事業活動を行っている個人事業者や企業は、商品紹介や会社案内 などのために様々なチラシやパンフレットなどを作っているかと思います。
実は、これらの制作費用は、製作目的により課税仕入れの区分が異なってくるということをご存知でしょうか?
今回は、商品紹介や会社案内のためのチラシ等の製作費に係る課税仕入れの区分について解説したいと思います。
国内で製作したチラシ等の製作費は課税仕入れとなる
消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。
個人事業者や企業が、事業活動のためにチラシやパンフレットなどを製作する行為は②~④の要件は満たしています。
「① 国内において行うものであること」の要件を満たすかどうかは、チラシやパンフレットなどを国内で製作しているかどうかにより異なります。
日本国内の印刷所でチラシやパンフレットなどを製作した場合は、海外で配布したとしても、製作した場所が国内なので「① 国内において行うものであること」の要件を満たし、課税仕入れに該当します。
一方、海外の印刷所でチラシやパンフレットなどを製作した場合は、日本国内で配布したとしても、製作した場所が国外なので「① 国内において行うものであること」の要件を満たさず、課税仕入れには該当しません。
課税売上対応課税仕入れとなる場合
国内の印刷所で製作したチラシや パンフレットの製作費のうち、次のようなものは「課税売上対応課税仕入れ」となります。
国内における課税資産の譲渡等のためのチラシ
国内で販売する商品の特売セール情報や自社の製品のカタログ・パンフレットなど、非課税とされない商品や製品を販売するためのチラシ等の製作費は課税売上対応課税仕入れとなります。
国内の事務所や店舗用のテナントの入居者募集広告や、自社サービスの案内広告など、非課税とされない資産の貸付けや役務の提供のために要するチラシ等の制作費も課税売上対応課税仕入となります。
また、車両や建物などの非課税とされない固定資産を売却するために、買い手を募集するためのチラシ等を製作した場合の製作費も課税売上対応課税仕入れとなります。
海外に輸出販売するためのチラシ
商品や製品を海外に輸出販売するために製作するチラシ等の製作費は課税売上対応課税仕入れとなります。
なお、海外に輸出する資産は非課税資産であっても、消費税法第31条《非課税資産の輸出等を行つた場合の仕入れに係る消費税額の控除の特例》の規定により、仕入税額控除の計算上、非課税資産の輸出売上高は課税資産の譲渡等に係る輸出取引等に該当するものとみなされるため、非課税資産を輸出するために製作するチラシ等の製作費も売上対応課税仕入れとなることに注意しましょう。
国外の資産の譲渡・貸付けのためのチラシ
国外に所在する資産を販売するために製作したチラシ等の製作費は、課税売上対応課税仕入れとなります。
土地などの非課税資産の譲渡や住宅の貸付けのためチラシ等を製作した場合でも、国外に所在する資産の譲渡等のための課税仕入れは課税売上対応課税仕入れに該当することに注意しましょう。
国外で資産を譲渡するために要する課税仕入れの区分経理の考え方については、次の記事で詳しく解説しています。
製造工場や商品販売店舗の従業員募集のためのチラシ
課税商品の製造工場や販売店舗の従業員を募集するために制作したチラシ等の製作費は、その課税商品の販売(課税売上げ)に係る課税仕入れであるため課税売上対応課税仕入れとなります。
また、国外に輸出販売する非課税資産の製造工場の従業員募集広告や、国外の商品販売店舗に勤務する従業員の募集広告の製作費も課税売上対応課税仕入れとなります。
非課税売上対応課税仕入れとなる場合
国内の印刷所で製作したチラシやパンフレットの製作費のうち、次のようなものは「非課税売上対応課税仕入れ」となります。
国内における土地などの非課税資産の譲渡のためチラシ
国内において土地や商品券、車椅子などの非課税資産を譲渡するために製作したチラシ等の製作費は非課税売上対応課税仕入れとなります。
国内の住宅の入居者募集広告など非課税資産の貸付けのためのチラシ
国内の住宅の入居者募集広告や更地の貸付けのためなどの非課税資産の貸付けのために要するチラシ等の制作費は非課税売上対応課税仕入れとなります。
国内における非課税とされる役務の提供のためのチラシ
病院の社会保険医療にかかる診療の広告や保育園や幼稚園の入園者募集広告などの非課税とされる役務の提供のために要するチラシ等の制作費は非課税売上対応課税仕入れとなります。
非課税資産の製造工場や店舗の従業員募集のためのチラシ
国内で販売する車椅子などの非課税資産の製造工場の従業員や商品販売店舗の従業員を募集するためのチラシは非課税売上対応課税仕入れとなります。
共通対応課税仕入れとなる場合
国内の印刷所で製作したチラシやパンフレットの製作費のうち、次のようなものは「共通対応課税仕入れ」となります。
課税資産と非課税資産の一括譲渡のためのチラシ
土地付き建物などの課税資産と非課税資産の一括譲渡を行うために製作したチラシ等の製作費は共通対応課税仕入れとなります。
国内と国外に販売する非課税資産の譲渡のためのチラシ
車椅子などの非課税資産を国内と国外に販売する場合は、国内販売分は非課税売上げ、国外販売分は非課税資産の輸出等の規定により課税売上げとみなされるため、課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れとして共通対応課税仕入れとなります。
ただし、国内と国外に販売している場合であっても、日本語のみで商品説明がされている場合など国内で販売するためだけのものであることが明らかなら非課税売上対応、英語のみで商品説明がされている場合など国外で販売するためだけのものであることが明らかなら課税売上対応となります。日本語と英語が併記してあり、国内販売と国外販売の両方の売上げに対応するチラシであれば共通対応となります。
会社の業務案内など明確に対応する売上げがないチラシ
会社紹介や会社の業務案内など、商品や製品などを販売するため以外の目的で製作されたチラシやパンフレットの製作費は、明確に対応する売上げが存在しないことになるため、共通対応課税仕入れとなります。
本社従業員の募集のためのチラシ
本社に勤務する従業員を募集するために制作したチラシ等の制作費は、明確に対応する売上が存在しないため、共通対応課税仕入れとなります。
株主を募集するためのチラシ
株主を募集するためのチラシや官報公告掲載料は、不課税取引に係る課税仕入れなので、共通対応課税仕入れとなります。
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