協同組合等の事業分量配当金や従事分量配当金、出資配当金の消費税の取扱い

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

協同組合に加入している場合、「事業分量配当金」や「従事分量配当金」「出資配当金」という名目で金銭を受け取ることがあります。

今回は、協同組合等から受け取る事業分量配当金や従事分量配当金、出資配当金の消費税の取扱いについて解説したいと思います。

 

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事業分量配当金・従事分量配当金・出資配当金とは

まず、「事業分量配当金」「従事分量配当金」「出資配当金」が、それぞれどういうものなのかについて見てみましょう。

事業分量配当金とは

事業分量配当金は、組合が手数料を取り過ぎたり、組合員に高く販売したなどのため剰余金が生じたという観点から、取り過ぎ分などを返す趣旨で配当するものです。

「事業分量配当金」ではなく「事業分量分配金」や「利用分量配当金」「利用分量分配金」「利用配当」などの名目で支払われることもあります。

従事分量配当金

従事分量配当金は、組合員に対してその者が協同組合等の事業に従事した程度に応じて分配する配当です。

「従事分量配当金」ではなく「従事分量分配金」などの名目で支払われることもあります。

出資配当金とは

出資配当金は、協同組合の事業で得られた剰余金の一部を組合員に配当するものです。

「出資配当金」ではなく「出資分量配当金」や「出資分量分配金」などの名目で支払われることもあります。

 

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事業分量配当金に係る消費税の取扱い

事業分量配当金を受け取った場合の消費税の取扱いは、その内容に応じて、次の2パターンに分けられます。

① その計算の基礎となった取引が課税仕入れである場合
② その計算の基礎となった取引が非課税仕入れである場合

① その計算の基礎となった取引が課税仕入れである場合

事業分量配当金の金額の計算の基礎となった取引が課税仕入れである場合(手数料の支払額や商品の購入額など)については、消費税法基本通達14-1-3において、次のように規定されています。

(協同組合等が支払う事業分量配当金)
14-1-3 法法第60条の2第1項第1号《協同組合等の事業分量配当等の損金算入》に掲げる協同組合等が組合員等に支払う事業分量配当金のうち課税資産の譲渡等の分量等に応じた部分の金額は、当該協同組合等の売上げに係る対価の返還等に該当することに留意する。

したがって、事業分量配当金は、支払った協同組合側にとっては売上げに係る対価の返還等、受け取った組合員側にとっては仕入れに係る対価の返還等に該当します。

② その計算の基礎となった取引が非課税仕入れである場合

事業分量配当金の金額の計算の基礎となった取引が非課税仕入れである場合(保険料や利息の支払額など)については、支払った協同組合側にとっては非課税売上返還等、受け取った加入者側にとっては非課税仕入返還等となります。

(参考)実質的に役務の提供の対価と認められる場合

事業分量配当金という名目で金銭で支払われる場合であっても、その実質は役務の提供の対価に該当する場合があります。

例えば、協同組合の共同販売事業に参加し、組合が販売する商品の販売を当社が代行した場合において、販売数量等に応じて「事業分量配当金」という名目で金銭の支払いを受ける場合がありますが、そのような場合は実質的には「商品の販売代行」という役務の提供の対価として受け取るものであり、課税仕入れの払戻しではありません。

このように、事業分量配当金という名目で金銭で支払われる場合であっても、実質的には役務の提供の対価であると認められる場合は、支払った協同組合側にとっては課税仕入れ、受け取った組合員側にとっては課税売上げに該当します。

なお、これは次に解説する「従事分量配当金」と同じですが、「事業分量配当金」という名目で支払われることもあるので注意しましょう。

 

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従事分量配当金

従事分量配当金は、組合員が協同組合等の行う事業に従事した程度に応じて分配する配当であり、役務の提供の対価としての性格を有することから、消費税の課税仕入れに該当します。

したがって、支払った協同組合側にとっては課税仕入れ、受け取った組合員側にとっては課税売上げに該当します。

 

出資配当金に係る消費税の取扱い

消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。

課税の対象の4要件
① 国内において行うものであること
② 事業者が事業として行うものであること
③ 対価を得て行うものであること
④ 資産の譲渡・貸付け、役務の提供であること

出資配当金は、協同組合の事業で得られた剰余金の一部の配当であり、出資者という地位に基づいて受け取るものであるため、課税の対象の4要件のうち「③ 対価を得て行うものであること」を満たさず、不課税取引となります。

これは、株式会社などから剰余金の配当を受ける場合と同じ考え方になります。

 

まとめ

事業分量配当金・従事分量配当金・出資分量配当金についての消費税の取扱いをまとめると、以下のようになります。

配当金・分配金の種類 組合員の消費税の取扱い 協同組合等の消費税の取扱い
事業分量配当金 計算の基礎が課税仕入れ 課税仕入返還等 課税売上返還等
計算の基礎が非課税仕入れ 非課税仕入返還等 非課税売上返還等
従事分量配当金 課税売上げ 課税仕入れ
出資配当金 不課税売上げ 不課税仕入れ

なお、各配当金・分配金の名称は組合により異なるため注意しましょう。

「事業分量配当金」という名目で支払われるものであっても、実質的には役務の提供の対価である場合もあるため、名目にとらわれず、その実質で判断するようにしましょう。

 

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消費税法 無敵の一問一答

問題番号 タイトル
276 事業分量分配金
278 出資分量分配金
280 販売代行の対価として収受する事業分量配当金

 

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