土地と建物を一括で譲渡した場合は、土地部分の譲渡対価は非課税売上、建物部分の譲渡対価は課税売上げとなります。
今回は、土地付き建物を一括譲渡した場合の譲渡対価を区分する方法をご紹介します。
建物と土地を一括譲渡した場合の取扱い
建物と土地を一括して譲渡した場合の取扱いについては、消費税法基本通達10-1-5に以下のような記載があります。
(建物と土地等とを同一の者に対し同時に譲渡した場合の取扱い)
事業者が令第45条第3項《一括譲渡した場合の課税標準の計算の方法》に規定する課税資産の譲渡等に係る資産(以下「課税資産」という。)と同項に規定する課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に係る資産(以下「非課税資産」という。)とを同一の者に対し同時に譲渡した場合には、それぞれの資産の譲渡の対価について合理的に区分しなければならないのであるが、建物、土地等を同一の者に対し同時に譲渡した場合において、それぞれの対価につき、所得税又は法人税の土地の譲渡等に係る課税の特例の計算における取扱いにより区分しているときは、その区分したところによる。(注) 合理的に区分されていない場合には、同項の規定により、それぞれの譲渡に係る通常の取引価額を基礎として区分することに留意する。
このように、土地付き建物を一括して譲渡した場合には、それぞれの資産の譲渡の対価について合理的に区分しなければならないこととされています。
① 契約書に取引総額のみの記載がある場合
土地付き建物の譲渡契約を締結するとき、取引総額のみを決めてそれぞれの対価を区別していないときは、時価等の比率で按分計算を行うこととなります。
なお、譲渡対価の按分計算には、以下のような方法があります。
[1] 譲渡時における土地及び建物のそれぞれの時価の比率による按分
[2] 相続税評価額や固定資産税評価額を基にした按分
[3] 土地、建物の原価(取得費、造成費、一般管理費・販売費、支払利子等を含みます。)を基にした按分
契約書に取引総額のみの記載がされているため、ここでは固定資産税評価額の比率をもとに按分します。
土地の譲渡対価:6,000万円×4,000万円÷(4,000万円+1,000万円)=4,800万円
建物の譲渡対価:6,000万円×1,000万円÷(4,000万円+1,000万円)=1,200万円
② 契約書の記載金額の区分が合理的でない場合
土地付き建物を譲渡した場合、売り主にとってはできるだけ土地の譲渡対価が高くなる方が非課税売上高が増え納税額が少なくて済むため、消費税の節約のため土地の譲渡対価を高くしようとすることがあります。
契約書に土地と建物のそれぞれの譲渡対価が記載されていたとしても、区分が合理的でない場合は、上記と同様に合理的な区分に按分して計算する必要があります。
契約書に区分記載されている金額が合理的でないため、固定資産税評価額の比率をもとに合理的な金額を按分計算します。
土地の譲渡対価:(5,999万円+1万円)×4,000万円÷(4,000万円+1,000万円)=4,800万円
建物の譲渡対価:(5,999万円+1万円)×1,000万円÷(4,000万円+1,000万円)=1,200万円
契約書に取引総額と消費税のみ記載がある場合(記載金額の区分が合理的な場合)
契約書に取引総額と消費税のみが記載されている場合、土地は非課税なのでその消費税額はすべて建物に係るものであることから、その消費税額を税率で割り返して計算すると建物の譲渡対価を求めることができます。
消費税額を10/110で割り返して建物の譲渡対価から先に求め、取引総額との差額から土地の譲渡対価を求めます。
建物の譲渡対価:200万円÷10/110=2,200万円
土地の譲渡対価:8,200万円-2,200万円=6,000万円
なお、求めた金額の区分が合理的でない場合は、上記と同様に時価等の比率で按分計算を行う必要があります。
このように、土地付き建物のうち建物部分の譲渡対価の区分を消費税額から割り返して求める方法は、税理士試験などの資格試験でよく出題されるため、受験生の方は是非覚えておきましょう。
まとめ
土地付き建物を一括して譲渡した場合には、それぞれの資産の譲渡の対価について合理的に区分sうる必要があります。
契約書に取引総額のみが記載されている場合や区分金額が合理的でない場合は、以下のような比率で合理的に按分計算する必要があります。
[2] 相続税評価額や固定資産税評価額を基にした按分
[3] 土地、建物の原価(取得費、造成費、一般管理費・販売費、支払利子等を含みます。)を基にした按分
なお、取引総額と消費税額の記載がある場合は、消費税額を10/110で割り返せば建物の譲渡対価が求められるため、あとは土地の譲渡対価は取引総額との差額から求めることができます。