貸主から突然家賃の値上げを要求された場合などに、供託手続きを行い、法務局に現状の家賃を供託することがあります。
今回は、事務所家賃につき係争がある場合の法務局への供託金の消費税の取扱いについて解説したいと思います。
家賃の引き上げ要求に応じないと最悪追い出されることもある
貸主にいきなり家賃の値上げを要求された場合に、値上げ前の現状の家賃を支払ったとしても貸主が家賃の受け取りを拒否することがあります。
このような場合、家賃を支払う意思があったとしても、貸主に家賃の受取を拒否されてしまったら、家賃の不払い(債務不履行)を理由に一方的に賃貸借契約を解除され、最悪事務所から追い出されてしまう可能性があります。
供託手続きを行えば債務不履行となることを免れることができる
上記のように、貸主に家賃の受け取りを拒否されている場合であっても、供託手続きをとり現状の家賃を法務局に供託した場合は、債務不履行となることを免れることができます。
借地借家法第32条第2項では、裁判で家賃額が確定するまでは、借主は相当と思われる額を家賃として支払えば足りることとされています。
ここで、「相当と思われる額」とは、現状の家賃額と解されます。
したがって、供託手続きを行い現状の家賃額を法務局に供託すれば、債務不履行を理由に事務所から追い出されることはなくなります。
法務局に供託した現状の家賃額を課税仕入れにできる
事務所の家賃に係る資産の譲渡等の時期については、消費税法基本通達9-1-20において以下のような記載があります。
(賃貸借契約に基づく使用料等を対価とする資産の譲渡等の時期)
資産の賃貸借契約に基づいて支払を受ける使用料等の額(前受けに係る額を除く。)を対価とする資産の譲渡等の時期は、当該契約又は慣習によりその支払を受けるべき日とする。ただし、当該契約について係争(使用料等の額の増減に関するものを除く。)があるためその支払を受けるべき使用料等の額が確定せず、当該課税期間においてその支払を受けていないときは、相手方が供託したかどうかにかかわらず、その係争が解決して当該使用料等の額が確定しその支払を受けることとなる日とすることができるものとする。(注) 使用料等の額の増減に関して係争がある場合には本文の取扱いによるのであるが、この場合には、契約の内容、相手方が供託をした金額等を勘案してその使用料等の額を合理的に見積るものとする。
建物の賃借料は、賃貸借契約又は慣習により支払いを受けるべき日が資産の譲渡等の時期となります。
使用料等の額の増減に関して係争がある場合は、供託をした金額をもって課税仕入れとすることができます。
したがって、いきなり家賃の値上げを要求された場合でも、値上げ前の現状の家賃額を法務局に供託すれば、その供託をした現状の家賃額を当期の課税仕入れとして計上することができます。
家賃額が確定した場合は確定した日に残額を課税仕入れとする
家賃の改定について 貸主と借主との話し合いで両者の合意が得られない場合は、法的手続きを執ることになります。
法的手続きには「調停」と「訴訟」があります。
「調停」とは、裁判所で裁判官と調停委員を交えて両者で話し合いを行います。
それでも両者ともに納得いかず解決しない場合には、貸主が「訴訟」を起こして家賃の値上げを求めることとなります。
この場合、不動産鑑定士の鑑定などをもとに、裁判所が適切な家賃を決定することになります。
法務局に現状の家賃を供託している場合は、家賃額が確定した日にそれまで法務局に供託していた金額の合計額との差額を課税仕入れとして計上します。
まとめ
貸主から突然家賃の値上げを要求され、家賃の受け取りを拒否されたとしても、現状の家賃額を法務局に供託すれば、債務不履行にはならないため 事務所から追い出されることはなくなります。
また、法務局に供託した現状の家賃額は、消費税法上課税仕入れとして計上することができます。
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問題番号 | タイトル |
750 | 事務所家賃の供託金 |