SuicaやPasmoなどのICカードにチャージした金額の消費税の取扱い

近年、SuicaやPasmoなどのICカードが普及したことにより、多くの人が乗車料金やコンビニ等の買い物をICカードで決済していると思います。

では、ICカードにチャージした金額の消費税の取扱いはどうなるのでしょうか?

今回は、ICカードで支払った費用についての会計処理と消費税の取扱いについてご説明したいと思います。

 

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ICカードの使い方

ICカードにチャージする女性

ICカードとは、半導体メモリが組み込まれたカードのことをいいます。事前に入金(チャージ)したお金を電車の乗車料金やコンビニ等の支払の決済に使うことができます。

ICカードには非常に多くの種類がありますが、代表的なものとしてJR東日本の「Suica」や株式会社パスモの「PASMO」、イオンの「WAON」などがあります。

 

消費税法上の取扱い

国税庁の消費税法基本通達6-4-4において、次のような記載があります。

(物品切手等に該当するかどうかの判定)
法別表第一第4号ハ《物品切手等の譲渡》に規定する「物品切手等」とは、次のいずれにも該当する証書及び資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)第3条第1項《定義》に規定する前払式支払手段に該当する同項各号に規定する番号、記号その他の符号(以下6-4-4において「証書等」という。)をいうものとして取り扱う。

(1) 当該証書等と引換えに一定の物品の給付若しくは貸付け又は特定の役務の提供(以下6-4-4において「給付等」という。)を約するものであること。

(2) 給付等を受けようとする者が当該証書等と引換えに給付等を受けたことによって、その対価の全部又は一部の支払債務を負担しないものであること。

(注) いわゆるプリペイドカードは、物品切手等に該当する。

上記の要件を満たすものが消費税法上「物品切手等」に該当することになります。

(注)書きに記載されているとおり、プリペイドカードは物品切手等に該当することから、ICカードにチャージした金額の取扱いは消費税法上「物品切手等」として取り扱われます。

 

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物品切手等の課税仕入れの時期

物品切手等に係る消費税の取扱いについては、国税庁の消費税法基本通達11-3-7で次のように記載されています。

(郵便切手類又は物品切手等の引換給付に係る課税仕入れの時期)
法別表第一第4号イ又はハ《郵便切手類等の非課税》に規定する郵便切手類又は物品切手等は、購入時においては課税仕入れには該当せず、役務又は物品の引換給付を受けた時に当該引換給付を受けた事業者の課税仕入れとなるのであるが、郵便切手類又は物品切手等を購入した事業者が、当該購入した郵便切手類又は物品切手等のうち、自ら引換給付を受けるものにつき、継続して当該郵便切手類又は物品切手等の対価を支払った日の属する課税期間の課税仕入れとしている場合には、これを認める。

上記の青色で示した部分の取扱いが原則的な取扱いとなります。つまり、ICカードにチャージした時点では課税仕入れとならず、購入した時点で課税仕入れとするのが原則的な取扱いとなります。

でもこの取扱いってかなり面倒だと思いませんか?

ICカードを使用する場面として最も多いのは、自動改札機で電車の乗車料金を支払うときだと思います。

しかし、自動改札では乗車料金の領収書やレシートは発行されないため、原則的な方法によった場合、乗車する都度乗車料金を記録しておかなければなりません。

これでは事務負担がかなり大きくなってしまうため、例外的な簡便法として、上記通達の赤色部分に記載されているように、継続適用を要件にチャージした時点で課税仕入れとして処理することが認められています。

 

会計上の原則処理と簡便処理

電子マネーの会計上の取扱いについても、原則処理と簡便処理の2種類があります。

原則処理では、入金額を資産計上し、乗車料金などの支払いの都度費用を計上します。

簡便処理では、入金額を全額費用計上し、決算時にIC カードにチャージした未使用の残高を費用勘定から 資産勘定に振り替える処理を行います。

 

ICカードの記帳方法は3つに分けれられる

税務上の処理として原則法と簡便法があり、会計上の処理にも原則法と簡便法があることを考慮すると、IC カードの記帳方法は以下の表のように大きく3種類に分けることができます。

税務上:原則法税務上:簡便法
会計処理:原則法① 最も厳密な方法
会計処理:簡便法② やや簡便な方法③ 最も簡便な方法

税務上の簡便法は、会計上も簡便的な方法で記帳していることが前提なので、会計処理は原則的な処理を行って税務上は簡便法を採用することはできません。

上記を踏まえて、次の数値例をもとに3種類の記帳方法を見てみましょう。

数値例
東京駅でSuicaに10,000円チャージし、横浜駅の自動改札で乗車料金464円を支払った。
決算日においてSuicaの残高は9,536円であった。

 

① 最も厳密な方法(会計:原則、税務:原則)

会計処理は原則法(支払い時に費用を計上する方法)を採用し、税務上も原則法(資産の引渡し・役務の提供を受けた日の属する課税期間に課税仕入れを計上する方法)を採用する最も厳密な方法によった場合の仕訳例は以下のようになります。

チャージ時

原則的な処理方法では、購入時に課税仕入れとなるため、入金額は課税仕入れとなりません。

仕訳上、ICカードにチャージした金額は額は「電子マネー」などの勘定科目を新しく作って資産計上しておくと管理がしやすくなります。

なお、「前払費用」「前払金」「仮払金」「預け金」「貯蔵品」などの他の勘定科目で計上しても構いません。

チャージ時の仕訳

乗車料金支払時

自動改札を通したときに、乗車料金を課税仕入れとして処理します。

仕訳上、「電子マネー」勘定を取り崩して旅費交通費を計上します。

乗車料金支払時の仕訳

決算日

決算日においては、日々の取引がちゃんと記帳されていれば、帳簿上の「電子マネー」勘定の残高とSuicaの実際の残高は一致しているはずなので、「仕訳なし」となります。

決算日の仕訳 

もし帳簿上の金額と実際の残高が一致しない場合は、差額を「雑費」または「雑収入」として計上します。

決算日の仕訳(残高が一致しない場合)

この方法のデメリット
この方法で処理した場合は、会計上も税務上も何の問題はありません。
ただし、実務上、この方法で経理処理を行うのは非常に煩雑となります。
後述の「(応用)ICカードで電車代以外の支払いもしている場合の効率的な経理方法」は、このデメリットが解消され、事務負担が少なくて済むため最もオススメの方法です。

 

② やや簡便な方法(会計:簡便、税務:原則)

会計処理は簡便法(入金時に全額費用として計上する方法)を採用し、税務上は原則法(資産の引渡し・役務の提供を受けた日の属する課税期間に課税仕入れを計上する方法)を採用するやや簡便な方法によった場合の仕訳例は以下のようになります。

チャージ時

例外的な処理方法では、入金時に入金額全額を課税仕入れとして処理します。

仕訳上、入金額全額を旅費交通費として計上します。

乗車料金支払時

入金時にすでに課税仕入れを計上しているため、自動改札通過時は処理なしとなります。

また、仕訳上も、すでに旅費交通費を計上しているため、「仕訳なし」となります。

決算日

決算日において、Suicaの残高を「旅費交通費」勘定から「電子マネー」に振り替えます。

決算日の仕訳(電子マネー残高の振り替え)

この方法のデメリット
この方法では、当期中のICカードの利用額がすべて「旅費交通費」として計上されることになるため、ICカードにチャージした金額をすべて電車の乗車料金の支払いに充てている場合以外は、経費の内訳を正確に把握することができないというデメリットがあります。
また、電車の乗車料金以外に、非課税仕入れや軽減税率の対象となる課税仕入れがある場合は課税仕入れの金額が正確に計算できないため、この方法を採用してはいけません。
後述の「(応用)ICカードで電車代以外の支払いもしている場合の効率的な経理方法」は、これらのデメリットが解消され、事務負担も少なくて済むため最もオススメの方法です。

やや簡便な方法の採用判定フローチャート

 

③ 最も簡便な方法(会計:簡便、税務:簡便)

会計処理は簡便法(入金時に全額費用として計上する方法)を採用し、税務上も簡便法(チャージした日の属する課税期間に課税仕入れを計上する方法)を採用する最も簡便な方法によった場合の仕訳例は以下のようになります。

なお、税務上の簡便法は継続適用が要件となっているため、一度この処理方法を選択したらその後も継続して適用しなければならないことに注意しましょう。

チャージ時

例外的な処理方法では、入金時に入金額全額を課税仕入れとして処理します。

仕訳上、入金額全額を旅費交通費として計上します。

乗車料金支払時

入金時にすでに課税仕入れを計上しているため、自動改札通過時は処理なしとなります。

また、仕訳上も、すでに旅費交通費を計上しているため、「仕訳なし」となります。

決算日

本来なら、決算日において未使用の残高は資産勘定に振り替えるべきですが、税務上はそのような事務負担の軽減を図るために、毎期継続適用していることを要件に、チャージ時に費用計上した金額の全額をそのままチャージした日の属する課税期間の課税仕入れとすることができるため、税務上の簡便法を採用する場合は「仕訳なし」となります。

この方法のデメリット
この方法では、当期中のICカードの利用額がすべて「旅費交通費」として計上されることになるため、ICカードにチャージした金額をすべて電車の乗車料金の支払いに充てている場合以外は、経費の内訳を正確に把握することができないというデメリットがあります。また、本来なら翌期の費用となる金額が当期の費用として計上されるため、適切な期間損益計算を行うことはできません。
また、電車の乗車料金以外に、非課税仕入れや軽減税率の対象となる課税仕入れがある場合は課税仕入れの金額が正確に計算できないため、この方法を採用してはいけません。
後述の「(応用)ICカードで電車代以外の支払いもしている場合の効率的な経理方法」は、これらのデメリットが解消され、事務負担も少なくて済むため最もオススメの方法です。

最も簡便な方法の採用判定フローチャート

 

(応用)ICカードで電車代以外の支払いもしている場合の効率的な経理方法

最近はコンビニや自販機などでもICカードを使って購入することができるため、電車代の支払い以外もICカードを使って決済していることが多いかと思います。

そのような場合は、チャージ金額はいったんすべて「旅費交通費」として処理し、電車代以外の支払額を他の勘定科目に振り替えると効率的に経理処理を行えます。

というのも、電車代については、自動改札で「ピッ」と鳴るだけでレシートなどは発行されずにチャージ額が引き落とされますが、それ以外の支払いについてはレシート等が発行されることが多いからです。

チャージ時

上記の例外処理を採用し、入金額全額をいったん「旅費交通費」として計上します。

乗車料金支払時

入金時にすでに課税仕入れを計上しているため、自動改札通過時は処理なしとなります。

また、仕訳上も、すでに旅費交通費を計上しているため、仕訳なしとなります。

乗車料金以外の支払時

乗車料金以外の支払いがあったときは、チャージ時に計上した「旅費交通費」を他の勘定科目に振り替えます。例えば、コンビニで150円(税込)のボールペンを購入した場合は、次のような仕訳を行います。

なお、「事務用品費」のみ課税仕入れとすると、チャージ時に計上した「旅費交通費」の課税仕入れと二重計上になってしまうため、「旅費交通費」を貸方に計上する際は税区分を「課税仕入れ」にするのを忘れないようにしましょう。(貸方の科目の税区分を「課税仕入れ」にすると課税仕入れのマイナスになります。)

旅費交通費を他の勘定科目に振り替える仕訳

決算日

決算日には、ICカードの残高を「旅費交通費」勘定から「電子マネー」勘定に振り替えます。

決算日の仕訳(電子マネー残高の振り替え) 

この方法なら、経費の内訳もわかり期間損益計算も適切なものになるため会計上も問題がなく、非課税仕入れや軽減税率の対象となる課税仕入れが含まれていても、その分の金額を旅費交通費から振り替えることにより課税仕入れの金額を正確に計算することができます。
また、最も把握が難しい乗車料金の支払額を調べる必要がなく、事務負担も少なくて済むため、この方法が最もオススメです!

 

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