消費税法には「調整対象固定資産」と「高額特定資産」という用語があります。
いずれも高い金額の資産を取得したら消費税の計算上一定の調整が必要になるということを何となく理解しているけど、それぞれの細かい違いはあまりよくわかっていないという方も多いのではないでしょうか。
今回は、消費税法における「調整対象固定資産」と「高額特定資産」の違いについて解説したいと思います。
調整対象固定資産と高額特定資産の違いのイメージ
ざっくり言うと、調整対象固定資産とは「購入価額が100万円以上の資産で棚卸資産以外のもの」、高額特定資産とは「購入価額が1,000万円以上の資産で、棚卸資産も含む」というイメージを持っておけば大体間違いありません。
イメージをイラストで示すと以下のようになります。
調整対象固定資産とは
調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で次に掲げる者のうち、その資産に係る課税仕入れに係る税抜対価の額、特定課税仕入れに係る支払対価の額又は地域から引き取られる その資産の課税標準である金額が、一の取引単位につき100万円以上であるものをいいます。
・建物及びその附属設備、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品
・次に掲げる無形固定資産
鉱業権、漁業権、ダム使用権、水利権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、育成者権、樹木採取権、公共施設等運営権、営業権、専用側線利用権、鉄道軌道連絡通行施設利用権、電気ガス供給施設利用権、水道施設利用権、工業用水道施設利用権、電気通信施設利用権
・ゴルフ場利用株式等
・次に掲げる生物
牛、馬、豚、綿羊及びやぎ、かんきつ樹、りんご樹、ぶどう樹、梨樹、桃樹、桜桃樹、びわ樹、くり樹、梅樹、柿樹、あんず樹、すもも樹、いちじく樹、キウイフルーツ樹、ブルーベリー樹及びパイナップル、茶樹、オリーブ樹、つばき樹、桑樹、こりやなぎ、みつまた、こうぞ、もう宗竹、アスパラガス、ラミー、まおらん及びホップ
・上記に掲げる資産に準ずるもの
回路配置利用権、預託金方式のゴルフ会員権、課税資産を賃借するために支出する権利金等、消費税法施行令第6条第1項第7号《著作権等の所在地》に規定する著作権等、他の者からのソフトウエアの購入費用又は他の者に委託してソフトウエアを開発した場合におけるその開発費用、書画・骨とう
付随費用は含めない
購入した資産が調整対象固定資産に該当するかどうかを判定する場合の「支払対価の額」には、その資産の購入のために要する引取運賃、荷役費等又は当該資産を事業の用に供するために必要な課税仕入れに係る支払対価の額は含めません。
一の取引単位とは
「一の取引単位」であるかどうかは、例えば、機械及び装置にあっては1台又は1基、工具、器具及び備品にあっては1個、1組又は1そろい、構築物のうち例えば枕木、電柱等単体では機能を発揮できないものにあっては社会通念上一の効果を有すると認められる単位ごとに判定します
なお、上記『調整対象固定資産の範囲』に掲げる資産に係る課税仕入れであれば、課税仕入れを行った時において上記に掲げる資産として完成されているかどうかを問わないこととされています。
共有物の場合は持分割合を乗じて判定する
事業者が他の者と共同で購入した共有物が調整対象固定資産かどうかを判定する場合には、その税抜支払対価の額にその事業者の共有物に係る持分割合に応じて判定します。
資本的支出も調整対象固定資産に該当する
上記に掲げる資産に係る資本的支出(事業の用に供されている資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額をいう。)についても、その課税仕入れに係る税抜支払対価の額が100万円以上である場合は調整対象固定資産に該当します。
資本的支出となる修理や改良等が2以上の期間にわたって行われる時は、課税期間ごとに要した課税仕入れに係る支払対価の額が100万円以上であるかどうかにより調整対象固定資産に該当するかどうかを判定します。
なお、土地の造成、改良のために要した 課税仕入れに係る支払対価の額のように上記『調整対象固定資産の範囲』に掲げる資産に該当しない資産に係る資本的支出についてはこの取扱いの適用はありません。
高額特定資産とは
高額特定資産とは、資産に係る課税仕入れに係る税抜対価の額、特定課税仕入れに係る支払対価の額又は保税地域から引き取られる その資産の課税標準である金額が、一の取引単位につき1,000万円以上である棚卸資産又は調整対象固定資産をいいます。
また、事故で建設する資産の建設等に要した原材料及び経費に係る課税仕入れに係る税抜対価の額、特定課税仕入れに係る支払対価の額又は保税地域から引き取られる その資産の課税標準である金額の合計額が、累計で1,000万円以上である場合は「自己建設高額特定資産」に該当します。
付随費用は含めない
購入した資産が高額特定資産に該当するかどうかを判定する場合の「支払対価の額」には、その資産の購入のために要する引取運賃、荷役費等又は当該資産を事業の用に供するために必要な課税仕入れに係る支払対価の額は含めません。
共有物の場合は持分割合を乗じて判定する
事業者が他の者と共同で購入した共有物が高額特定資産かどうかを判定する場合には、その税抜支払対価の額にその事業者の共有物に係る持分割合に応じて判定します。
自己建設資産の支払対価の額に含まれないもの
免税事業者であった課税期間や簡易課税制度の適用を受ける課税期間中において行った課税仕入れ等については、自己建設高額特定資産に該当するかどうかの判定における「支払対価の額」には含まれません。
また、課税仕入れ等以外の費用は自己建設資産の仕入れ等に係る支払対価の額に含まれないため、例えば、課税仕入れとならない給与、行政手数料、減価償却費などの費用は、たとえ工事原価に算入される場合であっても自己建設高額特定資産に該当するかどうかの判定における「支払対価の額」には含まれません。
自己建設資産の判定単位
自己建設 高額 特定資産に該当するかどうかの判定は、調整対象固定資産の範囲ごとに、その建設に要した 仕入れ等に係る支払対価の額の合計額を基礎として、1,000 万円以上であるかどうかにより判定を行います。
なお、調整対象固定資産の仕入れ等を行った場合であっても、調整対象固定資産が棚卸資産である自己建設資産の原材料として仕入れるものであるときは、その原材料となる資産ごとに判定するのではなく、その原材料の仕入れに係る支払対価の額についても、その棚卸資産の建設等に要した 仕入れ等に係る支払対価の額の合計額に含めて計算します。
保有する棚卸資産を自己建設資産の原材料として使用した場合
自己が保有する建設資材等の棚卸資産を自己建設資産の原材料として使用した場合には、その棚卸資産の仕入れに係る支払対価の額は、その自己建設資産の建設等に要した 仕入れ等に係る支払対価の額に含まれます。
高額特定資産に該当する居住用賃貸建物については仕入税額控除不可
令和2年度税制改正により、住宅の貸付の用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって高額特定資産に該当するもの(居住用賃貸建物)の課税仕入れについては、仕入税額控除制度が認められないこととなりました。
この改正は、令和2年10月1日以後に居住用賃貸建物の仕入れを行った場合について適用されることとなります。ただし、令和2年3月31日までに締結した契約に基づき令和2年10月1日以後に居住用賃貸建物の仕入れを行った場合には適用されません。
令和2年度税制改正については、詳しくは次の記事をご覧ください。