得意先から商品の販売代金とともに配送料も受け取っている場合、どのような経理処理を行っているでしょうか?
実は、得意先が負担する配送料については、経理処理の方法次第で消費税の納付税額を少なくすることができます。
今回は、販売代金とともに収受する配送料の取扱いについて解説します。
課税の対象の4要件
消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。
自社の商品を販売して収受した販売代金については、言うまでもなく「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たしています。
しかし、商品の販売代金とともに収受した配送料は「③ 対価を得て行うものであること」に該当するのでしょうか?
商品の配送まで自社で行っているのであれば、配送料も資産の譲渡等の対価として収受するものになりますが、商品の配送を他の業者に委託している場合は、得意先が負担すべき配送料を単に預かっているだけにすぎません。
別途収受する配送料等
得意先負担の配送料の取扱いについては、国税庁の消費税法基本通達10-1-16に以下のような記載があります。
(別途収受する配送料等)
事業者が、課税資産の譲渡等に係る相手先から、他の者に委託する配送等に係る料金を課税資産の譲渡の対価の額と明確に区分して収受し、当該料金を預り金又は仮受金等として処理している場合の、当該料金は、当該事業者における課税資産の譲渡等の対価の額に含めないものとして差し支えない。
したがって、配送料を以下のように「預り金」又は「仮受金」などの勘定科目で経理処理している場合は、配送料は不課税売上げとして処理して差し支えないこととされています。
(数値例:商品の販売代金10,000円(税込)と配送料500円(税込)を収受した。)
なお、配送料を運送業者に支払った場合は、預り金を取り崩します。
区分経理をしていない場合
商品の販売代金と配送料を区分せずにまとめて「売上高」として計上しているときは、配送料も含めた金額が課税売上げになります。
なお、配送料の支払額は「荷造運搬費」などの販管費で計上し、当該配送料の額は課税仕入れに該当します。
消費税の節税になる場合
消費税額を全額控除方式又は個別対応方式で計算している場合は、配送料について区分経理をしてもしなくても納付税額は変わりません。
しかし、簡易課税の適用を受けている場合は課税仕入れの金額は税額計算に影響しないため、別途収受する配送料を「預り金」又は「仮受金」などで区分経理した方が課税売上高が少なくなり有利になります。
また、一括比例配分方式を採用している場合は、荷造運搬費の課税仕入れの金額を全額控除できないため、配送料について区分経理をした方が課税売上げも課税仕入れも計上されないため納付税額の計算上有利になります。
まとめ
別途収受する配送料の取扱いについてまとめると、次のようになります。
「預り金」などで区分経理 → 不課税売上げ
また、経理処理の違いによる税額計算への影響は、次のようになります。
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問題番号 | タイトル |
38 | 売上高に含めている販売代金とは別途収受する配送料 |
518 | 預り金として経理している販売代金とは別途収受する配送料 |