在宅勤務の従業員に支払う通勤手当は課税仕入れになる?

新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、会社に出社せず在宅で仕事をするテレワークが急速に広まっています。

給料として毎月一定額の通勤手当を支払っている会社も多いかと思いますが、新型コロナウイルスの影響で1日も出社しなかった月がある従業員に支払う通勤手当については、課税仕入れとして処理してもいいのでしょうか?

今回は、1日も出社しなかった従業員に支払う通勤手当と在宅勤務手当に関する消費税の取扱いについて解説したいと思います。

なお、今回の記事の取扱いは、国税庁等が明確に公表しているものではなく、基本通達の内容に基づく僕個人の解釈となります。あくまでも一税理士の見解として参考にしてください。

 

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通勤手当のうち通常必要な部分の金額は課税仕入れになる

消費税法上の通勤手当の取扱いについては、国税庁の消費税法基本通達11-6-5で次のように記載されています。

(通常必要であると認められる通勤手当)
11-6-5 規則第15条の4第3号《請求書等の交付を受けることが困難な課税仕入れ》に規定する「通勤者につき通常必要であると認められる部分」とは、事業者が通勤者に支給する通勤手当が、当該通勤者がその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとした場合に、その通勤に通常必要であると認められるものをいう。
 したがって、所法令第20条の2各号《非課税とされる通勤手当》に定める金額を超えているかどうかにかかわらないことに留意する。

上記のとおり、通勤手当のうち「その通勤に通常必要と認められる部分の金額」については、適格請求書等の保存を要せず、一定の事項を記載した帳簿を保存するだけで課税仕入れとして計上することが認められています。

これを踏まえて、在宅勤務の従業員の通勤手当が課税仕入れになるかどうかを考えてみましょう。

 

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在宅勤務の通勤手当の取扱いは勤務形態による

通勤手当として、実費精算ではなく、毎月一定額を支払っている会社も多いかと思います。

新型コロナウイルスの感染拡大により、緊急事態宣言中は政府が不要不急の外出を控えテレワークで出勤者を7割削減するよう要請していたため、これを受け従業員の在宅勤務を推し進めた結果、月に1日も出社しなかった従業員にも毎月定額の通勤手当を支払うこともあり得ます。

このように、月に1日も出社しなかった在宅勤務の従業員に支給した通勤手当が課税仕入れになるかどうかは、就業規則においてその従業員の勤務形態をどのように規定しているかによります。

原則オフィスワークの場合

先ほども示した通り、通勤手当のうち「その通勤に通常必要と認められる部分の金額」については課税仕入れとして認められます。

「通常」という文言が具体的にどのようなケースを表しているのかについては、明確かつ具体的な規定はありません。

ここで、「通常」という言葉の字義的な意味から課税仕入れとなる通勤手当の範囲を考えてみると、次の3点がポイントとなります。

「通常」とは
① 社会通念上常識的な範囲内の金額であること
② 経済的かつ合理的な方法による移動手段であること
③ 災害等の特異な事情がない場合(平常時)であること

従業員の移動手段は当然タクシー等ではなく、経済的かつ合理的な電車やバスを使用しており、毎月支給している通勤手当はその交通費として必要な常識的な範囲内の金額であると思われるため、①と②は大丈夫だと思います。

ポイントは「③ 災害等の特異な事情がない場合(平常時)であること」です。

就業規則において、原則として勤務地を会社としてしている場合(原則オフィスワークとしている場合)は、もしコロナ禍ではなくいつもどおりの平常時であれば、電車やバスなどに乗って会社に通勤する必要があるはずです。

しかし、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、政府の要請を受けてやむを得ず従業員を在宅勤務させ、結果として月に1日も出社しないようなことがあったとしても、通常であれば(コロナ禍でなければ)会社に通勤する必要があるはずでした。

そのため、そのときの通勤手当はコロナ禍でなく平常時であった場合に会社に通勤するために必要な交通費に充てるために支給されるものであるため、仮に1日も出社しなかった月があったとしても「その通勤に通常必要と認められる部分の金額」に該当し、課税仕入れとして認められると考えられます。

原則テレワークの場合

WITHコロナがもたらした新しいライフスタイルに合わせ、会社としても就業規則を変更し、従業員によってはテレワーク(在宅勤務)を原則として位置づけている会社も多いかと思います。

参考
勤務地などを限定した多様な正社員の形態は国も推し進めており、厚生労働省がテレワークモデル就業規則の作成の手引きを公表しています。
厚生労働省:テレワークモデル就業規則~作成の手引き~

就業規則で、原則テレワーク(在宅勤務)としている場合、それが平常通りのワークスタイルであり、コロナ禍かどうかに関係なく会社に出勤する必要はありません。

この場合、勤務地が自宅なので通勤自体が不要となるため通勤手当自体廃止されるのが普通です。

もし就業規則を原則テレワークに変更した後にも毎月一定の通勤手当を支給している場合は、それは「通勤のために通常必要と認められる金額」ではないため、課税仕入れにはなりません。

 

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まとめ

通勤手当は、原則として課税仕入れになりますが、通勤手当の取扱いは勤務形態によります。

在宅勤務により1日しか出社しなかった。従業員がいる場合であっても原則オフィスワークの場合は通勤手当は課税仕入れとなりますが、原則テレワークの場合は通勤手当は課税仕入れとなりません。

先ほどの解釈は、今のようなコロナ禍の状況が異常で、それよりも前のコロナなんてなかったころの平穏な時代を「通常」と捉えて解釈していますが、時代が変わりほとんどの従業員が在宅勤務をするのが当たり前という状況になったら、通勤手当の「通常」の意味の考え方もまた変わってくるかもしれません。

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