今月29日、東京台東区の高級腕時計の中古販売業者「ネクサス」が消費税をあおよそ4,000万円を脱税した疑いで東京国税局から刑事告発され、ニュース等でも大きく取り上げられています。
ロレックス密輸で消費税不正還付 4,000万円脱税で刑事告発
海外で購入したロレックスなどの高級腕時計を密輸して、国内で仕入れたように見せかけて税務署に不正申告をしていたのですが、いったいどのような手口で脱税を行ったのでしょうか?
今回は、ロレックスの密輸による消費税の脱税の手口をわかりやすく解説したいと思います。
課税貨物を輸入する場合は、税関に輸入消費税を納付しなければならない
国外で購入したロレックスなどの腕時計を国内に輸入する場合は、輸入消費税を支払わなければなりません。
この場合の消費税の納付税額について、具体例をもとに解説します。
上記設例の場合は、香港で5億円で購入した腕時計を輸入する際に、課税貨物の保税地域からの引き取りに係る消費税等を4,000万円納付しなければなりません。(実際には輸入消費税等の金額は関税なども考慮して計算しますが、わかりやすくするためにおおよその金額で解説します。)
当該課税貨物の引き取りに係る消費税等は仕入税額控除ができるため、税務署には預かった消費税等6,400万円ー輸入消費税等4,000万円=2,400万円を納付します。
この場合、腕時計中古販売業者の利益は3億円となります。
密輸して国内で仕入れたように見せかければ、不正に仕入税額控除を受けられる
国外で購入したロレックスなどの腕時計を密輸して税関に消費税等を納めずに国内に持ち込み、国内で仕入れたように見せかけて帳簿等を作成すれば、密輸したことがバレないうえに仕入税額控除を受けることもできます。
この場合、実際には払っていない消費税等について仕入税額控除を受けることになるため、腕時計中古販売業者の利益は密輸により納付を免れた輸入消費税等の金額(4,000万円)の分だけ多くなることになります。
密輸の罰則
言うまでもなく、このような密輸は犯罪行為です。密輸を行った場合、以下のような罰則があります。
次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。ただし、当該犯罪に係る貨物の価格の五倍が千万円を超えるときは、罰金は、当該価格の五倍以下とする。
一 第六十七条(輸出又は輸入の許可)(第七十五条(外国貨物の積戻し)において準用する場合を含む。次号及び次項において同じ。)の許可を受けるべき貨物について当該許可を受けないで当該貨物を輸出(本邦から外国に向けて行う外国貨物(仮に陸揚げされた貨物を除く。)の積戻しを含む。次号及び次項において同じ。)し、又は輸入した者
消費税率が5%から8%に引き上げられたあと、このような消費税の不正還付の摘発件数は急激に増加しました。
今年の消費税率10%への引き上げ後もさらにこのような脱税が急増することが懸念されています。
なお、似たような脱税の手口として金地金を密輸する方法がありますが、この手口は平成31年度税制改正により使えなくなります。
詳しくは以下の記事をご覧ください、