上する処理も認められると考えられます。

 

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具体的な仕訳例(原則処理)

ネットショップやアフィリエイトサイトなどの収益計上時期について原則処理(最低支払額に達しなくても毎月計上)を採用している場合の具体的な仕訳例について見てみましょう。

数値例
個人事業者Aは、自ら運営するウェブサイトに国内のアフィリエイトサイトのリンクを貼り、商品等の紹介料報酬を得ている。
なお、当該アフィリエイトサイトの最低支払額は5,000円であり、確定報酬額が5,000円に満たない場合は翌月以降に繰り越され、繰越分と月ごとの確定報酬額の合計が5,000円以上になればAの普通預金口座に振込まれることとされている。
報酬額の計算の締日は毎月末日、報酬の振込日は翌月15日である。
Aの8月と9月のアフィリエイト報酬は以下のとおりであった。7月分以前の報酬額の繰越額はない。
8月分:4,000円
9月分:3,000円
なお、Aはアフィリエイト報酬を毎月売上計上している。

収益計上時期について原則的な処理方法によっている場合は、最低支払額に達しているか否かに関わらず、毎月分の売上げをその都度計上します。

ネットショップやアフィリエイトサイトなどの収益計上時期(原則処理)

 

具体的な仕訳例(例外処理)

ネットショップやアフィリエイトサイトなどの収益計上時期について原則処理(最低支払額に達した時点で計上)を採用している場合の具体的な仕訳例について見てみましょう。

数値例
個人事業者Aは、自ら運営するウェブサイトに国内のアフィリエイトサイトのリンクを貼り、商品等の紹介料報酬を得ている。
なお、当該アフィリエイトサイトの最低支払額は5,000円であり、確定報酬額が5,000円に満たない場合は翌月以降に繰り越され、繰越分と月ごとの確定報酬額の合計が5,000円以上になればAの普通預金口座に振込まれることとされている。
報酬額の計算の締日は毎月末日、報酬の振込日は翌月15日である。
Aの8月と9月のアフィリエイト報酬は以下のとおりであった。7月分以前の報酬額の繰越額はない。
8月分:4,000円
9月分:3,000円
なお、Aはアフィリエイト報酬を最低支払額に達した時点で売上計上している。

収益計上時期について例外的な処理方法によっている場合は、最低支払額に達していない8月分は売上計上せず、繰越額と合わせて最低支払額に達することとなる9月にまとめて売上計上します。

ネットショップやアフィリエイトサイトなどの収益計上時期(例外処理)

 

まとめ

ネットショップやアフィリエイトサイトなどの売上高については、原則として、最低支払額に達するか否かにかかわらず毎月売上を計上します。

ただし、例外的な処理により、最低支払額に達した時点でその収入すべき権利が確定するものと考え、最低支払額に達する月にまとめて売上計上をしても構いません。

 

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