居住用賃貸建物に該当する住宅を「売った側」は課税売上げになる?
この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

令和2年度税制改正により居住用賃貸建物に係る仕入税額控除は制限されることになりました。

では、居住用賃貸建物を「売った場合」はどうなるのでしょうか?

今回は、居住用賃貸建物に該当する住宅を「売った側」は課税売上げになるのかについて解説します。

 

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居住用賃貸建物に係る仕入税額控除の適用制限とは

令和2年度税制改正により、消費税法第30条第10条において次のような規定が創設され、令和2年10月1日以後に行う居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等については、仕入税額控除が認めないこととされました。

10 第一項の規定は、事業者が国内において行う別表第二第十三号に掲げる住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物(その附属設備を含む。以下この項において同じ。)以外の建物(第十二条の四第一項に規定する高額特定資産又は同条第二項に規定する調整対象自己建設高額資産に該当するものに限る。第三十五条の二において「居住用賃貸建物」という。)に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。

居住用賃貸建物とは、非課税となる住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物で、高額特定資産又は調整対象自己建設高額資産に該当するものをいい、その付属設備を含みます。

大雑把に言うと、税抜1,000万円以上の住宅は居住用賃貸建物に該当します。

居住用賃貸建物に係る仕入税額控除の適用制限について詳しくは、次の記事をご覧ください。

 

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非課税とされるのは「住宅の貸付け」のみ

居住用賃貸建物を「購入した側」は、仕入税額控除が認められていません。

では、「売った側」にもこれに見合うような規定はあるのでしょうか?

消費税法第6条の規定により非課税とされる取引を具体的に列挙している「消費税法別表第二」では、住宅に関する非課税取引については、次のように記載されています。

十三 住宅(人の居住の用に供する家屋又は家屋のうち人の居住の用に供する部分をいう。)の貸付け(当該貸付けに係る契約において人の居住の用に供することが明らかにされている場合(当該契約において当該貸付けに係る用途が明らかにされていない場合に当該貸付け等の状況からみて人の居住の用に供されていることが明らかな場合を含む。)に限るものとし、一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)

上記のとおり、住宅に関する取引で非課税取引とされるのは「住宅の貸付け」のみです。

「住宅の譲渡」については非課税取引とされていません。

したがって、住宅を「売った場合」は、それが居住用賃貸建物であるかどうかにかかわらず、すべて課税取引となります。

 

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居住用賃貸建物の売買に関しては売主側と買主側で表裏一体の関係となっていない

通常、資産の譲渡等が行われた場合は、消費税の取扱いは売主側と買主側で表裏一体の関係となります。

売主側で課税売上げとなる場合は、買主側においても課税仕入れとなり、売主側が納めることとなる消費税額分だけ、買主側では仕入税額控除ができます。(仕入税額控除について全額控除方式を前提とした場合)

一方、売主側で非課税売上げとなる場合は、買主側においても非課税仕入れとなり、売主側が消費税を納めなくてもよい代わりに、買主側においても仕入税額控除ができないことになります。免税取引や不課税取引の場合も同様です。

しかし、居住用賃貸建物の売買に関しては売主側と買主側で表裏一体の関係とならないのです。

居住用賃貸建物の売主側は課税売上げとなり消費税を納めなければなりませんが、他方で、買主側は仕入税額控除の制限を受けることとなります。

このような税負担の累積を生じさせる歪な関係になってしまっても、それでも居住用賃貸建物について仕入税額控除が制限されるようになったのは、住宅の取得費用に係る仕入税額控除を巡り様々な租税回避スキームが横行してきたからです。

何とかして税負担を免れようとする納税者側とそれを規制する課税庁側のいたちごっこの賜物としてこのような歪な規定ができてしまいました。

消費税の仕組み(多段階累積控除)から考えると違和感のあるところですが、仕方ないものとして甘んじて受け入れるしかありません。

 

まとめ

居住用賃貸建物を「買った側」は、仕入税額控除が認められません。

一方、居住用賃貸建物を「売った側」については、それに見合うような規定はありません。

「住宅の貸付け」は非課税取引とされますが、「住宅の譲渡」については非課税取引とされていないため、居住用賃貸建物に該当する住宅の売却額は課税売上げとなります。

 

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