会社法上の役員以外の者に資産を贈与した場合でもみなし譲渡になる?
Courtany / Pixabay

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

消費税法の規定では、法人がその社の役員に対して資産を贈与(無償の譲渡)した場合は「みなし譲渡」に該当し、課税の対象に含まれることになります。

実は、取締役や監査役などの会社法上の役員以外の者に対して資産を贈与した場合にも「みなし譲渡」に該当して課税の対象となることがあるのをご存知でしょうか?

今回は、「みなし譲渡」の規定が適用される「役員」の範囲について解説します。

 

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資産の贈与は対価性のない取引

消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。

課税の対象の4要件
① 国内において行うものであること
② 事業者が事業として行うものであること
③ 対価を得て行うものであること
④ 資産の譲渡・貸付け、役務の提供であること

個人事業者が棚卸資産や事業用資産を家事のために消費した場合や、法人がその社の役員に対して資産を贈与した場合は、課税の対象の4要件のうち「③ 対価を得て行うものであること」を満たしません。

 

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みなし譲渡とは

個人事業者や法人の役員は資産を自由に処分することができるため、自家消費や贈与により課税売上げを計上しないようにすれば、資産の購入費用についてだけ仕入税額控除の適用を受けることができます。

そこで、このような不当な税負担の回避を防止するために、個人事業者による棚卸資産や事業用資産の家事消費や、法人のその社の役員に対する資産の贈与は、「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たすものとみなされます。

「みなし譲渡」については、消費税法第4条第5項で次のように規定されています。

5 次に掲げる行為は、事業として対価を得て行われた資産の譲渡とみなす。
一 個人事業者が棚卸資産又は棚卸資産以外の資産で事業の用に供していたものを家事のために消費し、又は使用した場合における当該消費又は使用
二 法人が資産をその役員(法人税法第二条第十五号に規定する役員をいう。)に対して贈与した場合における当該贈与

 

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役員の範囲

上記規定内の太字のカッコ書きのとおり、この規定が適用される「役員」とは法人税法第二条第十五号に規定する役員をいいます。

法人税法第二条第十五号では、役員は次のように規定されています。

役員
法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法人の経営に従事している者のうち政令で定めるものをいう。

前半の「法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人」はいずれも会社法上の役員です。

しかし、後半の「これら以外の者で法人の経営に従事している者のうち政令で定めるもの」は、法人税法に独自に規定されている役員で、「みなし役員」といいます。

なお、「政令」とは法人税法施行令のことを指し、法人税法施行令第7条において次のように規定されています。

法第二条第十五号(役員の意義)に規定する政令で定める者は、次に掲げる者とする。
一 法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る。次号において同じ。)以外の者でその法人の経営に従事しているもの
ニ ・・・(後略)

したがって、「みなし譲渡」の適用を受ける「役員」の範囲には、会社法上の役員だけでなく、会長や総裁、理事長、組合長、相談役、顧問など、その法人内における地位、職務等からみて他の役員と同様に実質的に法人の経営に従事していると認められるものも含まれます。

 

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消費税法 無敵の一問一答

問題番号 タイトル
246 みなし役員に対する資産の贈与

 

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