その業務委託費用は課税仕入れになる?外注費か給与かの判断基準

この記事の内容は、2025年1月現在の最新の税制に対応しています。

消費税法上、給与は課税の対象外とされるため課税仕入れになりませんが、外注費は課税仕入れとなるため、仕入税額控除できる金額を多くするために、業務委託するときはできるだけ外注費として計上したいと思う経営者の方が多いかと思います。

しかし、外注費として支出した経費でも、その内容次第では「給与」と認定され、消費税の仕入税額控除が否認されるとともに源泉所得税等の徴収漏れを指摘されてしまうことがあります。

今回は、業務委託費用が「外注費」となるか「給与」となるかの判断基準について解説したいと思います。

 

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原則として、契約の形態により判断する

まず、業務を委託した費用が外注費に該当するか給与に該当するかは、役務の提供に係る契約の形態が「請負契約」であるか「雇用契約」であるかにより判断します。

請負契約又はこれに準ずる契約に基づく業務の遂行ないし役務の提供の対価として支払った費用は「外注費」に該当するため、課税仕入れとして認められます。

一方、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく業務の遂行ないし役務の提供の対価として支払った費用は「給与」に該当するため、課税仕入れにはなりません。

なお、給与が消費税の課税仕入れに該当しない理由については、次の記事で詳しく解説しています。

 

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外注費か給与かの判断基準は国税庁法令解釈通達に示されている

上記の場合において、その区分が明らかでないときは、国税庁が公表している法令解釈通達『大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて』においての次の事項を総合勘案して判断するという判断基準が示されています。

以下の事項に当てはまるほど、給与としての性格が強いと判断されます。

(1)他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか。
(2)報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうか。
(3)作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか。
(4)まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか。
(5)材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。)を報酬の支払者から供与されているかどうか。

 

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① 代替性があるか

(1)他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか。

その業務を行う者が契約当事者に限定される場合は、給与としての性質が強いといえます。

例えば、雇用契約に基づく役務の提供の場合は、依頼主から受けた業務は契約当事者本人が行わなければならず、一般的に他人に任せることはできません。

一方、請負契約に基づく役務の提供の場合は、依頼主との間でやり取りした期限や代金等を決定すれば、その業務を行うのは本人に限られず、自己が雇用した第三者に任せて業務を遂行することもできます。

つまり、役務の提供を行う者が契約当事者本人に限られる場合は、外注費ではなく給与としての性格が強いと考えられます。

 

② 拘束性があるか

(2)報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうか。

依頼主から役務の提供を行う日や就業時間が決められていたり、タイムカードなどで勤怠管理を行っている場合など時間的拘束性がある場合は、外注費ではなく給与としての性格がつ用意と考えられます。

ただし、業務の性質上当然に存在する拘束は除かれます。例えば、タレントによる○月×日の10時~17時に行われるイベントへの出演などのような、その時間しか出演することはできないため、○月×日の10時~17時のまでの時間は、業務の性質上当然に存在する拘束であるため、このような場合にまで給与の該当性があるとは判断されません。

 

③ 指揮監督されているか

(3)作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか。

雇用契約の場合は、一般的に依頼主が規定した就業規則等を順守する必要があり、作業現場では上司等の監督者が仕事内容について指揮命令をします。

一方、請負契約の場合は、仕事の期限や品質を守れば、作業内容や進行度合、手順等について依頼主から指図を受けることはありません。

したがって、依頼主から業務の遂行に関し指揮監督を受けている度合いが高いほど、外注費ではなく給与としての性格が強いといえます。

なお、例えば、ソフトウェアの制作を委託した場合に、希望する仕様やデザイン、納期限、デバッグの指示などを行うことは業務の性質上当然に存在する指揮監督であるため、このような場合にまで給与の該当性があるとは判断されません。

 

④ 不可抗力で滅失した場合も報酬を請求できるか

(4)まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか。

雇用契約の場合は、労働力の提供に対して報酬(給料)が支払われるため、たとえ製作物が完成する前に災害等の不可抗力により滅失してしまった場合であっても、雇用主から給料の支払いを受けることができます。

一方、請負契約の場合は、製作物が完成する前に滅失してしまい期限までに依頼主に納品できない場合は、一般的に報酬の支払を受けることはできません。

つまり、製作物の引渡しの対価ではなく、労働力の提供に対して報酬が支払われている場合は、外注費ではなく給与としての性格が強いといえます。

 

⑤ 材料や用具等が供与されているか

(5)材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。)を報酬の支払者から供与されているかどうか。

雇用契約の場合は、一般的に依頼主が材料や用具等を労働者に対して支給します。

一方、請負契約の場合は受託者が材料や用具等を自前で用意します。

つまり、業務遂行にあたって必要な材料や用具等を供与している場合は、外注費ではなく給与としての性格が強いといえます。

なお、くぎ材等や軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等については、依頼を受けた者が自前で用意していたとしても給与の該当性があるとは判断されません。(国税庁の法令解釈通達は大工、左官、とび職等の給与該当性について記載されているため、大工っぽい例示になっています。)

 

まとめ

業務委託して支払った費用が「外注費」に該当するか「給与」に該当するかの判断は、まずは契約の形態により判断します。

雇用契約に基づかない場合は「外注費」となり仕入税額控除が認められますが、雇用契約に基づく場合は「給与」となり仕入額控除は認められません。

この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとされます。

以下の事項に多く当てはまるほど、給与としての性格が強いと判断されます。

(1)他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか。
(2)報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうか。
(3)作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか。
(4)まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか。
(5)材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。)を報酬の支払者から供与されているかどうか。

 

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