株式会社の株主となる場合は、出資金として金銭の払い込みをします。
株主は、会社で利益が生じたら配当金を受け取ることができます。
このような株主と会社との間の直接的な取引のことを資本取引といいますが、資本取引には消費税は課税されるのでしょうか?
今回は、金銭出資や受取配当金など、株式会社との資本取引に消費税はかかるのかについて解説します。
課税の対象の4要件
消費税は、次の4要件を満たす取引が課税の対象となります。
これを踏まえて、金銭出資や受取配当金などの資本取引が消費税の課税の対象となるか考えてみましょう。
金銭出資に係る消費税の課税関係
出資という行為は、資本金の出資者たる地位を生じさせ、株主は持ち株数に応じた権利(株主権)を有するが、同時に有する株式の引き受け価額を限度とする有限責任を持つようになることを意味します。
つまり、出資による金銭の払い込みは、商品やサービスの提供を受けたことに対する対価として支払うものではないため、課税の対象の4要件のうち「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たさないため消費税の課税の対象外(不課税取引)となります。
(参考)現物出資を行った場合は課税対象となる
消費税法施行令第2条2項において「金銭以外の資産の出資」(=現物出資)は「資産の譲渡等に類する行為」として課税対象とされています。
例えば、出資の払い込みの際に、金銭による払い込みではなく、車両を現物出資した場合は、課税の対象となります。
なお、現物出資を行った場合の税務上の考え方や具体的な仕訳例については、詳しくは次の記事をご覧ください。
(参考)新株予約権付社債の株式への転換は不課税取引
新株予約権付社債を株式へ転換した場合は不課税取引となります。
この点については、詳しくは以下の記事をご覧ください。
受取配当金に係る消費税の課税関係
株主は、会社の利益が上がっている場合は、配当金を受け取ることができます。
この配当金は、株主が何か会社に対して商品の販売や役務の提供を行った対価としてではなく、株主という地位に基づいて受け取るものであるため、課税の対象の4要件のうち「③ 対価を得て行うものであること」の要件を満たさないことから消費税の課税の対象外(不課税取引)となります。
(参考)現物配当も課税の対象外となる
剰余金の配当に関して、金銭ではなく自社の商品や備品、建物、土地、商品券などの現物の資産をもって配当が行われることがあります。
現物配当(現物分配)は金銭による配当と同様に対価性のない取引として不課税取引となりますが、手続きに瑕疵がある場合は「代物弁済」や「みなし譲渡」に該当し課税対象となるおそれがあるため注意しましょう。
詳しくは次の記事をご覧ください。
(参考)「配当金」と名がついていても不課税取引にならない場合
協同組合等から受け取る「事業分量配当金」や「従事分量配当金」などの名目の金銭は、その名称に「配当金」と付いていますが、不課税取引にはならないことがあります。
この点については詳しくは次の記事をご覧ください。
まとめ
株式会社に金銭の出資をした場合も、株式会社から配当金を受け取った場合も、いずれも消費税の課税対象外(不課税取引)となります。
ただし、現物出資を行う場合は「資産の譲渡等に類する行為」に該当するため、課税の対象となることに注意しましょう。