役員や従業員が出張に行く際に、会社が日当を支払った場合は、消費税において当該日当は課税仕入れに該当します。
日当を課税仕入れとして処理するためには、全従業員を対象とした「出張旅費規程」を作成するこをオススメします。
今回は、出張に係る日当を課税仕入れとして処理するための注意点について解説したいと思います。
日当とは
日当とは、旅費や宿泊費以外の出張中の少額の諸雑費の支払に充てるために従業員に対して支払うものです。
例えば、営業回り中に飲むためのペットボトルのお茶を買ったり、移動中に読むための新聞を買ったり、食事代の支払いに充てられるような諸雑費が日当に該当します。
日当は、その費用を会社が実費弁償するために支給するものでるため、従業員等に対する給与には該当しません。
消費税法上の日当の取扱い
日当の消費税法上の取扱いについては、国税庁の消費税法基本通達11-6-4において、以下のように記載されています。
(通常必要であると認められる出張旅費、宿泊費、日当等)
11-6-4 規則第15条の4第2号《請求書等の交付を受けることが困難な課税仕入れ》に規定する「その旅行に必要な支出に充てるために事業者がその使用人等又はその退職者等に対して支給する金品」とは、例えば、事業者が、使用人等(同号に規定する「使用人等」をいう。以下11-6-5までにおいて同じ。)又は退職者等(同号に規定する「退職者等」をいう。以下11-6-5までにおいて同じ。)が次に掲げる旅行をした場合に、使用人等又は退職者等に出張旅費、宿泊費、日当等として支給する金品がこれに該当するのであるが、同号に規定する課税仕入れは、当該金品のうち、その旅行について通常必要であると認められる部分に係るものに限られることに留意する。
(1) 使用人等が勤務する場所を離れてその職務を遂行するために行う旅行
(2) 使用人等の転任に伴う転居のために行う旅行
(3) 退職者等のその就職又は退職に伴う転居のために行う旅行
(注) 同号に規定する「その旅行について通常必要であると認められる部分」の範囲は、所基通9-3《非課税とされる旅費の範囲》の例により判定する。
したがって、日当については、その旅行について通常必要であると認められる部分の金額は、課税仕入れとして処理することができます。
「その旅行について通常必要であると認められる部分の金額」の範囲については、所得税法の規定を参照する必要があります。
なお、従業員が日当を軽減税率の適用対象となる飲食料品の購入にあてた場合の取扱いについては、詳しくは次の記事をご覧ください。
所得税法上の日当の取扱い
国税庁の所得税法基本通達9-3において、「その旅行について通常必要であると認められる部分の金額」の範囲について以下のように規定されています。
(非課税とされる旅費の範囲)
法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうのであるが、当該範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては、次に掲げる事項を勘案するものとする。(1) その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。
(2) その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。
太字部分で示した部分の、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準というのは、一般的には、全従業員を対象とした「出張旅費規定」が該当します。
出張旅費規程を作成せずに日当を支給すると、所得税法上その日当は従業員等に対する給与として取り扱われることがあり、その場合、消費税においても課税仕入れとして認められないおそれがあります。
出張旅費規程
出張旅費規程の作成にあたっては、① 役員を含む全従業員を対象としていること、② 旅費の種類ごとに支払金額の計算方法及び限度額を設定すること、③ 社会通念上の常識範囲内の金額であることがポイントとなります。なお、支払金額について役職ごとに差を設けることについては、常識範囲内の金額であれば問題ありません。
出張旅費規程のサンプルを作成しましたので、ご自由にダウンロードしてご利用ください。
サンプルとして作成した金額と同程度の金額であれば、常識範囲内の金額として認められるため、各々の状況に合わせて適宜変更してください。
出張経費精算書
出張から帰ってきたら、出張の概要と出張のために要した金額を記載した「出張経費精算書」を作成し、上司の承認を受けたうえで会社に保存しておく必要があります。
「出張経費精算書」がないと、税務調査等で出張の事実を証明することができないため、必ず作成するようにしておきましょう。
なお、「出張経費精算書」についてもサンプルを作成しましたので、ご自由にダウンロードしてご利用ください。
海外出張に係る日当
海外出張に係る日当の消費税法上の取扱いについては、国税庁の消費税法基本通達11-2-1の注書きに、以下のように規定されています。前述の通達の一部を再掲します。
(出張旅費、宿泊費、日当等)
・・・(前略)
(注)
2 海外出張のために支給する旅費、宿泊費及び日当等は、原則として課税仕入れに係る支払対価に該当しない。
海外出張に係る日当の支払については、課税の対象の4要件の1つの「国内において行うものであること」を満たさないため、不課税取引となります。
したがって、海外出張に係る日当については、消費税法上、課税仕入れに該当しません。