消費税率の引き上げに伴い、消費者が物やサービスを購入するときの消費税の負担はますます大きくなっています。
もし、消費税を負担せずに物やサービスを購入することができたら、消費者にとってとても魅力的なことです。
そこで、「期間限定消費税還元セール!セール期間中消費税は当店が負担いたします!」という内容のセールを行ったら、たくさんお客さんが来そうですよね。
しかし、残念ながらこのような広告宣伝を行うことは「消費税転嫁対策特別措置法」という法律で禁止されています。
今回は、「消費税転嫁対策特別措置法」で禁止されている3つの表示方法について解説します。
消費税転嫁対策特別措置法とは
5%→8%→10%と段階的に引き上げられることとなった消費税が、円滑かつ適正に販売価格に転嫁されるように、平成25年に消費税転嫁対策特別措置法が制定されました。
消費税転嫁対策特別措置法にはさまざまな禁止事項が規定されていますが、今回は「消費税の転嫁を阻害する表示の是正に関する特別措置」について説明します。
なお、「消費税の転嫁拒否等の行為の是正に関する特別措置」については以下の記事で解説しています。
禁止される3つの表示
消費税は間接税であるため、消費者から預かった消費税の納税義務を負うのは事業者です。
しかし、消費税の最終的な負担者はあくまでも消費者であるため、あたかも消費者が消費税を負担していない又はその負担が軽減されているかのような誤認を消費者に与えないようにするために、消費税転嫁対策特別措置法において、以下の3つの表示が禁止されています。
② 取引の相手方が負担すべき消費税に相当する額の全部又は一部を対価の額から減ずる旨の表示であって消費税との関連を明示しているもの
③ 消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示であって②に掲げる表示に準ずるもの
① 取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示
上記のイラストのような、お客さんに消費税の転嫁をしていない旨のセールは、消費者に消費税を負担しなくても良いのだと誤認させることとなるため、消費税転嫁対策特別措置法により禁止されています。
この他にも、以下のような表示が禁止されています。
イ 「消費税は一部の商品にしか転嫁していません。」
ウ 「消費税は転嫁していないので,価格が安くなっています。」
エ 「消費税はいただきません。」
オ 「消費税は当店が負担しています。」
カ 「消費税はおまけします。」
キ 「消費税はサービス。」
ク 「消費税還元」,「消費税還元セール」
ケ 「当店は消費税増税分を据え置いています。」
② 取引の相手方が負担すべき消費税に相当する額の全部又は一部を対価の額から減ずる旨の表示であって消費税との関連を明示しているもの
上記のイラストのような、本来消費者が負担する消費税の一部を減額する旨のセールは、消費者に消費税の負担が軽減されるかのような誤認を与えることとなるため、消費税転嫁対策特別措置法により禁止されています。
この他にも、以下のような表示が禁止されています。
イ 「消費税10%分還元セール」
ウ 「増税分は勉強させていただきます。」
エ 「消費税率の引上げ分をレジにて値引きします。」
③ 消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示であって②に掲げる表示に準ずるもの
上記のイラストのように、ポイントの付与等により消費税に関連した経済上の利益を供与する行為は、実質的に消費者に消費税を負担しなくても良いのだと誤認させることとなるため、消費税転嫁対策特別措置法により禁止されています。
この他にも、以下のような表示が禁止されています。
イ 「消費税相当分の商品券を提供します。」
ウ 「消費税相当分のお好きな商品1つを提供します。」
エ 「消費税増税分を後でキャッシュバックします。」
禁止されない表示
上記のような消費税分を値引きする等の宣伝や広告が禁止されている理由は、消費者に消費税を負担しなくても良いのだと誤認させるのを防止するためです。
したがって、「消費税」といった文言を含まない表現については,宣伝や広告の表示全体から消費税を意味することが客観的に明らかな場合でなければ、禁止されることはありません。
禁止されない表示の具体例としては、以下のようなものがあります。
消費税との関連がはっきりしない「春の生活応援セール」「新生活応援セール」
上記のイラストのように、たまたま値下額が消費税額と同額であっても、消費税との関連性をはっきりと明示していないのであれば、消費者に消費税を負担しなくても良いと誤認させるおそれがないため禁止されません。
たまたま消費税率の引上げ幅と一致するだけの「2%値下げ」「2%還元」「2%ポイント還元」
上記のイラストのように、たまたま値下額が消費税率の引き上げ幅と一致している場合であっても、消費税との関連性をはっきりと明示していないのであれば、消費者に消費税を負担しなくても良いと誤認させるおそれがないため禁止されません。