化粧品ショップやブティック、アパレルショップなどは、デパートに店舗を出店し、テナントとして消費者に商品を販売しているところも多いかと思います。
今回は、消費税の簡易課税制度を採用している場合のデパートのテナントの売上に係る事業区分の考え方について解説したいと思います。
簡易課税の事業区分
簡易課税制度の適用を受けている場合、概算により控除対象仕入税額を計算するときに、以下の事業区分ごとにそれぞれのみなし仕入率を乗じます。
事業区分 | 主な業種 | みなし仕入率 |
第一種事業 | 卸売業 | 90% |
第二種事業 | 小売業 | 80% |
第三種事業 | 製造業 | 70% |
第四種事業 | その他の事業 | 60% |
第五種事業 | サービス業 | 50% |
第六種事業 | 不動産業 | 40% |
デパートのテナントが、自社で製造した製品を販売している場合は「第三種事業」となるので、あまり迷うところはありません。
しかし、他社から仕入れた商品を販売している場合は、デパートとの契約方法の違いにより、「第一種事業」となるか「第二種事業」となるか変わってくるため注意が必要です。
デパートとの契約方式ごとの事業区分の違い
【照会要旨】
デパートに店舗を出店している場合、支払手数料としてデパートに対してその売上高の一定割合を支払っています。
このような場合、この店舗の売上高から支払手数料として支払った金額を控除した金額をデパートに対する売上げとして計上していますが、この店舗における売上げは、簡易課税の事業区分の判定においてデパートに対する卸売として取り扱ってよいでしょうか。【回答要旨】
デパートのテナントの売上げが、消費者に対する小売に該当するか、又はデパートに対する卸売に該当するかは、デパートとの契約内容によって次のように判定することになります。
(1) 手数料契約の場合
テナントが消費者に販売し、デパートとの契約がテナントの売上高の一定率をテナント料(手数料)として支払うことを内容とするにすぎない場合には、テナントが行う販売は小売に該当します。
(2) 商品販売契約の場合
テナントの売上げをデパートの売上げとして認識し、テナントで売り上げたものについてデパートはテナントからの仕入れを計上する、いわゆる消化仕入れの方式によっている場合等、テナントとデパートとの商品販売を内容とする契約の場合には、テナントがデパートに対して行う販売は卸売に該当します。
まとめると、デパートとテナントの間の契約方式には「手数料契約」と「商品販売契約」の2種類があり、それぞれの場合の簡易課税の事業区分は次のようになります。
質疑応答事例の回答だけだと少しわかりにくいため、以下、詳しく説明します。
手数料契約の場合の考え方
手数料契約の場合は、特に難しいことは考えず普通の取引と同様、テナントが消費者に対して商品を販売したものとして「第二種事業」に該当します。
テナントは、販売代金に応じて一定の料率で計算したテナント料(手数料)をデパートに支払います。
商品販売契約の場合の考え方
商品販売契約の場合は、少しトリッキーな考え方をします。
テナントがお客さん(消費者)に商品を販売した場合、実際のお金や商品のやり取りとしては、テナントと消費者の間で販売代金と商品が交換されますが、課税関係を考える上ではデパートが「消化仕入れ」という方式で商品を仕入れて消費者に販売したものと考えます。
「消化仕入れ」とは、消費者が商品を購入した時点で、いったんデパートに対してその商品を販売したものと考え、また、即座にデパートが消費者に対してその商品を販売したものと考える方式のことです。
デパートにとっては、テナントから商品を仕入れて即座に消費者に販売するため、商品が一瞬で「消化」されることになるため「消化仕入れ」と呼ばれます。
この場合、テナントにとっては、商品を消費者に対してではなくデパート(事業者)に販売したことになるため、簡易課税の事業区分は「第一種事業」となります。
まとめ
デパートとテナントの間の契約方式には「手数料契約」と「商品販売契約」の2種類があり、それぞれの場合の簡易課税の事業区分は次のようになります。
関連するアプリの問題
消費税法 プラスの一問一答
問題番号 | タイトル |
2009 | 百貨店のテナントの売上(手数料契約の場合) |
2010 | 百貨店のテナントの売上(消化仕入れの場合) |