最近、日露首脳会談が開催され、日露平和条約の締結に向けて、北方領土問題の解決策の話し合いが行われています。
北方領土については、日本・ロシア双方が領有権を主張していますが、もし北方領土の島内で商品を販売した場合、日本の消費税はかかるのでしょうか?
今回は、北方領土問題を通じて、消費税の課税の対象となる「国内」の範囲について考えてみたいと思います。
北方領土とは
北方領土は、北海道東方の歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島の4島を指します。
北方領土は、1945年(昭和20年)8月14日に日本がポツダム宣言の受諾を決定した後に旧ソ連軍が上陸し占領してから、現在もロシアが実効支配しています。
日本国政府はロシア連邦に対し返還を求めていますが、今だに返還交渉は難航しており、日露両国の主張は平行線をたどったままです。
課税の対象となる「国内」とは
消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。
4要件の1つに「① 国内において行うものであること」があります。
択捉島で商品を販売した場合は、「① 国内において行うものであること」に該当するのでしょうか?
「国内」の定義については、消費税法第2条第1項第1号(定義)において次のように規定されています。
国内
この法律の施行地をいう。
非常にシンプルな定義です。
「法律の施行地」ということは、日本国が立法・司法・行政の三権を行使する権利を有している地域であること、つまり、「施政権」を有する地域であることが、「① 国内において行うものであること」に該当するかどうかのポイントとなります。
(参考)施政権とは
しせいけん【施政権】
信託統治地域において、立法・司法・行政の三権を行使する権利。
北方領土は日本の施政権が及ぶのか
残念ながら、北方領土は現在ロシアに実効支配されているため、日本国が単独で施政権を行使できる現況にはありません。
内閣府や外務省のHPでは、政府としての立場上、施政権を行使できないことについては明記を避けていますが、現状としてほとんど施政権は及んでいません。
Wikipediaにおいても、北方領土問題に関する記事で次のように記載されています。
・・・(前略)・・・日本国政府は北方領土は日本固有の領土だとして領有権を主張しているものの、一切の施政権は及んでおらず、日本はその返還を求めている。
したがって、現状では、択捉島を含む北方領土は消費税法上「国内」に該当せず、北方領土の島内で商品を販売した場合は国外取引として消費税の課税の対象に含まれないものと考えられます。
今後はどうなるのか
最近、日露平和条約の締結に向けて北方領土問題の話し合いが急速に進展しています。
日ソ共同宣言を基礎として、まずは歯舞群島と色丹島の2島返還が行われるかもしれません。また、北方領土内における日露共同経済活動に関する話し合いも行われています。
しかし、現段階では、主権は日本に返還されたとしても施政権は行使できるかはまだわかりません。
北方領土内における消費税法の取扱いがどうなるかは、今後の政治の動向を見守っていくしかありません。
平和的に北方領土問題が解決されることを望みます。
(追記)
2022年2月、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が開始されたことに伴い日露間の関係も冷え込み、北方領土問題の解決ははるかに遠のいてしまいました。
一刻も早くロシアが戦争を止め、平和的に領土問題が解決される日が来ることを願います。
(参考)相続税法における北方領土の取扱い
相続税法施行令附則第2項では、北方領土を相続税法の施行地域から除外しています。
法附則第二項の規定により法の施行地域から除かれる地域は、当分の間、歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島とする。
消費税法においては、このような適用除外規定はありません。
しかし、今後北方領土問題の話し合いが進展したら、施政権の及ぶ範囲を明確にするために消費税法でもこのような規定が設けられる可能性もゼロではないと思います。
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