令和5年10月1日から、消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)がスタートしました。
今回は、パーキング・メーターの作動手数料を支払った場合の消費税の取扱い及びインボイスが発行されるのかどうかについて解説します。
パーキング・メーター、パーキング・チケットとは
一定の時間を限って同一車両が引き続き駐車できる道路の区間であることが道路標識等により指定されている道路の区間のことを「時間制限駐車区間」といいます。
これは、短時間駐車の需要に対応するため、道路状況、交通への影響や支障などを勘案して、駐車枠で指定した場所・方法に限り短時間駐車を認めるというものです。
例えば、次のような標識が設置されている場所は、9時から19時までの時間帯であれば、道路上に60分以内の短時間駐車をすることができます。
時間制限駐車区間内には、次の画像のようなパーキング・メーターが設置されています。
新型 |
従来型 |
パーキング・メーターは、車両を感知し引き続き駐車している時間を自動的に測定します。
利用料金は、場所によって異なりますが、一般的に利用時間は60分で利用料(「作動手数料」といいます)は300円であることが多いです。
また、パーキング・メーターでなく、パーキング・チケット発給設備が設置されているところもあります。パーキング・チケット発給設備は、お金を入れると、発給を受けた日時や駐車を終了すべき時刻等が自動的に印字されたパーキング・チケットが発給されます。駐車する際は、パーキング・チケットをフロントガラスの内側の見やすい位置に貼り付ける必要があります。
発給設備 |
チケット |
では、パーキング・メーターの作動手数料やパーキング・チケットの発給手数料は消費税の課税対象となるのでしょうか?
作動手数料、発給手数料は非課税とさる行政手数料に該当する
国や地方公共団体等が法令に基づいて行う一定の事務に係るサービスの手数料は、消費税が非課税とされています。
国や地方公共団体等が行うサービスのうち、その手数料が非課税とされる一定の事務については、以下の通り限定列挙されています。(長いので軽く読み流してください。)
(非課税となる行政手数料等の範囲等)
6-5-1 国、地方公共団体、法別表第三に掲げる法人その他法令に基づき国若しくは地方公共団体の委託又は指定を受けた者が徴収する手数料等で法別表第二第5号イ及びロ《国、地方公共団体等が行う役務の提供》の規定により非課税となるのは、次のものであるから留意する。(平14課消1-12、平17課消1-22、平28課消1-57、平30課消2-5により改正)(1) 法令(法律、政令、省令又は大臣告示のほか条例及び規則を含み、業務方法書又は定款等は含まない。以下6-5-2までにおいて同じ。)に基づいて行われる次に掲げる事務の手数料、特許料、申立料その他の料金(以下6-5-1において「手数料等」という。)で、その徴収について法令に根拠となる規定があるもの
イ 登記、登録、特許、免許、許可、認可、承認、認定、確認及び指定
ロ 検査、検定、試験、審査及び講習(令第12条第1項第1号イからニまで《非課税となる国、地方公共団体等の役務の提供》に掲げる事務のいずれにも該当しないものを除く。)
ハ 証明(令第12条第1項第2号《非課税となる国、地方公共団体等の役務の提供》に掲げるものを除く。)
ニ 公文書の交付(再交付及び書換交付を含む。)、更新、訂正、閲覧及び謄写(令第12条第1項第2号に掲げるものを除く。)
ホ 裁判その他の紛争の処理
ヘ 旅券の発給(旅券法第20条第1項《手数料》に掲げる渡航先の追加、記載事項の訂正、再発給、旅券の合冊又は査証欄の増補及び渡航書の発給を含む。)
ト 裁定、裁決、判定及び決定
チ 公文書に類するもの(記章、標識その他これらに類するものを含む。以下同じ。)の交付(再交付及び書換交付を含む。)、更新、訂正、閲覧及び謄写(令第12条第1項第1号に掲げる事務に係るものを除く。)
リ 審査請求その他これに類するものの処理(2) 法令に基づいて行われる登録、認定、確認、指定、検査、検定、試験、審査及び講習(以下6-5-1において「登録等」という。)で法令に手数料等の徴収の根拠となる規定がないもののうち、次に掲げる登録等の手数料等
イ 法令において、弁護士その他の法令に基づく資格を取得し、若しくは維持し、又は当該資格に係る業務若しくは行為を行うための要件とされている登録等
(注) 1 「資格」とは、法令において、その資格を有しない者はその資格に係る業務若しくは行為を行うこと若しくはその資格に係る名称を使用することができないこととされていること又は一定の場合にはその資格を有する者を使用すること若しくはその資格を有する者にその資格に係る行為を依頼することが義務付けられている場合のその資格をいう。
2 「要件とされている」とは、登録等に係る役務の提供を受けない場合には、その資格が取得できない若しくは維持できない又はその資格に係る業務若しくは行為を行うことができない場合をいう。
ロ 法令において、輸出その他の行為を行う場合にはその対象となる資産又は使用する資産について登録等を受けることが要件とされている登録等
ハ 法令において、登録等により一定の規格に該当するものとされた資産でなければ一定の規格についての表示を付し、又は一定の名称を使用することができないこととされている登録等
ニ 法令において、登録等を受けることが義務付けられている登録等
ホ 証明、公文書及び公文書に類するものの交付(再交付及び書換交付を含む。)、更新、訂正、閲覧及び謄写(イからニまでに該当しない登録等に係るものを除く。)(3) 国又は地方公共団体が、法令に基づき行う他の者の徴収すべき料金、賦課金その他これらに類するものの滞納処分について、法令に基づき他の者から徴収する手数料等
(4) 独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下6-5-1において「独法等情報公開法」という。)第2条第1項《定義》に規定する独立行政法人等又は独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(以下6-5-1において「独法等個人情報保護法」という。)第2条第1項《定義》に規定する独立行政法人等のうち法別表第三に掲げる法人以外の法人が独法等情報公開法第17条第1項《手数料》又は独法等個人情報保護法第26条第1項《手数料》若しくは第44条の13第1項《手数料》に基づき徴収する手数料
(注) 法別表第三に掲げる法人が独法等情報公開法第17条第1項《手数料》又は独法等個人情報保護法第26条第1項《手数料》若しくは第44条の13第1項《手数料》に基づき徴収する手数料は(1)ニ又はチに該当する。
パーキング・メーターの作動手数料については、各自治体の条例で定められています。
例えば、大阪府警察事務手数料条例第8条では、次のように規定しています。
第八条 法に基づく事務に関し、前条に規定するものを除くほか、次の表の中欄に掲げる者は、それぞれ同表の下欄に定める金額の手数料を納付しなければならない。
項 区分 金額 一 法第四十九条の三第四項の規定によりパーキング・メーターを作動させ、又はパーキング・チケットの発給を受けようとする者 円
三〇〇
このように、パーキング・メーターの作動手数料やパーキング・チケットの発給手数料は、徴収されることが条例により規定されているため、消費税法第6条の規定により非課税とされる一定の事務手数料(警察手数料)に該当することになります。
警察のホームページの説明
百聞は一見にしかずなので、実際に時間制限駐車区間の取し締まりを行っている大阪府警察のホームページを見てみましょう。
パーキング・チケットに関すること
インボイスに関すること
パーキング・チケットの料金は、大阪府警察事務手数料条例に定める手数料であり、非課税手数料となります。
そのため、適格請求書は発行しておらず、大阪府公安委員会が利用証明書以外を発行する予定はありません。
警視庁のホームページでも、次のような記載があります。
インボイス制度への対応
パーキング・メーターの作動手数料、パーキング・チケット発給機の発給手数料は、警察手数料に該当し、消費税法第6条で消費税は非課税とされています。
このように、警察のホームページでも、パーキング・チケットの発給手数料やパーキング・メーターの作動手数料は非課税であると明記されています。
まとめ
パーキング・チケットの発給手数料やパーキング・メーターの作動手数料は、条例により徴収することが定められている「警察手数料」に該当するため、消費税が非課税とされる一定の行政手数料に該当します。
また、消費税が非課税とされるため、インボイスは発行されません。
(参考)パーキング・メーターの利用料は「民間業者と競合し得るものは課税」とする考え方に当てはまらない
国や地方公共団体等に対して支払う行政手数料等が非課税となるかどうかは、「民間業者と競合し得るものは課税、そうでないものは非課税」という考え方に照らすと、概ね判別することができます。
しかし、本記事で取り上げたパーキング・チケットの発給手数料やパーキング・メーターの作動手数料については、この考え方に当てはまらない例外であるといえます。
この点については、詳しくは次の記事をご覧ください。