法人税が非課税とされる非収益事業に係る売上げに消費税はかかるのか
paulmuenzner0 / Pixabay

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

新年明けましておめでとうございます。

今年のお正月は天気が良く、お正月休みにお寺や神社に初詣でに行かれた方も多いかと思います。

その際に、お寺や神社が所有する国宝を宝物館等において有料で拝観したことはないでしょうか?

実は、宗教法人であるお寺や神社が参拝客に対し国宝を宝物館等において有料で観覧させる行為は、法人税法上は非収益事業に該当するため、法人税は非課税となります。

この場合、非収益事業に係る売上げに消費税はかかるのでしょうか?

今回は、非収益事業の売上げに係る消費税の取扱いについてご説明したいと思います。

 

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非収益事業とは

法人税は、株式会社や合名会社などの法人が事業活動から得た所得に対して公平に課税されるべきものです。

しかし、法人が行う事業活動の中には、自社の利益を最大化するための営利目的の活動だけではなく、公の利益となるような活動もあります。

例えば、宗教法人が風習として日本人の生活に根ざしている祭典や儀礼を行う活動や、社会福祉法人が地域における社会福祉の増進に寄与するために行う活動は、公の利益となるような活動であるといえます。

このような活動から得られた所得に対して税金を課すと、公の利益につながる活動を妨げることになります。

したがって、宗教法人などの一定の法人(法人税法上「公益法人等」といいます。)が行う公の利益につながる活動は「非収益活動」として、法人税は非課税とされています。

なお、法人税法第2条第13項において「収益事業」の意義は次のように規定されています。

収益事業 販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいう。

「政令で定める事業」にについては法人税法施行令第5条において34事業が規定されており、これらを「特掲事業」といいます。

上記の意義を満たさないものが「非収益事業」として法人税が非課税とされることになります。

 

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消費税法上非課税とされる取引

消費税においても、税を課すことが適当でない取引については非課税とされています。

ただし、消費税においては、「消費税という税の性格になじまないもの」「社会政策的な配慮から課税することが適当でないもの」に対して消費税を課さないこととしているため、消費税における非課税規定の制度趣旨は、法人税の非課税規定の制度趣旨とは内容が異なります。

消費税法の規定では、国内で行われるモノやサービスの提供のうち、消費税法別表第二に限定列挙されている次の取引には消費税を課さないこととされています。

消費税の非課税取引
(1) 土地の譲渡及び貸付け
(2) 有価証券等の譲渡
(3) 支払手段の譲渡
(4) 預貯金の利子及び保険料を対価とする役務の提供等
(5) 日本郵便株式会社などが行う郵便切手類の譲渡、印紙の売渡し場所における印紙の譲渡及び地方公共団体などが行う証紙の譲渡
(6) 商品券、プリペイドカードなどの物品切手等の譲渡
(7) 国等が行う一定の事務に係る役務の提供
(8) 外国為替業務に係る役務の提供
(9) 社会保険医療の給付等
(10) 介護保険サービスの提供
(11) 社会福祉事業等によるサービスの提供
(12) 助産
(13) 火葬料や埋葬料を対価とする役務の提供
(14) 一定の身体障害者用物品の譲渡や貸付け
(15) 学校教育
(16) 教科用図書の譲渡
(17) 住宅の貸付け

上記枠囲みの青色で示した部分が「消費税という税の性格になじまないもの」赤色で示した部分が「社会政策的な配慮から課税することが適当でないもの」になります。

「消費税という税の性格になじまないもの」については、そもそも「消費」という行為が伴わない取引であるため、消費税が非課税とされています。

また、「社会政策的な配慮から課税することが適当でないもの」については、人の生老病死や教育に関わるものについて非課税とすることとしていますが、消費税においては、法人税のように公の利益につながる活動に対して非課税とするというような規定は存在しません。

 

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非収益事業に係る売上げに消費税はかかるのか

上述のとおり、消費税が非課税とされるのは消費税法別表第二に限定列挙されている取引だけです。

したがって、法人税法上非収益事業に該当する取引であっても、消費税においては消費税法別表第二に限定列挙された取引に該当しないのであれば非課税取引には該当しません。

冒頭の例のように、宗教法人であるお寺や神社が参拝客に対し国宝を宝物館等において有料で観覧させる行為は、法人税法上は非収益事業に該当しますが、消費税においては非課税取引には該当せず、拝観料を対価とする役務の提供として課税の対象に含まれることになります。

なお、社会福祉法人が地域における社会福祉の増進に寄与するために行う活動は法人税法上非収益事業に該当し、かつ、消費税においても「社会福祉事業等によるサービスの提供」に該当することとなり、法人税も消費税も非課税になります。

法人税が非課税となるかどうかと消費税が非課税となるかどうかの判断基準はそれぞれ異なるため、一緒くたにせずに分けて考えるようにしましょう。

 

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消費税法 無敵の一問一答

問題番号 タイトル
226 宗教法人が収受する宝物館の拝観料

 

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