食べ放題コース料理を食べ残した場合に支払う罰金の消費税の取扱い

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

みなさんは「ケーキバイキング」や「焼肉食べ放題」、「お寿司食べ放題」、「しゃぶしゃぶ食べ放題」などの食べ放題コース料理はお好きですか?

僕は小食なので、食べ放題コースで頼んでもすぐにお腹がいっぱいになってしまうため、「これなら単品で頼んでおいた方がほうがもっと安く済んだのにな」と思うことが多いので食べ放題はあまり食べません。

それはさておき、食べ放題コース料理で料理を注文する場合は、「食べ残した場合は罰金○○円いただきます」という掲示がされていることがよくあります。

今回は、このような食べ放題コース料理を頼んだのに食べ残してしまったために支払った罰金には消費税は含まれているのか?含まれている場合は何%になるのか?という疑問点について解説したいと思います。

 

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食べ残した場合に支払う罰金とは

飲食店のメニューや壁紙に、以下のような記載がされているのを見たことはないでしょうか?

食べ残した場合の罰金の張り紙

このように、居酒屋などで食べ放題メニューを頼んだ場合に、注文した料理の食べ残しがあったときは、メニューの料金とは別に罰金の支払いを求められることがあります。

食べ放題メニューだけでなく、例えば、ラーメン屋などで無料で大盛りにできる場合などに食べ残してしまった場合にも、罰金の支払いを求められることがあります。

食べ残し以外でも罰金が請求されることもあります。例えば、焼肉屋で焼いていたお肉が、気付いたら真っ黒の炭の塊になっていたことはないでしょうか?そのような、焼肉屋でお肉の焼き焦がしが多いような場合にも罰金が請求されることがあります。

お店によっては、「罰金」ではなく「追加料金」と言った名目で徴収されることもあります。

このような、食べ残した場合に支払う「罰金」ないし「追加料金」は、消費税の課税関係を考える上でどのような性格を持っているのでしょうか?

これについては、「食べ残した料理をお店で廃棄する場合」「食べ残した料理をお客さんが持ち帰る場合」に場合分けして考えることができます。

食べ残した料理をお店で廃棄する場合

食べ残した料理が店で廃棄される場合は、その料理はお客さんに引き渡されるわけではありません。

このような場合に、お客さんから収受する「罰金」ないし「追加料金」が持つ性格としては、次の2つの見方が考えられます。

1つ目は、「廃棄されることとなった食材に係る損失の補てん」という見方です。

もしお客さんが自分の食べきれる分量だけの料理を頼んでいれば、食べ残した分の食材は廃棄することにならず、他のお客さんに提供することができたため、食べ残しを理由に収受する「罰金」ないし「追加料金」は廃棄されることとなった食材代を補てんするための損害賠償金としての性格を持っていると考えることができます。

2つ目は、「お店の人の精神的苦痛に対する慰謝料」という見方です。

食べ放題メニューを注文する人の中には「お金を払ってるんだから食べ残したって別にいいだろ!」という考えの人がいます。

しかし、食べ残しは、飲食店の経営者や料理人にとっては自分たちが一生懸命作った食べ物を粗末にされていることに他なりません。

また、生き物の命をいただいて作られた料理が無惨に残され廃棄せざるを得ないことになってしまうのは、お店の人にとっては極めて心苦しいことです。

これらのことを考慮すると、食べ残しを理由に収受する「罰金」ないし「追加料金」は、お店の人の精神的苦痛に対する慰謝料としての性格を持っていると考えることもできます。

食べ残した料理をお客さんが持ち帰る場合

食べ残した料理について、お店からの許可を得てお客さんが持ち帰ることができる場合は、食べ残しを理由に支払う「罰金」ないし「追加料金」は、その「食べ残した飲食物の譲渡対価」としての性質を持っていると考えることができます。

なお、話が少し脱線しますが、食べ放題コースの料理をお店の許可なく持ち帰ることは窃盗罪に問われる恐れがあります。どうしても食べきれなかった場合は、食べ残した分を持ち帰っても大丈夫か必ずお店の人に確認するようにしましょう。

 

上記を分類図にしてまとめると、次のようになります。

食べ残した場合の罰金の分類図

 

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消費税の課税の対象の4要件

消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。

課税の対象の4要件
① 国内において行うものであること
② 事業者が事業として行うものであること
③ 対価を得て行うものであること
④ 資産の譲渡・貸付け、役務の提供であること

食べ残しを理由に支払う「罰金」ないし「追加料金」が消費税の課税対象取引となるかどうかは、上記の「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たすかどうか が ポイントとなります。

 

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食べ残した料理をお店で廃棄する場合の罰金の消費税の取扱い

食べ残した料理をお店で廃棄する場合の罰金は「廃棄されることとなった食材に係る損失の補てん」「お店の人の精神的苦痛に対する慰謝料」といった性質を持っています。

このような場合は、消費税の課税の対象となるのでしょうか?

この点については、国税庁が公表しているタックスアンサーNo.6257『損害賠償金』において、次のような記載があります。

心身又は資産に対して加えられた損害の発生に伴って受ける損害賠償金については、通常は資産の譲渡等の対価に当たりません。

ただし、その損害賠償金が資産の譲渡等の対価に当たるかどうかは、その名称によって判定するのではなく、その実質によって判定すべきものとされています。

例えば、次のような損害賠償金は、その実質からみて資産の譲渡又は貸付けの対価に当たり、課税の対象となります。

1 損害を受けた棚卸資産である製品が加害者に対して引き渡される場合において、その資産がそのまま又は軽微な修理を加えることによって使用することができるときにその資産の所有者が収受する損害賠償金

2 特許権や商標権などの無体財産権の侵害を受けた場合に権利者が収受する損害賠償金

3 事務所の明渡しが遅れた場合に賃貸人が収受する損害賠償金

「廃棄されることとなった食材に係る損失の補てん」として収受する罰金は、お店の食材という「資産」に対して加えられた損害のにおける損害賠償金と考えられます。

一方、「お店の人の精神的苦痛に対する慰謝料」として収受する罰金は、お店の人の「心身」に対して加えられた損害のにおける損害賠償金と考えられます。

したがって、いずれの場合においても、上記課税の対象の4要件のうち「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たさないことになるため、食べ残した料理をお店で廃棄する場合に支払う罰金は消費税の課税対象外取引(不課税取引)となります。

 

食べ残した料理をお客さんが持ち帰る場合

食べ残した料理をお客さんが持ち帰る場合は、その「食べ残した飲食物の譲渡対価」としての性質を持っていると考えることができるため、上記課税の対象の4要件のうち「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たしているため、消費税がかかる取引(課税取引)となります。

では、税率は何%になるのでしょうか?

飲食物は、店内で食べる場合は消費税10%(標準税率)、持ち帰る場合は消費税8%(軽減税率)となることはご存知かと思います。

食べ残した料理を持ち帰る場合は、店内飲食にはならず消費税8%(軽減税率)になるのではないかと思う方が多いのではないでしょうか?

実は、そうはならず、食べ残した料理は持ち帰る場合であっても消費税は10%になります。

国税庁が公表している『消費税の軽減税率制度に関する Q & A(個別事例編)』という資料の問61において、次のような回答があります。

(回転寿司店でパック詰めした寿司を持ち帰る場合)
問61 当店は、回転寿司店ですが、提供した寿司を顧客がパック詰めにして持ち帰ることもできます。顧客がパック詰めした寿司は、軽減税率の適用対象となりますか。
【答】
軽減税率の適用対象とならない「食事の提供」とは、飲食設備のある場所において飲食料品を飲食させる役務の提供をいい、「食事の提供」に該当するのか、又は「持ち帰り」となるのかは、その飲食料品の提供等を行った時点において判定することとされています。
したがって、店内で飲食する寿司と区別されずに提供されたものは、その時点で「食事の提供」に該当し、その後、顧客がパック詰めにして持ち帰ることとしても、「飲食料品の譲渡」に該当せず、軽減税率の適用対象となりません。
なお、顧客が持ち帰り用として注文し、パック詰めにして販売するものは、「飲食料品の譲渡」に該当し、軽減税率の適用対象となります。

上記の太字部分で示したように、軽減税率が適用されるかどうかはその飲食料品の提供等を行った時点で判定することとされています。

(この点については、次の記事で詳しく解説しています。)

食べ放題メニューを注文した場合は、その飲食料品の提供が行われた時点(店員さんがテーブルに料理を持ってきた時点)においては、持ち帰りではなく店内で飲食されることが前提に提供されていることになるため、結果的にその料理が食べきれずに持ち帰ることとなったとしても、提供時点では店内飲食を前提に提供されていたものなので、軽減税率は適用されず、消費税は10%となります。

 

まとめ

食べ残しを理由に支払う罰金(追加料金)は、その食べ残した料理がお店で廃棄される場合は、対価性のない取引として消費税の課税対象外取引(不課税取引)となります。

一方、食べ残した料理をお客さんが持ち帰る場合は、対価性があるため消費税の課税対象取引となりますが、その料理は店内で飲食されることを前提に提供されたものであるため、軽減税率の適用はなく消費税は10%となります。

食べ残した場合の罰金の分類図(まとめ)

 

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消費税率判定トレーニング

問題番号 タイトル
IZ015 食べ放題メニューを注文した際に過度の食べ残しを理由として支払った追加料金(料理は店舗で破棄される場合)
IZ016 食べ放題メニューを注文した際に過度の食べ残しを理由として支払った追加料金(食べ残し分を持ち帰る場合)

 

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