金融業を営む事業者が顧客と金銭消費貸借契約を締結する際、利息制限法の規定により、事務手数料として収受したものであっても「利息」とみなされることがあります。
今回は、利息制限法の規定により利息とみなされる事務手数料の消費税の取扱いについて解説したいと思います。
利子を対価とする金銭の貸付け等は非課税取引
消費税法第6条の規定により、利子を対価とする金銭の貸付け等は非課税取引とされています。
通常、受取利息を収受した場合は非課税売上げを計上することになります。
では、利息制限法の規定により利息とみなされた金額についてはすべて「受取利息」と同様に非課税取引として取り扱う必要があるのでしょうか?
利息制限法とは
利息制限法とは、金銭の貸主である債権者による暴利や搾取から債務者である消費者を保護するために、金銭消費貸借における利息や遅延損害金の利率を一定限度に制限する法律です。
例えば、いわゆる「闇金」といわれるような悪質な業者が「年利50%」というようなとんでもない暴利でお金を貸し付けることがあるため、利息制限法第1条の規定により、金額に応じて以下の割合を超える利率で金銭を貸し付けることができないようにされています。
(利息の制限)
第一条 金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
一 元本の額が十万円未満の場合 年二割
二 元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分
三 元本の額が百万円以上の場合 年一割五分
ところが、中にはこの規定を掻い潜って、例えば、300万円を年利15%で貸し付けている悪徳闇金業者が、利息とは別に「事務手数料」という名目で年利35%分の金額と同額を請求している場合は、実質的に年利50%と変わりありません。
そこで、利息制限法第3条の規定により、貸し付けた金銭の元本以外の部分は、原則としてすべて利息とみなすこととされています。
(みなし利息)
第三条 前二条の規定の適用については、金銭を目的とする消費貸借に関し債権者の受ける元本以外の金銭は、礼金、割引金、手数料、調査料その他いかなる名義をもってするかを問わず、利息とみなす。ただし、契約の締結及び債務の弁済の費用は、この限りでない。
これにより、悪質な闇金業者は、どんな名目であれ、利息制限法第1条で規定する一定の利率を超える金銭を巻き上げることはできないようになっています。
利息制限法の規定は消費税法にも適用される?
利息制限法の規定により、金銭の貸付けに際して「事務手数料」などの名目で支払われた金銭も「利息」とみなされます。
では、消費税の課税関係を考えるうえでも、利息制限法のみなし規定は適用されるのでしょうか?
答えはNOです。
利息制限法第3条の規定によるみなし利息については、いわゆる「闇金」のような悪徳業者の暴利や搾取から債務者である消費者を保護するために、金銭消費貸借における利息や遅延損害金の利率の一定限度に制限するのことが趣旨であるため、利息制限法の範囲内においてのみ利息とみなされることになります。
したがって、利息制限法、利息とみなされるからといって、消費税法においても利息として取り扱うということにはなりません。
消費税法において利息として取り扱うのは、あくまでも金銭消費貸借契約で取り決められた利率に基づいて計算された金額となります。
事務手数料は契約締結に係る役務の提供の対価
事務手数料が利息制限法第3条の規定により貸付金の利息とみなされる場合であっても、当事者間において、金銭消費貸借契約を締結するための役務の提供の対価として授受されるものであれば、契約締結のための事務作業に係る役務の提供の対価として課税資産の譲渡等の対価に該当します。
金銭の貸付けの対価としての「利子」には該当しないことに注意しましょう。
(参考)過払い金として返還を受ける場合
利息制限法に規定する上限を超えて利息や事務手数料を支払った場合は、過払い金として返還請求をすることができます。
過払い金の返金を受けた場合の経理処理や消費税の取扱いの考え方については、詳しくは次の記事をご覧ください。
(参考)質疑応答事例
国税庁の質疑応答事例『金銭の貸付時に収受する契約締結料及び事務手数料』でも、次のような記載があります。
【照会要旨】
金融業を営む法人が、顧客と金銭消費貸借契約を締結するときに、
1 契約締結料として1件ごとに50,000円を、
2 さらに、事務手数料として貸付金額の1%相当額をそれぞれ収受しています。
消費税法上、この契約締結料及び事務手数料は、課税の対象となるのでしょうか。
なお、事務手数料は、利息制限法第3条《みなし利息》の規定により、利息とみなされています。【回答要旨】
いずれも、役務の提供の対価であり、消費税法上、金銭の貸付けの対価としての「利子」に該当しないので、課税の対象となります。
金銭の貸付けの際に収受する各種手数料については、利息制限法上「利息」とみなされるか否かにかかわらず、課税の対象となります。【関係法令通達】
消費税法第4条第1項、第6条第1項、別表第二第3号
まとめ
利息制限法の規定により利息とみなされたからといって、消費税の課税関係を考える上でもすべて利息として取り扱わないといけないわけではありません。
金銭消費貸借契約を締結するための事務手数料など、本来の利息ではない場合は非課税取引とはならず、課税資産の譲渡等の対価に該当します。
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問題番号 | タイトル |
905 | 利息制限法の規定により利息とみなされる事務手数料 |