ローンや借入金を返済期限より前に全額返済した場合に、「繰上返済手数料」「繰上返済解約金」「早期完済割増料」などの名目で一定の金銭を徴収されることがあります。
今回は、ローン繰上返済に伴う「繰上返済手数料」「繰上返済解約金」「早期完済割増料」などに消費税がかかるのか解説したいと思います。
ローンの繰上返済に伴う手数料等とは
銀行などの金融機関から借り入れたローンや借入金を返済期限より前に全額返済した場合、繰上返済した額に一定率を乗じて計算した手数料等が徴収されることがあります。
この手数料等は、「繰上返済手数料」「繰上返済解約金」「早期完済割増料」など様々な名目で徴収されます。
消費税の課税の対象の4要件
消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。
ローンの繰上返済に伴う手数料等は、上記の課税の対象の4要件を満たすのでしょうか?
ローンの繰上返済に伴う手数料等は逸失利益の補填にすぎないため不課税取引
ローンや借入金を返済期限より前に全額返済した場合に徴収される、繰上返済した額に一定率を乗じて計算した手数料等は、逸失利益(もし繰上返済をしなかったら、金融機関が本来得られた利息額)を補填するために支払われる損害賠償金としての性質を持っています。
そのため、「繰上返済手数料」「繰上返済解約金」「早期完済割増料」など、どのような名目を持って徴収されるかにかかわらず、繰上返済した額に一定率を乗じて計算した手数料等は、課税の対象の4要件のうち「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たさないため消費税の課税対象外(不課税取引)となります。
なお、繰上返済した際に徴収される手数料であっても、繰上返済した額に一定率を乗じて計算するのではなく、繰上弁済をしたことにより徴収する金銭が一件当たり幾ら(定額)となっているものは、単なる解約に係る事務手数料として対価性のあるものなので、課税仕入れとなります。
(参考)質疑応答事例『早期完済割引料』
国税庁の質疑応答事例で、割賦販売に係る対価を期限より前に繰上返済した場合の早期完済割引料に関して、次のような回答がされています。
通常のローンの繰上返済に伴う手数料等についても同様に考えます。
【照会要旨】
当社では、延払販売に係る対価について、消費税法施行令第10条第3項第10号《割賦販売等に準ずる方法により資産の譲渡等を行う場合の金利又は保証料相当額》の規定の適用を受ける場合には、本体価格と利子とを区分して得意先に明示し、得意先が繰上弁済するときには、残賦払金額の1%~3%を早期完済割引料として別途金銭を収受することとしています。
この早期完済割引料は課税の対象となるのでしょうか。【回答要旨】
本体価格と利子とを得意先に区分明示して行った延払販売について、得意先が繰上弁済をしたことにより徴収する早期完済割引料は、逸失利益を補てんするために受け取る損害賠償金としての性格を有しますので、課税の対象となりません。
なお、得意先が繰上弁済をしたことにより徴収する金銭が一件当たり幾ら(定額)となっているものは、解約手数料を対価とする役務の提供に該当し、課税の対象となります。
(参考)銀行でも誤徴収が多発しているので注意
繰上返済に伴う手数料は、なんと銀行でも処理を間違えて、本来なら消費税の課税対象外(不課税)なのに消費税を誤って徴収してしまっているケースが多いそうです。
具体的に銀行名を書くのは避けますが、「繰上返済手数料 誤徴収」などの検索ワードでネットで検索してみると、いくつかの銀行が繰上返済手数料の消費税を誤って徴収していたという謝罪文がヒットします。
もしかしたら、契約書や請求書などを見ると、繰上返済手数料について本来は不課税なのに課税対象として扱われ税込金額で請求されている可能性もあるため注意しましょう。
請求書で課税対象として税込金額になっているから課税仕入れになると判断するのではなく、その繰上返済手数料の計算が繰上返済した額に一定率を乗じて計算されるものであるかどうか、銀行側に確認するなどして確かめるようにしましょう。
まとめ
ローンや借入金を返済期限より前に全額返済した場合に徴収される手数料等(繰上返済した額に一定率を乗じて計算したもの)は、逸失利益(もし繰上返済をしなかったら、金融機関が本来得られた利息額)を補填するために支払われる損害賠償金としての性質を持っているため不課税取引となります。
「繰上返済手数料」「繰上返済解約金」「早期完済割増料」など、どのような名目であっても、上記に該当する場合は不課税となります。
ただし、繰上返済した額に一定率を乗じて計算するのではなく、繰上弁済をしたことにより徴収する金銭が一件当たり幾ら(定額)となっている解約事務手数料は課税仕入れとなります。
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