会社の役員のポジションのひとつとして「会計参与」という役職があります。
今回は、会計参与として就任した税理士法人などに対して報酬を支払った場合に、消費税の課税仕入れとなるのかについて解説します。
会計参与とは
平成18年5月1日から施行された会社法において新たに「会計参与」という役員のポジションが創設されました。
会計参与の設置は義務ではなく、株式会社の規模の大小、機関設計や株式の譲渡制限の有無にかかわらず任意に設置することができます。
会計参与は、会計に関する専門家(税理士・公認会計士)が、取締役や監査役とは独立した立場を維持しつつ、取締役と共同して計算関係書類を作成するとともに、その計算関係書類を会社とは別に備え置き、会社の株主・債権者の求めに応じて開示することなどを職務としています。
具体的には、以下のような職務があります。
② 会計参与報告の作成
③ 株主総会などにおける特定事項の説説明
④ 計算関係書類の備置き
⑤ 株主・債権者への開示(株主・債権者の求めがあった場合)
会計参与になれるのは、税理士(税理士法人を含む)又は公認会計士(監査法人を含む)に限られます。
顧問税理士も会計参与として就任することができますが、その会社(子会社を含む)の取締役、監査役、会計監査人などの役員や従業員と兼任することはできません。
会計参与報酬は課税仕入れになるのか?
会計参与に対して支払う報酬は消費税法上の課税仕入れとなるのでしょうか?
消費税法第2条第1項第12号に規定されている「課税仕入れ」の定義について見てみましょう。
十二 課税仕入れ 事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供(所得税法第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等を対価とする役務の提供を除く。)を受けること(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるもので、第七条第一項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するもの及び第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるもの以外のものに限る。)をいう。
太字部分で示した通り、給与等を対価とする役務の提供は課税仕入れの範囲から除かれることになります。
これを踏まえて、会計参与が「個人」である場合と「法人」である場合について考えてみましょう。
会計参与が個人である場合
税理士又は公認会計士が個人で会計参与として就任している場合は、取締役や監査役に対する役員報酬と同様に、会計参与報酬も所得税法上「給与所得」に該当することになります。
したがって、個人に支払う会計参与報酬は、原則として、給与等を対価とする役務の提供に係るものであるため、課税仕入れに該当しないことになります。
ただし、会計参与が事務所の使用人を職務の補助者として使用する、又は職務のために直接雇用する、あるいは備置き・開示する場所のスペース費用を負担し、これらの費用を会社に請求するような場合には事業所得に該当することになるため、その場合は課税仕入れに該当することになります。
なお、会計参与が顧問税理士も兼任している場合は、契約等で会計参与報酬として支払う金額と税理士顧問料として支払う金額を明確に区分することにより、会計参与報酬は不課税仕入れ、税理士顧問料は課税仕入れとなります。
会計参与が法人である場合
税理士法人又は監査法人が会計参与として就任している場合は、法人の収入となるため、当然ながら所得税法上の「給与所得」には該当しません。
したがって、法人に支払う会計参与報酬は、給与等を対価とする役務の提供に係るものではないため、課税仕入れに該当します。
課税仕入れに該当する場合の用途区分は「共通対応」
会計参与の職務は、特定の商品の売上げに対応するものではなく、会社業務全般に関連するものです。
したがって、控除対象仕入税額の計算において個別対応方式を採用している場合、課税仕入れとなる会計参与報酬の用途区分は「共通対応」となります。
まとめ
会社の会計参与に対して支払う会計参与報酬は、その会計参与が個人であるか法人であるかにより消費税の課税仕入れとなるか否かが変わります。
会計参与に就任した者 | 会計参与報酬の消費税区分 | |
個人(税理士又は公認会計士)の場合 | 原則(給与所得となる場合) | 不課税仕入れ |
例外(事業所得となる場合) | 課税仕入れ | |
顧問税理士等と兼任している場合 |
会計参与報酬は不課税仕入れ 税理士顧問料は課税仕入れ |
|
法人(税理士法人又は監査法人)の場合 | 課税仕入れ |
なお、個別対応方式により控除対象仕入税額を計算している場合、課税仕入れとなる会計参与報酬の用途区分は「共通対応」となります。