明けましておめでとうございます。2019年、平成最後のお正月がやってまいりました。
お正月といえば神社に初詣でに行かれる方も多いと思いますが、神社で購入するお守りやおみくじに消費税はかかるのか、疑問に思ったことはないでしょうか?
今回は、神社で購入するお守りやおみくじの消費税の取扱いについて解説したいと思います。
課税の対象の4要件
消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。
神社でお守りやおみくじを購入した場合に消費税の課税対象となるかどうかは、「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たすかどうかがポイントとなります。
宗教活動に伴う支出の消費税の取扱い
神社やお寺などに対する宗教活動に伴う支出は、通常の事業者に対する支出とは性質が異なります。
宗教活動に伴う支出については、国税庁の質疑応答事例『お布施、戒名料、玉串料等』において次のように記載されています。
【照会要旨】
寺の住職がもらう「お布施」も課税の対象となるのでしょうか。【回答要旨】
お布施、戒名料、玉串料等の葬儀、法要等に伴う収入は、宗教活動に伴う実質的な喜捨金と認識されているものですから、課税の対象とはなりません。
宗教活動に伴う支出は、実質的に「喜捨金」に該当します。
「喜捨金」とは、喜んで捨てるお金という狂気じみたパワーワードにみえますが、「喜捨」という言葉には次のような意味があります。
き‐しゃ【喜捨】
[名](スル)進んで寺社、僧や貧者に金品を寄付すること。「托鉢僧に喜捨する」
したがって、「喜捨金」は何ら見返りを期待せずに金品を支出するものとして一種の寄付金として扱われるため、「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たさず、消費税の課税の対象となりません。
お賽銭などの金銭の寄付をした場合
神社にお賽銭を投げ入れたり、金銭で寄付を行った場合は、反対給付のない支出であるため、「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たさず、消費税の課税の対象となりません。
なお、金銭ではなく、お神酒やのぼり旗などの物品を寄付した場合は、当該お神酒やのぼり旗の購入費用は課税の対象となります。
お守りやおみくじを購入した場合
ここで本題です。お守りやおみくじを購入した場合はどうなるのでしょうか?
お守りやおみくじの購入費用は、反対給付のない支出ではありません。
お守りを購入したら、実際に「学業成就」や「交通安全」などの記載があるご利益のありそうな袋がもらえます。また、おみくじを購入したら、今年1年の運勢が記載された紙がもらえます。
したがって、お守りやおみくじの購入は「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たしているんじゃないの?と思うかもしれません。
ここで、お守りやおみくじの購入費用が喜捨金に該当するかどうかについて、国税庁の法人税法基本通達15-1-10において次のような記載があります。なお、これは法人税に関する通達ですが、消費税においても基本的に他の税法と同様の考え方を当てはめるため、次の通達に基づいて課否判定を行います。
(宗教法人、学校法人等の物品販売)
宗教法人におけるお守り、お札、おみくじ等の販売のように、その売価と仕入原価との関係からみてその差額が通常の物品販売業における売買利潤ではなく実質は喜捨金と認められる場合のその販売は、物品販売業に該当しないものとする。・・・(後略)
お守りやおみくじの仕入原価はいくらくらいかご存知でしょうか?
実は、お守りの仕入原価は1袋あたり100円前後、おみくじの仕入原価は1枚当たり2円程度です。
お守りの販売価格は1袋500円~1,000円くらい、おみくじは1回100円~200円くらいであることを考えると、原価率はかなり低いですね。
通常の物品販売業であればここまで原価率が低くなることはあり得ないため、お守りやおみくじの購入費用の大半は通常の売買利潤を上回る「喜捨金」で占められていることになります。
したがって、一般的にお守りやおみくじの購入費用は実質的に喜捨金であると考えられるため、「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たさず、消費税の課税の対象となりません。
お線香やろうそくなどを購入した場合
上述のとおり、お守りやおみくじについては、仕入原価と販売価格の関係から、実質的に喜捨金と解されるため消費税の課税の対象とはなりません。
では、神社がお線香やろうそくなどを一般の物品販売業者と同様の原価率で販売している場合の消費税の取扱いについてはどうなるでしょうか?
この点についても、消費税の通達はありませんが、先ほどと同様、法人税法基本通達15-1-10のただし書きの部分において次のような記載があります。
(宗教法人、学校法人等の物品販売)
・・・(前略)・・・
ただし、宗教法人以外の者が、一般の物品販売業として販売できる性質を有するもの(例えば、絵葉書、写真帳、暦、線香、ろうそく、供花等)をこれらの一般の物品販売業者とおおむね同様の価格で参詣人等に販売している場合のその販売は、物品販売業に該当する。
したがって、消費税においても法人税と同様に考えると、お線香やろうそくなどを一般の物品販売業者と同様の価格で参詣人等に販売している場合は、その販売価格は「喜捨金」ではなく、通常の資産の譲渡等の対価として収受するものであると考えられるため、「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たし、消費税の課税の対象になると解されます。
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