SuicaやPasmoなどのICカードにチャージした金額の消費税の取扱い

この記事の内容は、2025年10月現在の最新の税制に対応しています。

近年、SuicaやPasmoなどのICカードが普及したことにより、多くの人が乗車料金やコンビニ等の買い物をICカードで決済していると思います。

では、ICカードにチャージした金額の消費税の取扱いはどうなるのでしょうか?

今回は、ICカードで支払った費用についての会計処理と消費税の取扱いについてご説明したいと思います。

 

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ICカードの使い方

ICカードにチャージする女性

ICカードとは、半導体メモリが組み込まれたカードのことをいいます。事前に入金(チャージ)したお金を電車の乗車料金やコンビニ等の支払の決済に使うことができます。

ICカードには非常に多くの種類がありますが、代表的なものとしてJR東日本の「Suica」や株式会社パスモの「PASMO」、イオンの「WAON」などがあります。

 

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消費税法上の取扱い

国税庁の消費税法基本通達6-4-4において、次のような記載があります。

(物品切手等に該当するかどうかの判定)
法別表第二第4号ハ《物品切手等の譲渡》に規定する「物品切手等」とは、次のいずれにも該当する証書及び資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)第3条第1項《定義》に規定する前払式支払手段に該当する同項各号に規定する番号、記号その他の符号(以下6-4-4において「証書等」という。)をいうものとして取り扱う。

(1) 当該証書等と引換えに一定の物品の給付若しくは貸付け又は特定の役務の提供(以下6-4-4において「給付等」という。)を約するものであること。

(2) 給付等を受けようとする者が当該証書等と引換えに給付等を受けたことによって、その対価の全部又は一部の支払債務を負担しないものであること。

(注) いわゆるプリペイドカードは、物品切手等に該当する。

上記の要件を満たすものが消費税法上「物品切手等」に該当することになります。

(注)書きに記載されているとおり、プリペイドカードは物品切手等に該当することから、ICカードにチャージした金額の取扱いは消費税法上「物品切手等」として取り扱われます。

 

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物品切手等の課税仕入れの時期

物品切手等に係る消費税の取扱いについては、国税庁の消費税法基本通達11-3-7で次のように記載されています。

(郵便切手類又は物品切手等の引換給付に係る課税仕入れの時期)
法別表第二第4号イ又はハ《郵便切手類等の非課税》に規定する郵便切手類又は物品切手等は、購入時においては課税仕入れには該当せず、役務又は物品の引換給付を受けた時に当該引換給付を受けた事業者の課税仕入れとなるのであるから留意する。

上記の青色で示した部分の取扱いが原則的な取扱いとなります。つまり、ICカードにチャージした時点では課税仕入れとならず、購入した時点で課税仕入れとして処理します。

インボイス制度導入前(令和5年9月30日以前)は、継続適用を要件に、自ら引換給付を受ける物品切手等については、その物品切手等の購入時に課税仕入れとして処理することが認められていましたが、インボイス制度導入後(令和5年10月1日以後)は、そのような取り扱いは認められなくなったことに注意しましょう。ただし、物品切手等で適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されているものが、引換給付を受ける際に適格請求書発行事業者により回収される場合、当該物品切手等により役務又は物品の引換給付を受ける買手は、インボイス制度導入後(令和5年10月1日以後)も、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を受けることができます。ICカードについては、上記に該当しないため、チャージ時に全額課税仕入れとして処理するのは認められません。

 

仕訳例

数値例
東京駅でSuicaに10,000円チャージし、横浜駅の自動改札で乗車料金464円を支払った。
決算日においてSuicaの残高は9,536円であった。

チャージ時

原則的な処理方法では、購入時に課税仕入れとなるため、入金額は課税仕入れとなりません。

仕訳上、ICカードにチャージした金額は額は「電子マネー」などの勘定科目を新しく作って資産計上しておくと管理がしやすくなります。

なお、「前払費用」「前払金」「仮払金」「預け金」「貯蔵品」などの他の勘定科目で計上しても構いません。

チャージ時の仕訳

乗車料金支払時

自動改札を通したときに、乗車料金を課税仕入れとして処理します。

仕訳上、「電子マネー」勘定を取り崩して旅費交通費を計上します。

乗車料金支払時の仕訳

決算日

決算日においては、日々の取引がちゃんと記帳されていれば、帳簿上の「電子マネー」勘定の残高とSuicaの実際の残高は一致しているはずなので、「仕訳なし」となります。

決算日の仕訳 

もし帳簿上の金額と実際の残高が一致しない場合は、現金過不足と同様に考え、差額を「雑費」または「雑収入」として計上します。その場合の消費税の区分は対象外(不課税)となります。

決算日の仕訳(残高が一致しない場合)

 

公共交通機関特例を使おう

ICカードを使って旅費交通費等を支払った場合は、多くの場合、領収書等が交付されません。

この場合、公共交通機関特例を用いて、仕入税額控除を行います。公共交通機関(船舶、バス、電車)に係るものについては、3万円未満の支払いについて、一定の事項を記載した帳簿のみの保存により仕入税額控除を行うことが認められます。

モバイルICカードの場合は、スマホアプリや会員用ウェブサイトから、利用履歴をCSVファイルやPDFファイルとしてダウンロードできます。また、カード型のSuicaやPASMOの場合は、駅の券売機などで利用履歴を印字してもらうことができます。

これらの利用履歴データを参照しながら、公共交通機関特例の適用により、それぞれ利用した日における課税仕入れとして経理処理しましょう。

なお、公共交通機関特例の対象とならない課税仕入れについてICカードで支払った場合は、適格請求書等の保存がない場合は仕入税額控除の適用対象とならないことに注意しましょう。

 

関連するアプリの問題

消費税法 無敵の一問一答

問題番号 タイトル
727 ICカードのチャージ金額

 

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