みなさんはアイスの「ガリガリ君」は好きですか?
もちろん僕は大好きです。色んな種類の味がありますが、僕はやはり王道のソーダ味が一番好きです。
夏の暑い日なんかは「あぁ…あぢぃ…ガリガリ様たべたぃ…」と無意識に口走ってしまうくらいに好きです。
ガリガリ君は、運が良いと持つ棒の部分が「当たり棒」になっていることがあり、その「当たり棒」をガリガリ君を売っているお店に持っていくと無料でもう一本のガリガリ君と交換してもらえます。
時には、製造メーカーの赤城乳業株式会社に当たり棒を郵送することで、玩具などの景品と交換してもらえるキャンペーンが行われていることもあります。
そんなガリガリ君の「当たり棒」を巡って、本日、2021年1月6日、世間を震撼させる凄惨な事件が発生しました。
NHKニュース:アイス「ガリガリ君」の当たり棒偽造か 会社員逮捕 容疑を否認
アイスの「ガリガリ君」の当たり棒を偽造して、ゲームやアニメで人気の「ポケットモンスター」の景品をだまし取ろうとしたとして、埼玉県警は43歳の会社員を詐欺未遂の疑いで逮捕しました。調べに対し、容疑を否認しているということです。
とても痛ましい事件だと思います。
これは単に、景品を不当にだまし取ろうとした詐欺未遂事件と言うにとどまるものではなく、少ないおこずかいの中で当たり棒が出ることを楽しみにしながらガリガリ君を買っている純真無垢な子供たちのピュアな心と尊厳を蹂躙する極めて凶悪な犯行であるといえます。
犯人に対しては厳正なる処罰が下されることを切に願います。
せっかく会社員として務めていたのに、こんなことで人生を棒に振るなんて、なんと愚かしいことかと思います。
さて、今回は、そんなガリガリ君の当たり棒を店舗で交換した場合の経理・会計処理と消費税の取扱いについて解説したいと思います。
ガリガリ君の当たり棒とは
ガリガリ君を食べて、運が良いと上の画像のような「当たり棒」が手に入ることがあります。
この「当たり棒」をお店に持っていくと、「当たり棒」と引き換えにもう1本のガリガリ君又はガリ子ちゃんをもらえます。
店舗での交換以外にも、「当たり棒」と引き換えにTシャツやQUOカード、玩具などの景品と交換してもらえるキャンペーンが行われていることもあります。
キャンペーンの詳細は赤城乳業株式会社のホームページで確認できます。
なお、店舗でガリガリ君と交換する際は、新型コロナウイルス感染予防および拡散防止のため、以下のような手順で交換するようにしましょう。
② 乾燥させた「当り棒」をビニール袋やラップフィルム等に包んで下さい。
③ ビニール袋やラップフィルム等で包んだ状態で購入した店舗にて交換をお願い致します。
ガリガリ君の当たり棒は消費税法上「物品切手等」に該当する
消費税法基本通達6-4-4において、次のいずれにも該当する証書については、消費税法第6条の規定により非課税とされる「物品切手等」に該当するものとしてしています。
(2) 給付等を受けようとする者が当該証書等と引換えに給付等を受けたことによって、その対価の全部又は一部の支払債務を負担しないものであること。
ガリガリ君の「当たり棒」をこれらに照らし合わせて考えてみましょう。
まず、ガリガリ君の当たり棒には「ガリガリ君かガリ子ちゃんと交換できます」と記載されており、それと引き換えに一定の物品(ガリガリ君又はガリ子ちゃん)の給付を約する証書であるといえるため、⑴の要件は満たしています。
次に、お店にガリガリ君の当たり棒を交換しに来た人(給付等を受けようとする者)は、その当たり棒と引換えに無料でガリガリ君又はガリ子ちゃんの給付を受けることができることから、その対価の全部の支払債務を負担しないこととなるため、⑵の要件も満たします。
したがって、ガリガリ君の当たり棒は、消費税法上「物品切手等」の要件を満たしてしまっているため、商品券やQUOカードなどと同様に取り扱わなければならないということとなります。
商品券に係る消費税法上の取扱いは、次の記事で詳しく解説しています。
これを踏まえて、ガリガリ君の当たり棒に関する会計処理と消費税の取扱いについて見てみましょう。
ガリガリ君購入&当たり棒が出たときの仕訳
まず、お店でガリガリ君を現金 75円で購入した場合のお店側とお客さん側の会計処理について見てみましょう。
お店側の会計処理
ガリガリ君を現金で販売したときは、通常の商品販売の会計処理を行います。
なお、ガリガリ君は飲食料品なので、軽減税率8%が適用されます。
お客さん側の会計処理
会社の従業員に福利厚生としてガリガリ君を買っていると仮定して、ガリガリ君の購入者側の会計処理について 見てみましょう。
まず、現金で購入した時の仕訳は、通常の購入の仕訳を行います。
ガリガリ君を食べ、「当たり棒」が出た場合は、その時点で「物品切手等の発行」を受けたものとして会計処理を行います。
物品切手の発行を受けた場合の消費税の取扱いについては、消費税法基本通達6-4-5において次のように記載されています。
(物品切手等の発行)
6-4-5 事業者が、法別表第二第4号ハ《物品切手等の譲渡》に規定する物品切手等を発行し、交付した場合において、その交付に係る相手先から収受する金品は、資産の譲渡等の対価に該当しない。
したがって、ガリガリ君の当たり棒の出現は不課税取引となります。
この場合、当たり棒は「貯蔵品」などの資産の勘定科目で計上し、金額は購入価額と同じ75円で処理します。
貸方科目は「雑収入」などの収益の勘定科目で計上し、消費税の区分は不課税売上げとして処理します。
当たり棒と交換したときの会計処理
次は、お客さんが当たり棒を持ってきてガリガリ君と交換した場合について考えてみましょう。
お店側の会計処理
お客さんが「当たり棒」を持ってきて、ガリガリ君を交換したときは、物品切手等と引き換えにガリガリ君を販売したものと考えて会計処理を行います。
お店が引き取った「当たり棒」は「貯蔵品」などの資産の勘定科目で処理し、貸方はガリガリ君の通常の販売価格 75円を課税売上げとして計上します
ここで、商品券などの通常の物品切手等であれば、商品等を給付した後、その物品切手等の作成者から額面金額の精算を受けることができるのですが、ガリガリ君の当たり棒については、製造メーカーの赤城乳業株式会社にその当たり棒を送ったとしてもガリガリ君の販売価格の精算を受けることはできません。
なぜなら、コンビニなどのお店がガリガリ君を発注すると、一箱31本+1本と、はじめから当たり1本分が余分に納品されるからです。
そのため、お店にとっては、ガリガリ君の当たり棒を受け取った場合はもう換金価値がないためゴミ箱にポイするしかなく、その際は以下のように「貯蔵品」を「雑損失」に振り替える仕訳を行います。この場合の消費税の取引区分は不課税取引となります。
(参考)当たり棒や当たりくじをメーカーが買い取ってくれる場合
ガリガリ君のメーカーは当たり棒を買い取ってくれませんが、他の当たり付きのアイスやお菓子によっては、当たり棒や当たりくじをメーカーが買い取ってくれる場合があります。
その場合は、以下のような仕訳を行います。消費税の取引区分は、物品切手等の作成者から精算を受ける場合に該当するため不課税取引となります。
お客さん側の会計処理
お店で「当たり棒」とガリガリ君を交換したときは、物品切手等と引き換えにガリガリ君の課税仕入れを行ったものと考えます。
この場合、当たり棒が出た時に計上した「貯蔵品」を「福利厚生費」に振り替え、軽減税率8%課税仕入れを計上します。
当たり棒を第三者に譲渡した場合は非課税取引
もしガリガリ君の「当たり棒」をお店で使う前に第三者に譲渡した場合は、「物品切手等の譲渡」に該当するため、非課税取引に該当します。
消費者がメルカリなどで当たり棒を転売する場合は、消費税の課税の対象の4要件のうち「事業として行われるものであること」の要件を満たさないため課税対象外(不課税取引)となりますが、反復・継続的に当たり棒の転売活動を行っている場合は「事業者」に該当するため、その事業者が当たり棒を転売した場合は非課税取引となります。
まとめ
ガリガリ君の「当たり棒」は、消費税法上「物品切手等」に該当するため、ガリガリ君を販売するお店は「当たり棒」と引き換えにガリガリ君を引き渡した場合は、通常の販売価格 75円を課税売上げとして計上しなければなりません。
ガリガリ君に限らず、他のアイスの当たり棒や、マルカワのフーセンガムの当たりくじなど、それと引き換えに商品を引き渡す証書であれば同様に処理します。
ただし、コンビニ等の店員さん曰く、実際にガリガリ君の当たり棒を持ってくる人は本当にごく稀で、小学生くらいの子がたまに持ってくるだけで大人はほとんど来ないそうです。
また、金額も極めて少額であるため、税務調査の際にガリガリ君の当たり棒の会計処理が適切に行われているかを指摘されることはほとんどないと思います。
しかし、消費税法の規定に照らして考えると、この記事で紹介した方法が適切な会計処理となるため、ガリガリ君を販売している事業者は売上げの計上漏れがないよう注意しましょう。