国内取引の課税標準を算定するにあたって、それぞれの取引が、どの課税期間に属するものなのかを定める必要があります。

そこで、消費税法では、課税標準額を構成する課税売上げが、課税期間に属するかを明確にするために、資産の譲渡等の時期についての規定が設けられています。

今回は、資産の譲渡等の時期についての規定のうちコンサルタントなどの人的役務の提供に係る資産の譲渡等の時期について解説したいと思います。

 

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取引ごとの資産の譲渡等の時期

資産の譲渡等の時期については、取引ごとに次のように規定されています。

取引の様態 資産の譲渡等の時期
① 棚卸資産の販売(委託販売等を除く) 引渡日
② 固定資産の譲渡(工業所有権等を除く) 引渡日
③ 工業所有権等の譲渡又は実施権の設定 契約の効力発生日
④ 請負 物を引き渡すもの 目的物の全部の完成引渡日
物を引き渡さないもの 役務の提供の完了日
⑤ 人的役務の提供(請負を除く) 人的役務の提供の完了日
⑥ 資産の貸付け 契約又は慣習により使用料等の支払が定められているもの 支払日
支払日が定められていないもの 支払を受けた日(請求があった時に支払うこととされるている場合はその請求日)

 

「請負」と「委任」の違い

自分一人だけでは対応できない仕事や専門的な知識が必要となる申請手続きや経営指導など第三者に依頼して代わりに遂行してもらうことを業務委託といいます。

業務委託には大きく分けて「請負契約」と「委任契約」の2種類の契約方法があります。

請負契約とは

「請負契約」とは、仕事が完成することを目的とした契約のことで、民法第632条において次のように定められています。

(請負)
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

「請負契約」では、仕事を請け負った人は、依頼させた仕事について完成させることを約束し、依頼人は完成した成果物に対して報酬を支払うことを約束します。

例えば、システムエンジニアにシステムの構築を依頼したり、イラストレーターにイラストの制作を依頼する場合が「請負契約」となります。

「請負契約」により仕事を請け負った人は、仕事が完成することについて「瑕疵(かし)担保責任」を負うことになるため、仕事が完成しても不具合や欠陥がある場合にはそれを修正しなければならず、場合によっては 損害賠償しなければならないこともあります。

委任契約とは

「委任契約」とは、一定の法律行為をすることを委託する目的で交わす契約のことで、民法第634条において次のように定められています。

(委任)
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

「委任契約」では、有資格者でなければできない手続きや専門的な知識が必要となる経営指導など、委任をする人が自分の力だけではできないことを相手に依頼して行ってもらい、委託を受けた人はその業務行為そのものについて「善良な管理者の注意義務」という責任の下で業務を遂行してます。

「善良な管理者の注意義務」とは、業務を委任された人の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務のことをいい、注意義務を怠り、履行遅滞・不完全履行・履行不能などに至る場合は民法上過失があると見なされ、状況に応じて損害賠償や契約解除などが可能となります。「善良な管理者の注意義務」は、略して「善管注意義務」と呼ばれることが多いです。

例えば、不動産鑑定士に土地の鑑定評価を依頼したり、中小企業診断士に会社経営に関する助言・指導等を依頼する場合が「委任契約」となります。

 

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人的役務の提供が「請負契約」に該当する場合

人的役務の提供が「請負契約」に該当する場合の資産の譲渡等の時期は、その請負が物を引き渡すものである場合は「目的物の全部の完成引渡日」、その請負が物を引き渡さないものである場合は「役務の提供の完了日」となります。

具体例
当社は、システムエンジニアにソフトウェアの制作を50万円で依頼し、×01年3月10日に制作費を前払いで支払った。
×01年6月20日、ソフトウェアの完成引渡しを受けた。

本設例は、物(ソフトウェア)の引渡しを要する「請負契約」であるため、資産の譲渡等の時期は「目的物の全部の完成引渡日」になります。

制作費を前払いで支払った時点では未だ目的物の完成引渡しを受けていないため、制作費の支払いは不課税取引となります。制作途中のソフトウェアに関しては、その制作に要した費用を「ソフトウェア仮勘定」等の仮勘定に集計しておき、完成時に「ソフトウェア仮勘定」から「ソフトウェア」勘定への振替を行います(研究開発費等に係る会計基準注4)。

×01年3月10日:制作費支払時の仕訳

目的物の全部の完成引渡しを受けた時点で課税仕入れを計上することとなります。

×01年6月20日:完成引渡日の仕訳

 

人的役務の提供が「委任契約」に該当する場合

人的役務の提供が「請負契約」に該当する場合の資産の譲渡等の時期は、「人的役務の提供の完了日」です。

具体例
当社は、社会保険労務士に助成金の申請代行を依頼し、×01年3月20日に申請代行手数料55万円を前払いで支払った。
当該社会保険労務士との間で締結した助成金申請代行業務に係る契約は、申請書の提出が完了した時点で終了することとされており、申請書の提出が完了したのは×01年4月20日である。
その後、×01年9月20日に、普通預金口座に助成金300万円の入金を受けた。

本設例は、請負以外の人的役務の提供であるため、資産の譲渡等の時期は「人的役務の提供の完了日」となります。

申請代行手数料を前払いで支払った時点では、未だ助成金申請代行に係る人的役務の提供が完了していないため、申請代行手数料の前払いは不課税取引となります。

×01年3月20日:申請代行手数料支払時の仕訳

契約において、申請書の提出が完了した時点で契約は終了することとされているため、申請書を提出した日が「人的役務の提供の完了日」となります。

×01年4月20日:申請書提出完了日の仕訳

なお、助成金の受取りは消費税法上不課税取引となります。

×01年9月20日:助成金受取日の仕訳

(参考)人的役務の提供の完了日は契約内容で判断する

人的役務の提供の完了日がいつになるかについては、契約の内容により判断します。

本設例では、「申請書の提出が完了した時点で契約が終了する」という契約内容にしたため、人的役務の提供の完了日は「申請書の提出日」となります。しかし、本設例とは異なる内容の契約が交わされることも十分考えられます。

例えば、契約期間が助成金の申請締切日までである場合は、「申請締切日」が人的役務の提供の完了日になるということも考えられます。また、契約期間が助成金の入金日までである場合は、「助成金の入金日」が人的役務の提供の完了日になるということも考えられます。

「委任契約」に該当する人的役務の提供は、この他にも様々なケースが考えられるため、契約内容によってケースバイケースで判断します。

 

まとめ

人的役務の提供には「請負契約」に該当するものと「委任契約」に該当するものとがあります。

「請負契約」に該当する人的役務の提供に係る資産の譲渡等の時期は、物を引き渡す場合は「目的物の全部の完成引渡日」、物を引き渡さない場合は「役務の提供の完了日」となります。

「委任契約」に該当する人的役務の提供に係る資産の譲渡等の時期は「人的役務の提供の完了日」となります。

「人的役務の提供の完了日」がいつになるかについては、契約の内容によりケースバイケースで判断するようにしましょう。

 

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