海運業における「滞船料」や「早出料」に関する消費税法上の取扱い

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

海運業とは、船舶を用いて旅客や貨物を海上輸送するというサービスの提供、又は船舶を貸し渡すことによって収益を得る事業をいいます。

海運業者は、船舶を停泊する際に「滞船料」や「早出料」を支払うことがあります。

今回は、海運業における「滞船料」や「早出料」に関する消費税法上の取扱いについて解説したいと思います。

 

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滞船料・早出料とは

まず、「滞船料」と「早出料」が、それぞれどういうものなのかについて見てみましょう。

滞船料とは

滞船料のイラスト

貨物の積卸期間が、当初契約で予定した期間より長引いて運送期間が長期にわたることとなった場合には、荷主は海運業者に「滞船料」を支払います。

この「滞船料」は、船舶が長く拘束されたことに対する運航会社の逸失利益をカバーするために支払われるものとされています。

早出料とは

早出料とは

貨物の積卸期間が、当初契約で予定した期間より早く終わり、運送期間が短縮されることとなった場合には、海運業者が荷主に対して「早出料」を支払います。

この「早出料」は、荷主が効率的な荷役をするためのインセンティブとなり、奨励金としての性質を持っています。

 

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滞船料は資産の譲渡等の対価に該当する

滞船料は、船舶が長く拘束されたことに対する運航会社の逸失利益の補填という名目で支払われるものですが、その実質は本当に単なる逸失利益の補填といえるのでしょうか?

実は、滞船料については、消費税法基本通達5-5-9に次のような記載があります。

(滞船料)
5-5-9 海上運送業を営む事業者が船舶による運送に関連して受ける滞船料(貨物の積卸期間が当初契約で予定した期間を超過して運送期間が長期にわたることとなった場合に徴収する割増運賃をいう。)は、資産の譲渡等の対価に該当することに留意する。

したがって、滞船料については、支払った荷主側にとっては課税仕入れ、受け取った海運業者側にとっては課税売上げとなるのです。

このように考える理由は、不動産の明渡遅延に伴う遅延損害金が、実質的に対価性のある取引であることから課税対象になるのと同じです。

滞船料についても、実質的に運送期間を延長して船舶を借り受けた対価として支払われるものであるため、課税の対象の4要件の「③ 対価を得て行うものであること」に該当し、消費税の課税の対象となります。

なお、滞船料に係る課税仕入れ又は課税売上げを計上する時期は、その滞船料の額が確定した日となります。

 

 

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早出料は売上げに係る対価の返還等に該当する

早出料の取扱いについては、消費税法基本通達14-1-1において、次のように記載されています。

(海上運送事業者が支払う船舶の早出料)
14-1-1 海上運送事業を営む事業者が船舶による運送に関連して支払う早出料は、売上げに係る対価の返還等に該当する。

したがって、早出料については、支払った海運業者側にとっては売上げに係る対価の返還等、受け取った荷主側にとっては仕入れに係る対価の返還等となります。

このように考えるのは、早出料については、荷主が効率的な荷役をするためのインセンティブとなるように支払われる奨励金としての性質を持っているからです。

なお、早出料はすでに支払った運送料の一部が返金されるものであるため、不動産における中途解約に伴う逸失利益の補填するための違約金とは性質が異なることなることに注意しましょう。

早出料に係る売上げに係る対価の返還等又は仕入れに係る対価の返還等を計上する時期は、その早出料の額が確定した日です。

 

まとめ

滞船料は資産の譲渡等の対価に該当し、早出料は売上げに係る対価の返還等に該当します。

荷主及び海運業者の処理を表にしてまとめると、以下のようになります。

荷主の処理 海運業者の処理
滞船料 課税仕入れ 課税売上げ
早出料 仕入返還等 売上返還等

 

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消費税法 無敵の一問一答

問題番号 タイトル
409 滞船料の受け取り
410 船舶の早出料の受け取り
892 船舶の早出料の支払い

 

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