消費税法上、仕入税額控除の適用要件として、帳簿及び請求書等の保存が義務付けられています。
一定額以上の領収書には収入印紙を貼り付ける必要がありますが、うっかり収入印紙を貼るのを忘れてしまった場合は、その領収書に係る金額について仕入税額控除は認められるのでしょうか。
今回は、収入印紙を貼り忘れた領収書に係る金額の仕入税額控除は認められるのかについて解説したいと思います。
収入印紙の貼付が必要な文書とは
印紙税は、不動産の売買や金銭の消費貸借などの法的に重要な文書を作成する場合に、印紙税法の規定により課税対象であると定められた書類については収入印紙を貼り付けることにより印紙税を納付することが義務付けられています。
収入印紙を貼付する必要のある書類は、印紙税法別表第一「課税物件表」に掲げられている課税文書に限られています。
主な課税文書としては、以下のようなものがあります。
・土地の賃借権設定に関する契約書
・消費貸借に関する契約書
・請負に関する契約書
・約束手形または為替手形
・営業に関する受取書(領収書)
消費税の仕入税額控除の要件である請求書等のひとつである「領収書」についても、収入印紙を貼付する必要のある課税文書として定められています。
なお、「営業」とは、一般に、営利を目的として同種の行為を反復継続して行うことをいい、弁護士や税理士などの士業の報酬のほか、店舗のない農林水産業を行う者による生産物の販売などが「営業」の範囲から除かれ、領収書の印紙税は非課税とされます。
(この点について詳しくは、国税庁のタックスアンサーNo.7125『営業に関しない受取書』を参照してください。)
領収書に貼る印紙の金額は、次の表のとおりです。
領収書の受取金額 | 収入印紙の金額 |
5万円未満 | 非課税 |
5万円以上~100万円以下 | 200円 |
100万円超~200万円以下 | 400円 |
200万円超~300万円以下 | 600円 |
300万円超~500万円以下 | 1,000円 |
500万円超~1千万円以下 | 2,000円 |
受取金額が1千万円を超える場合については、国税庁のタックスアンサーNo.7141『印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで』を参照してください。
なお、領収書の受け取り金額は、消費税及び地方消費税が区分記載されている場合は、税抜価格で判断します。(区分記載されていない場合は税込金額により判断します。)
収入印紙を貼り忘れた領収書も有効
受取金額が5万円以上の領収書については、収入印紙を貼付する必要があります。
もし収入印紙の貼付が必要なのにうっかり忘れてしまった場合は、その領収書の効力は無効とされてしまうのではないかと思う方もいるかもしれませんが、そのようなことはありません。
金銭のやり取りがあったことなど、領収書として必要な情報が記載されている以上、印紙の貼付けの有無に関わらず領収書は法的に有効なものとして取り扱われます。
ただし、収入印紙を貼らなかった場合は過怠税が課せされ、本来納付すべき印紙税相当額の3倍の金額を納めなければならないこととなります。なお、税務調査を受ける前に自主的に申告した場合には1.1倍に軽減される救済措置も設けられています。
印紙の貼付がなくても仕入税額控除は認められる
消費税法上、仕入税額控除を行うためには帳簿及び請求書等の保存が要件とされています。
保存が必要な「請求書等」とは、次の事項が記載されたものをいいます。(消費税法第30条第9項)
上記の通り、仕入税額控除を受けるために保存が必要な「請求書等」の要件として「収入印紙の貼付」は規定されていません。
したがって、本来必要な収入印紙が貼付されていない領収書であっても、上記①~⑤の事項が記載されたものであれば、その領収書にかかる金額について、消費税法上、仕入税額控除を行うことが認められます。
(参考)請求書には印紙を貼り付ける必要はない
「領収書」については、記載された金額が一定額以上の場合は収入印紙の貼付が必要となりますが、「請求書」については収入印紙を貼り付ける必要はありません。
ただし、「請求書兼領収書」の場合は、「領収書」と同様に収入印紙の貼付が必要となるため注意しましょう。
まとめ
印紙税法の規定により、一定額以上の受取金額の領収書については収入印紙の貼付が必要とされています。
もし本来なら必要な収入印紙が貼付されていない領収書を受け取った場合であっても、消費税法上必要な事項が記載されたものであれば、その領収書の金額について仕入税額控除を行うことが認められます。